数年前に立てたマイホーム。長く住むためにはいつかは塗装すべきだと分かっているけど、その「いつか」の目安がわからないという方も多いのではないでしょうか。

外壁塗装は、住まいに劣化の兆候が見え始めてから実施するのが一般的です。

しかし、外壁内部や屋根の上など、普段生活していてもなかなか気付かない劣化症状も珍しくないため、深刻になる前に建物診断をすることが重要です。そのためにまずは、「塗装を検討すべき築年数の目安」を知っておくと安心です。

そこでこの記事では、外壁塗装を検討し始める築年数の目安から、その頃に塗装しなければならない理由、放置した際のデメリットや、実際に塗装を考える時に参考にすべき情報までを徹底解説。「ウチもそろそろ塗装したほうがいいの?」とお悩みの方は、最初にこの記事を読んで不安を解消させてください。

1.外壁塗装を検討する目安は「築8~12年」

一般的に、外壁塗装を検討する目安は築8~12年になってからと言われています。詳細については次章で詳しく解説しますが、そのころになるとほとんどの住まいで劣化症状が見えはじめ、補修の必要性が出てきます。もちろん劣化状況が深刻ではなければ塗装する必要もないのですが、普段の生活ではなかなか気付けないような部分に劣化が現れている場合もありえます。最終的に塗装する・しないに関わらず、8~12年をめどに一度業者に建物診断をお願いすることをおすすめします。

建物診断については、4章で詳しく解説しています。ぜひご参照ください。

 

2.どうして築8~12年で塗装する必要があるの?

本章では、外壁塗装の目安が「築8~12年」と言われている理由について詳しく解説していきます。

2-1.新築時に使用した塗料の寿命が切れる頃だから

ハウスメーカーや地場の工務店などで住宅を新しく建てた場合にも、外壁材や屋根材には工場で塗装が施されています。そして新築時は「アクリル塗料」「ウレタン塗料」などの安価な塗料が使われる場合が多いのですが、一般的にアクリル塗料の耐久年数は約4~7年、ウレタン塗料では約6~10年と、10年前後で塗料としての性能を失ってしまうのです。では、なぜ塗料の性能が発揮できなくなるといけないのでしょうか。

建物は一年中、紫外線や雨水、気温や湿気などにさらされています。そんな過酷な自然環境の中で建物が深刻な被害を受けないように守っているのが塗装なのです。つまり塗料の効果が切れ建物を守る役割を果たせなくなると、建物は劣化要因となる自然環境に直接さらされることになり、劣化が急激に進行してしまうのです。とくに日本の住宅の80%で使われている窯業系サイディングボードには防水機能がほとんどなく、塗料の性能が切れてしまうと雨水の住宅内部への浸入を防ぐことができなくなります。そのため、塗料が劣化してくる築10年前後で塗装を検討することをおすすめします。

2-2.8~12年の間に様々な劣化症状が発生するから

築8~12年を目安に新築時の塗装の効果が切れてしまうと説明してきましたが、それはあくまで一般的な話であり、全ての住まいに当てはまるわけではありません。本当に塗料の効果が切れ、再塗装すべき状態になっているのかどうかは、住まいの劣化具合を見て判断しましょう。ここでは、新築してから築10年が経つまでに発生する可能性がある劣化症状を、「まだ様子を見ていて大丈夫な劣化症状」「今すぐ塗装すべき劣化症状」に分けて説明していきます。

  • まだ様子を見ていて大丈夫な劣化症状

【塗料の艶がなくなる/色あせしている】


(画像出典:プロタイムズ東三河店

新築当初はピカピカとした光沢があった外壁や屋根も、時間の経過によって艶を失ったり、彩度がなくなり色あせしていくなどの現象が起こります。よく見なければ気付かないほどの変化であれば建物への影響はほとんどないとはいえ、塗料の性能が落ちてきているサインの一つとなっています。

 

【幅0.3mm以下の微細なひび割れがある】

幅0.3mm以下のひび割れは「ヘアークラック」と呼ばれ、乾燥などにより塗料の表面が割れてしまう劣化症状です。ひび割れは建物内部にまで届いているわけではありませんので早急な補修が必要になるわけではありませんが、塗料の性能が切れかけている可能性があります。また、たとえヘアークラックであっても、同じ場所にいくつも発生している場合は注意が必要です。あまりにも多くのひび割れがある場合は、一度専門家のいる塗装会社などに相談してみるといいでしょう。

 

  • 今すぐ塗装を検討すべき劣化症状

【幅0.3mm以上のひび割れが発生している】

先程説明したヘアークラックとは違い、幅0.3mm以上のひび割れは塗膜だけでなく建物自体に達している危険性があります。こうしたひび割れは「構造クラック」と呼ばれ、塗装だけでなくひび割れの補修工事も必要になる深刻な劣化症状です。窓まわりなどに発生しやすく、放置しておくと雨漏りの原因にもなってしまいます。大きなひび割れを見かけたら、一度業者に相談してみることをおすすめします。

 

【外壁を手で触ると白い粉がつく】

手で外壁を触ったときに付着する白い粉の正体は、塗料の成分である顔料(色成分)です。この現象は「チョーキング」と呼ばれ、塗料の性能が切れたことを示す代表的なサインの一つです。チョーキングを起こしている塗膜は既に防水機能を失ってしまっており、雨水から住まいを守ることができなくなってしまっています。放置すると劣化はさらに進み、深刻なひび割れなどが生じてしまう危険性があります。

 

【コケ・藻・カビが発生している】

住宅の北面や水辺に面した場所、屋根材の隙間などでよく起きる劣化症状です。見栄えが悪くなってしまうのはもちろんですが、実はこれは塗料の性能が劣化している兆候のひとつ。塗膜の防水機能が失われて水分を含みやすくなってしまった結果、コケや藻・カビなどが発生してしまうのです。

 

【屋根材がひび割れている】

経年劣化によってだけでなく、地震による建物の振動や、落下物などの外的要因によってひび割れが発生することもあります。進行が進むと屋根材が滑落したり、雨漏りの原因になってしまうことがありますので注意が必要です。

 

3.築8~12年以上の住まいの塗装を怠るとこんなことに・・・。

ここまで、外壁塗装を検討すべき築年数の目安が10年前後であることと、その頃までに発生する劣化症状について解説してきました。では、劣化症状が発生している住まいの塗装を怠るとどうなるのでしょうか。

3-1.住まいの劣化が急激に進行してしまう

外壁の劣化は新築した瞬間から緩やかに進んでいき、8~12年ほど経ったころにわかりやすい劣化症状として現れ始めます。そして、一度劣化症状が目立ち始めた家は、今までよりも早いペースで傷んでいくことが多いのです。例えば外壁にできたひび割れはすぐに補修すれば問題ないものの、しばらく放置していると住宅内部に水が浸入してしまい、重度の場合は雨漏りや木材の腐食などの被害を引き起こす可能性があります。加速度的に劣化症状が広がってしまい手遅れになる前に、劣化が目立ち始めた時点で一度業者に相談してみるといいでしょう。

【築8~12年を越えた住まいで現れる深刻な劣化症状】

  • 外壁・屋根の塗膜剥離

経年劣化によって外壁・屋根に塗った塗料の性能はどんどん落ちていきますが、写真のように塗膜がはがれてしまっている場合は注意が必要です。この状態だと塗料の性能はほとんど発揮できておらず、雨水や紫外線などから住まいを守ることが全くできなくなってしまいます。更なる劣化症状を引き起こしてしまう恐れもありますので、塗膜の剥離が起きる前にメンテナンスを検討することをお勧めします。

 

  • 住宅内部の腐食

築10年以上が経ち外壁にできた大きなひび割れを放置していると、住宅に雨水が浸入し、最悪の場合内部の木材や断熱材などを腐らせてしまう可能性があります。もし写真のように深刻な状態にまでなってしまった場合、住宅の耐久性が落ちてしまうことはもちろん、カビなどの発生による健康被害を引き起こす恐れもあるので注意が必要です。

3-2.追加工事が発生して塗装以外の費用が余計に掛かる恐れも

確かに塗装工事は安い買い物ではありません。住宅の面積や劣化症状、使用する塗料などによっても変動しますが、一般的な住宅(外壁面積120㎡)で約80~120万円ほどかかります。しかし、住宅の構造に関わるような重大な劣化症状があった場合は以下のような追加工事が発生し、さらに多額の費用がかかる可能性があります。

  • サイディングの張り替え

サイディング外壁が著しく欠損しており、塗装だけでは住まいを守り切れないとなった場合、サイディングの全張り替えが必要になることもあります。そうなった場合、費用は約16.000円/㎡以上かかってしまいます。

  • 屋根材の交換

塗装ができないほど劣化が進行している場合は、屋根材を全て交換する必要があることも。費用は屋根材の種類によっても変わりますが、15,000~24,000円/㎡ほど掛かるのが一般的です。

  • 基礎補修

ひび割れなどから浸入した雨水が住宅の内部を腐食させていた場合、外壁だけでなく住宅の基礎を補修する必要が生じます。軽度な補修工事であればおよそ10万円程度となりますが、耐震性に影響がでるほど深刻な場合はさらに費用がかかる可能性もあります。

  • シロアリ駆除

住宅内部が水を含んで湿気の多い状態になると、シロアリが繫殖してしまう危険性もあります。費用は駆除の方法によってもかわりますが、一般的なバリア工法(薬剤を散布する方法)の場合だと1坪あたり6,000~10,000円ほどの費用が発生します。

  • 断熱材の補修

外壁内部の断熱材が雨水で腐食してしまった場合、ひび割れを補修するだけでなく断熱材の交換などの工事も必要になります。重度の場合だと、およそ80~170万円程度の費用が発生する可能性もあります。

 

4.築8~12年がたったら建物診断をしてみるのがおすすめ!

ここまで、塗装をすべき築年数の目安や具体的な劣化症状を説明してきましたが、とはいってもご自身で塗装すべきかどうか判断するのは難しいという方も多いかと思います。本当に塗装をすべきなのか、するとしたらどのくらいの費用がかかるのかのアドバイスが欲しい方は、ぜひ一度塗装会社に建物診断を依頼してみるといいでしょう。

しかし、「適当にチェックされたとしてもわからない」などの不安もあります。そこで、診断を依頼する業者を見極めるポイントを簡単に解説させていただきます。

  • 専門資格をもつスタッフが診断するか

診断するスタッフが、「建築士」「外装劣化診断士」などの専門資格を持っているかどうかを第一に確認しましょう。もちろん建物診断は資格がなくてもできるのですが、知識不足のスタッフが対応すると間違った診断をされるという危険性もあります。とはいえスタッフに確かな知識があるかどうかを見極めるのは非常に困難ですので、有資格者がいる会社に依頼するのが無難でしょう。

  • 屋根の上や天井裏まで見てくれるか

目星をつけた業者がいたら、ホームページやパンフレットなどを見ておおまかな診断の内容を確認してみるといいでしょう。普段の生活では見ることができない屋根の上や天井裏までを詳しくチェックしてくれる会社であれば安心ですが、中には簡単に目視できる部分だけをチェックするという会社もあるため注意が必要です。

  • 報告書の内容は充実しているか

診断内容をどのような形で報告してくれるかどうかも、業者を見極める重要なポイントです。いくら深い知識をもつスタッフが診断したとしても、その内容が上手く伝わらなければ意味がありません。また、口頭での説明だけでは専門知識がない一般の施主にとっては理解が難しい場合もあります。そのため、劣化症状の写真などを収めた詳細な報告書がある会社かどうかをチェックしましょう。もし診断してもらった後で報告内容が分かり辛かったり、説明が十分でなかった場合には、他の業者にも診断を依頼して比較してみるといいかもしれません。

建物診断については、コチラの記事でも詳しく解説されています。ぜひご参考にしてください。

外壁塗装ジャーナルを運営するプロタイムズでも、建物診断を全国で実施しています。外装劣化診断士を始めとする専門知識を持った「診断のプロ」が、住まいの状態を隅々までチェック。診断結果は詳細な報告書と、専門家による解説映像を収めたDVDにしてお渡しします。建物診断は無料となっていますので、住まいの状態を正確に知りたい方はお気軽にお問い合わせください。

 

5.【補足情報】外壁塗装をするときに参考にすべき記事4選

最後に、築8~12年以上が経った住まいの塗装を検討する際に参考にすべき情報を学ぶことができる、外壁塗装ジャーナルの人気記事を4つ紹介いたします。塗装が必要だと感じたら、これらの記事を参考にして満足のいく外壁塗装を行なってください。

1.[外壁塗装リフォームの完全マニュアル]正しい塗装手順を大公開!

この記事を読んで、「そろそろ我が家も塗装すべきかも」と感じたらまずはこちらをご覧ください。塗装工事をどのように進めればいいのかなど、塗装に関する基礎知識を徹底解説しています。

2.【全国50事例付き】塗装業者が教える外壁・屋根塗装の色選びで失敗しないための秘訣

塗装を考える上で気になるのが、「どんな色の住まいにするか」という点。こちらの記事では、塗装の色選びで失敗しない秘訣を、全国の事例を交えてご紹介しています。

3.【塗料メーカー監修】外壁塗装にオススメの塗料

塗料メーカーが監修する、塗料選びのポイントについての記事です。目的別に、どんな塗料を選ぶべきかを詳しく解説しています。

4.【塗装業者の見極め方】8つのステップで信頼できる業者を選ぼう!

塗装工事の仕上がりは、依頼する業者のレベルによって大きく変わります。ぜひこの記事を読んだ上で、信頼できる業者を探すことをおすすめします。

 

まとめ

この記事では、外壁塗装を検討する目安となる築年数とその理由について詳しく解説してきました。外壁塗装は基本的に築8~12年頃が目安だと言われていますが、ここで紹介した通り住まいの劣化状況によって最適なタイミングが変動することもあります。新築してしばらく経った時点で、この記事を参考にご自身で住まいの状態をチェックしてみてはいかかでしょうか。