ヒビに追従

家の新築から数年経ち、壁には汚れやヒビ割れがチラホラ。外壁塗装の営業もやってくるようになった。

外壁のヒビ割れに弾性塗料を薦められたけど、そもそも弾性塗料って何?どんな特徴があるの?
と思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

弾性塗料とは、一言で表すと「高い伸縮性を持ち、ひび割れに強く高い防水性を備えた塗料」です。

この記事では、弾性塗料の特徴やメリットとデメリットなどを解説いたします。
外壁塗装で弾性塗料が気になっている方は、ぜひ、参考にしてみてください。

1. ヒビ割れに強い!弾性塗料とは?

まず、弾性塗料の特徴について解説します。

1-1.  ヒビに追随し表面化を防ぐ

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弾性塗料とは、他の塗料よりも高い伸縮性(弾力性)を持ち下地のヒビ割れに対応することができる塗料です。
弾性塗料は一般的に塗料の原料となる樹脂に可塑剤と呼ばれる添加剤を入れることで伸縮機能を持たせています

可塑剤を使用していない製品もあります。

この伸縮性によって下地にヒビ割れが生じた際でも、ヒビに追随して表面化することを防ぐことができるのです。
伸縮性を持たない他の塗料は下地にヒビが入った際、一緒に塗膜にまでヒビが生じるため、水の浸入するリスクが高くなってしまいます。

ですから、「防水」の観点から見ると、弾性塗料の伸縮性は非常に重要な機能なのです。

1-2. 下塗り材はシーラーかフィラーを使用

弾性塗料を施工する際、下塗り材には一般的にシーラーまたはフィラーを使用します。
使い分けの判断基準としては下地の「傷み具合」が挙げられます。

・シーラー
外壁表面に塗料を吸い込ませて固め、上塗り材との密着を良くするためのものです。
下地の状態が比較的良好で、外壁表面に損傷が少ない場合に使用します。
シーラーは下地に吸い込まれるため塗膜に厚さがつかず、塗装しても大きな傷みをカバーすることができないため傷みの大きい下地には適していません。

・フィラー
下地の損傷が大きく、シーラーの塗膜の厚さではカバーできない場合に使用されるのがフィラーです。
上塗り材との密着度の高さではシーラーに劣りますが、シーラーよりも厚みが出るため損傷が大きい下地に塗布することでよりキレイに仕上げることができます。

弾性塗料を施工する際は、以上の2種類の下塗り材を使用します。

1-3. 弾性塗料の「色」について

弾性塗料を選ぶ際の「色」についてですが、色の種類・数に関しては他の塗料との差はありません。
ご自身の家のイメージにマッチした色を選びましょう。
詳しくは下記の記事をご参考されてください。

外壁塗装の色選びで成功する為に押さえる6つのステップ

2.弾性塗料の仕上げ方

弾性塗料の概要を説明したところで、次は弾性塗料の「仕上げ方」について触れていきます。
一口に弾性塗料といっても、作業工程の違いで大きく3つの種類に分けられています。

2-1.単層弾性仕上げ

単層弾性塗料

単層弾性仕上げは下塗り1回、上塗り2~3回の工程で仕上げるものを指します。
塗膜に厚みを持たせることでヒビへの追従性を高めます。
2-2で説明する複層弾性仕上げとは異なり、上塗り材は2回とも同様の塗料を使用します。
戸建住宅の塗替えの際はこの工法で仕上げることが一般的です。

2-2.複層弾性仕上げ

複層弾性塗料

複層弾性仕上げは下塗り1回、中塗り2回、上塗り2~3回の工程で仕上げるものを指します。
中塗り時と上塗り時で使用する塗料が異なります。
2-1の単層弾性の工法よりも塗膜に厚みがでるため防水性は圧倒的に高くなります。
ただ、作業工程が多く施工に時間がかかり材料費や人件費がかさむため、工事金額が高額になるという難点があります。
屋上やベランダの防水工事などで使用される工法であり、戸建住宅の外壁塗装で選択されることは多くはありません。

2-3.微弾性塗料仕上げ

微弾性塗料

微弾性塗料仕上げは一般的には下塗り材のことを指します。「微弾性フィラー」と呼ばれる伸縮性を持った下塗り材があります。
基本的に下塗り1回、上塗り1回~2回の仕上げ方法です。
上塗り材は厚く塗りすぎると塗膜が割れたりするリスクがありますが、下塗り材は厚く塗るほど高い性能を発揮します。
粘度が高くドロドロしているため、塗膜に厚みを持たせるために塗料の含みが多い「砂骨ローラー」などで施工をおこないます。

3.我が家にも塗れるの?弾性塗料に適した下地

弾性塗料の特徴を理解したところで、では実際に弾性塗料はどんな下地に適しているのか説明していきます。

3-1.ヒビが発生しやすいモルタル外壁に最適

モルタル

弾性塗料を塗装するのに最も適した下地は「モルタル外壁」です。
この1番の理由としてはモルタルはその素材の特性上、「割れやすい」ためです。
経年劣化や揺れの影響で外壁表面にヒビが入りやすいモルタルには、ヒビに追従し表面化させない弾性塗料が最適です。美観の低下を防ぐと同時に、家の劣化の主な原因である水の浸入経路を絶つことが期待できます。
モルタル外壁で塗替えを考えている方は、ぜひ弾性塗料の採用をご検討ください。

3-2.窯業系サイディング施工の注意点

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一般的に弾性塗料を「窯業系サイディング」に塗布する場合は注意が必要です。
窯業系サイディングはモルタルよりも蓄熱性が高く、その熱によって弾性塗料の塗膜(熱可塑性) が柔らかくなり、最終的に外壁表面に「膨れ」や「剥がれ」が発生する可能性があります。
また、サイディングボードが水の影響を受けている場合、同じく「膨れ」や「剥がれ」の原因となります。

ではどうやって塗り替えれば、良いでしょう?

①現状のサイディングボードの劣化状況を確認
・サイディングに反りがなく、水分を吸収した形跡がないか?
・既存塗膜に膨れ・剥離が発生していないか?
※当てはまる場合は弾性塗材での塗替えはオススメできません。

②上記条件に当てはまらない場合
浸透型のエポキシ系シーラー(光沢がでるまで塗布する) + 淡彩色の弾性塗料を使用することで、建物を水から守る弾性塗料の効果を最大限発揮することができます。

 

4.代表的な弾性塗料を紹介!

最後に代表的な塗料メーカーから販売されている弾性塗料を紹介いたします。

DANシリコンセラ(日本ペイント株式会社)

DANシリコンセラ

画像出典:https://www.monotaro.com/p/1639/4035/

大手塗料メーカーの日本ペイントの水性1液型弾性塗料です。
塗膜に厚みが出て高い防水性能を発揮します。
ただ塗膜が厚い分、1缶あたりの施工可能数量が少ないため、施工価格が他の弾性塗料より高くなる場合があります。

 

・シリコンテックス(関西ペイント株式会社)

シリコンテックス

画像出典:http://www.town-paint.com/

同じく大手塗料メーカーの関西ペイントの水性1液型弾性塗料です。
単層弾性塗料に水性アクリルシリコン樹脂を含有させる事によって高い耐候性を持っています。
単層弾性仕上げ材の性能を向上させ、大幅に機能性を高めています。

 

・セラミクリーン(エスケー化研)

セラミクリーン

画像出典:http://www.amazon.co.jp/

エスケー化研の水性1液型弾性塗料です。
独自の弾性セラミックシリコン樹脂を使用しており、低汚染性・高耐久性を有しています。
この塗料に限ったことではありませんが、水希釈で有機溶剤を使用しないため塗料独特の臭気が抑えられています。

 

・EC-5000PCM(株式会社アステックペイント)

EC-5000PCM

アステックペイントの水性1液型弾性塗料です。
従来のアクリル塗料とは異なり、不純物を極限まで取り除き、より純度の高いアクリルを使用したピュアアクリル樹脂塗料です。
弾性塗料に一般的に使用される可塑剤を使用していないため、高い耐候性を有しており、優れた伸縮性により防水効果も抜群です。

 

・弾性ビニロックスーパー(ロックペイント株式会社)

弾性ビニロック

画像出典:http://www.paint-city.com/

ロックペイントの水性1液型弾性塗料です。
防水性と柔軟性に優れ、透湿性・防水性に優れた多機能型の単層弾性塗材です。

 

5.まとめ

ここまで、弾性塗料の特徴や適した下地などについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。
弾性塗料は施工方法や下地の選択を間違わなければ、塗装本来の「水から家を守る」という役割をしっかりと果たすことができます。
弾性塗料を使用する前には、「自分の家に適している塗料なのか」を見極めることが重要です。