見積書を見ると、足場に一定の費用がかかっていることがわかります。すでに見積書をとられている方の中には、「高すぎるのではないか」、「鉄筋を組むだけなら、自分でもできるのでは」といった思いを持たれた方もいらっしゃるかもしれません。

先に結論を申し上げると、足場には一定の費用がかかります。そして、その額は、外壁塗装費用の約2割とも言われています。――なぜ、それほどの費用がかかるのか。この記事では、その理由を紐解いていきたいと思います。

足場費用は、実は悪徳業者に騙されやすいポイントでもあります。契約を結ぶ前に、ぜひ記事内容をご一読ください。

1.外壁塗装には、足場が必要な3つの理由


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写真提供:プロタイムズ堺北店

そもそも足場が、なぜ必要なのかをご存知でしょうか。足場を設置するのには、大きく3つの理由があります。

1-1 安全管理のため

足場を設置する最大の目的は、高所で作業を行なう職人の安全を守ることです。万が一、現場で転落事故が発生してしまった場合、工事を依頼した側の精神的な負担も甚大なものになります。労働安全衛生法でも、2m以上の高所で作業をする場合、足場の組み立て等の安全対策が義務づけられています。

1-2 施工品質を保つため

適切な足場を設置していないと、きちんと塗ることができず、施工品質の低下を招きやすくなります。

1-3 近隣への配慮のため

足場を組むことで、その上に飛散防止ネットを張ることができます。飛散防止ネットは、近隣の建物へ塗料が飛散するのを防ぐ役割を果たします。

2.悪徳業者から身を守るために、知っておくべき足場費用の相場

外壁塗装費用の約2割とも言われる足場費用。少なくない金額が故に、悪徳業者に狙われやすいポイントとなっています。心ない手口に引っかからないために「足場費用の相場」をしっかりと把握しておきましょう。

2-1 足場費用の相場

足場費用は、600~800円/㎡が相場。
ちなみに飛散防止ネットの相場は、100~200円/㎡が目安です。
二階建て戸建住宅の場合の足場の費用は平均して15万円~20万円ほどが相場となります。

2-2 足場費用は、自分でも簡易計算で算出できる

見積書の足場費用を、下記の計算方法でチェックすることができます。

■計算方法

①まず足場架面積(足場をかける面積のこと)を算出します。

足場架面積=[家の外周+8m]×高さ
※足場は外壁から少し離れたところに設置するため、足場架面積は、実際の塗装面よりも大きくなります。家の外周にプラスする8mは、外壁から足場までの部分の数値です。

②算出した足場架面積をもとに、足場費用を出します。

足場費用=足場架面積×(足場費用/㎡+飛散防止ネット/㎡)
※上記はあくまで見積書をチェックするための簡易の計算です。詳細な金額は業者に問い合わせてください。

2-3 足場代は絶対に無料にはならない

そもそも足場を組むには、足場の組立て等作業主任者(国家資格)を配置する必要があるため、専門の足場業者に依頼する塗装業者が少なくありません。また足場の費用には、足場の材料を運ぶ運搬費をはじめ、足場を組む施工費、解体費等も含まれています。それだけの工程・人件費がかかるはずの作業を簡単に無料で提供できるはずがないのです。

「足場代を無料にします」というセールストークをする業者には要注意。足場代を無料にすると言いながら、その分、資材代や人件費が高くなっているかもしれません。

2-4 外壁と屋根をいっしょに塗装するとお得になる?!

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「お得に塗装をしたい」と考えるなら、外壁と屋根をいっしょに塗装してしまうのがオススメです。外壁塗装をする際にも、屋根塗装をする際にも、足場が必要となります。そして、その足場自体に大きな違いはありません。つまり、屋根塗装と外壁塗装を一緒に実施すれば、一つの足場で、屋根も外壁も塗装できるというわけです。

いずれにしても、外壁も屋根も定期的な塗り替えが必要となりますので、ぜひ一緒に検討してみてください。

2023年版|外壁塗装の費用相場は?塗料代が値上げになる?見積りをプロが解説!

3.足場はDIYできない

2-3でお伝えした通り、足場を組むには足場の組立て等作業主任者という国家資格が必要です。また足場の組み立て等に関わる作業者は、全員が特別教育を受講する必要もあります。そのため素人には足場を組むことはもちろん、板を一枚動かすこともできません。

4.足場の種類

足場の種類やその内容について詳細に理解しておく必要はありませんが、法律違反の簡易足場をつくって作業をする業者も存在するため、“どんな足場があるか”ぐらいは把握しておきたいところ。できれば足場を設置する前に、どの種類の足場を建てるのか、なぜその足場を選んだのかなどを業者に確認しておくと安心です。また、足場を設置しない工法も併せてご紹介します。

※塗装業者が下請けの足場業者に依頼をしている場合には、塗装業者を通して、足場業者に確認をするようにしましょう。

4-1 単管足場

鉄パイプを組み合わせて建てる足場

■メリット
・あらゆる建物の形状に対応できる
・狭い場所にも設置できる

■デメリット
・2本のパイプの上に乗るため、非常に不安定
・塗料缶や刷毛を足場の上に置くことができないため、常に片手が塞がった状態になってしまう

4-2 単管ブラケット足場 

単管に足をのせる板をボルトで固定した足場

■メリット
・単管足場より安全性が高い

■デメリット
・設置の工期が長い
・ボルトが緩むと、揺れやすくなる

4-3 くさび(ビケ)足場

くさび緊結式足場(ビケ足場)
凸金具と凹金具で固定し組み立てる足場

■メリット
・住宅用の足場の中では、一番作業がしやすい
・設置の工期が短い
・安全性が高い

■デメリット
・場所によっては、設置できないことがある
・設置時にハンマーで叩いて固定するため、騒音が発生する

ビケ足場
画像提供:株式会社ダイサン
※「ビケ足場」は株式会社ダイサンの登録商標です。

4-4  【例外】足場を設置しない無足場工法

ロープブランコ

足場を設置せず、屋上からロープブランコと呼ばれる台を吊るし、その上に乗って作業をする工法

■メリット

・足場を組む分の工期を短縮できる
・足場費用の削減ができる

■デメリット
・作業自体に時間がかかる
・高度な技術が求められる工法であるため、熟練の職人を登用し人件費がかかる

※外壁塗装をする場合、通常は足場の設置が必須ですが、無足場工法の場合、例外的に足場を設置する必要がありません。ただし、現時点では無足場工法に対応できる技量を持った職人はまだまだ少なく、足場を組むやり方が一般的です。無足場工法を提案された際には、施工実績等で技術レベルを確認されることをオススメいたします。

5.知っておきたい足場に関するトラブル例

5-1 建物等の破損トラブル

足場の組み立て時や解体時に、家の外壁や窓をはじめ、車、場合によっては接近している隣家を傷つけてしまうことがあります。そのような事態が発生した場合に、トラブルの焦点となるのが、補償してくれるのか・そもそも誰が補償するのか、という2点です。

「壊したのは業者なのだから、業者が責任をとるはず」というのは、当然の意見なのですが、足場業者は、塗装業者が依頼した下請けであることも多く、足場業者と塗装業者の責任逃れに巻き込まれ、結局泣き寝入りをしてしまうケースもあるのです。

このような最悪の事態を避けるためには、足場業者が保険に加入しているか、事前に塗装業者から確認してもらうと良いでしょう。その際、保険の対象範囲は、工事箇所だけでなく、工事箇所以外の場所や工事関係者以外の人まで含まれているか、あわせて確認することが重要です。

5-2 隣人トラブル

足場を組むだけのスペースを自分の敷地内だけで確保できない場合、隣の敷地を借りて足場を組む必要があります。その際、慎重に進めたいのが、近隣対応。足場を勝手に組み、後から報告したり、業者だけに説明を任せて自身で何の説明もしなかったがために、トラブルに発展してしまうケースは少なくありません。隣の敷地を借りる必要がある場合には、足場を組む前にお願いにあがるようにしましょう。できれば業者にも同行を依頼し、専門的な観点からの説明もできるとベストです。

まとめ

足場費用には一定の費用がかかるため、高いと感じる方も多いと思います。しかし、そんな消費者心理につけこみ、あの手この手で罠を仕掛けてくる悪質業者がいることも忘れてはいけません。「足場を無料にします」という甘い言葉の先には、大きなしっぺ返しが待ち受けているのです。

心ない手口に騙されないためには、この記事でご紹介した『足場が塗装工事に必要な理由』、『足場には一定の費用がかること』を正しく理解しておくことが重要です。