あなたのお家の外壁には、どんな仕上げ材が使われていますか? 突然こんな質問をされても、すぐに答えられる方は少ないのではないかと思います。仕上げ材とは外壁に模様をつけるために使用され、リシンやスタッコ、吹き付けタイルなど様々な種類があります。そして実は、外壁に使用されている仕上げ材によっては、塗り替えメンテナンスの方法が変わってくるのです。

もしも外壁に触ってみたときザラザラとした感触があれば、あなたのお家には「リシン」という仕上げ材が使われているのかもしれません。本記事では、仕上げ材のひとつ「リシン」にスポットライトを当てて、その特徴やメンテナンス時の注意点などについて詳しく解説させて頂きます。

リシン仕上げの基礎知識

ここでは、リシン仕上げに関する基本的な知識についてご紹介します。

リシン仕上げをした外壁はどんなもの?

そもそも、外壁のリシン仕上げとはどのようなものを指すのでしょうか。他の仕上げ方法と比較しながら、詳しく説明していきます。

リシンとは、モルタル外壁の仕上げ材として用いられている表面化粧材のことをいいます。骨材(細かく砕いた石や砂)に樹脂やセメント、着色剤などを混ぜたものを吹き付けて施工するため、表面がザラザラとした仕上がりになります。比較的安価な仕上げ材であるため、新築住宅によく使用されています。その歴史は古く、現在のアクリル樹脂素材が確立された1960年〜80年代にかけて、最も一般的なモルタル下地仕上げ材として日本中に広まりました。

それでは実際に、モルタル外壁に用いられる他の仕上げ材と見比べてみて下さい。

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リシンによって施工された外壁は、混ぜ込まれた細かい骨材によって独特の落ち着いた外観になります。そのため和風住宅などとの相性はバツグンです。耐用年数はおよそ8年程度です。

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スタッコ仕上げは合成樹脂エマルションなどにセメントや骨材(大理石や砂など)を混ぜた原料を、コテやローラー、または吹き付けによって施工した仕上げ方法です。リシン仕上げに比べて厚く塗装されているため、立体感のある外観になります。耐用年数はおよそ10年程度です。

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けい砂、寒水石、軽量骨材などの原料と樹脂を混ぜ合わせ、タイルガンという口径の大きい塗装機で吹き付けたものです。吹きつけた後にローラーで表面を押さえていく押さえ仕上げという施工方法もあります。耐用年数は使用される樹脂によって様々です。

リシン仕上げの種類もいろいろ

長い歴史をもつリシン仕上げですが、現在に至るまでに様々な施工方法が登場してきました。ここでは、その中でも代表的なものをいくつか紹介します。

リシン吹き付け

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最も一般的な施工方法で、「リシンガン」と呼ばれるガンを用いて外壁に吹き付ける手法です。安価であるため人気が高く、凹凸のある仕上がりになります。

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リシンを吹き付けた後に、職人がブラシや剣山のような道具を用い表面を粗く仕上げたもののことをいいます。通常の吹き付け仕上げよりも繊細で柔らかく、深みのある仕上がりになります。人の手による施工であるため職人の腕に多少なりとも左右されますが、外壁に高級感を持たせたい場合にはおすすめの仕上げ方法です。

弾性リシン

弾力性があり、リシンの弱点であるひび割れに追随する弾性リシンが近年開発されました。ただリシンはそもそも塗膜が薄いため、そこまで大きな効果が期待できるわけではありません。通常のリシンよりもすこし汚れやすくなっているというデメリットもあるため、まだまだ発展途上の仕上げ材であるといえます。

リシン仕上げの特徴と、よくある劣化症状

リシン仕上げとはどういうものか、その概要についてご理解頂けましたでしょうか。本章ではさらに踏み込んで、リシンで仕上げた外壁の特徴を詳しく解説していきます。

透湿性・通気性はバツグン!

リシンが新築住宅に多く使われる理由は、その価格の手軽さだけではありません。もうひとつの大きな理由として、透湿性・通気性に優れているという点が挙げられます。ではなぜ、新築住宅の外壁に透湿性が必要なのでしょうか。

日本における新築住宅の多くは、木材を主に使用して建築されています。木材の最大の天敵は水分ですので、内部に湿気がこもってしまうと早期の腐敗を招いてしまうという事態にもなりかねません。そのためモルタル外壁では内部に透湿防水シートを入れる、仕上材にはリシンなどの透湿性に優れる材料を使うなどの対策を取っています。

艶を抑えた高級感のある仕上がりに

モルタル外壁が多く使用されている和風住宅では、新築特有のピカピカとした外観よりも、艶を抑えた落ち着きのある仕上がりにしたいという方が多くいらっしゃいます。リシン仕上げの外壁は表面にある凹凸が太陽光を拡散させるため、新築でも艶が抑えられた仕上がりになります。

またリシンは、施工するたび様々に表情を変えることも大きな特徴です。粒子の大きさや配置は当然ながら毎回異なりますし、腕のある職人ならばリシン掻き落とし仕上げでお家の外壁に高級感をもたらすことも可能です。

ひび割れしやすく、防水性には難点も……

安価で施工しやすく、通気性や美観にも優れているリシンですが、やはり短所もいくつか存在します。

そもそも吹き付けリシンは比較的薄く施工されており、その上安価なアクリル樹脂が使用される場合が多いため耐久性は決して高くありません。耐用年数はおよそ8年程度といったところでしょう。また、下地となるモルタルの収縮に対応できないことも欠点のひとつとして挙げられます。地震などによって発生した下地の動きに追随できないので、ひび割れ(クラック)の発生は起こりやすいと言えます。一般的に幅0.3mm以下のヘアークラック、それより大きな構造クラックと呼ばれる劣化症状はモルタル外壁の宿命ですので、充填剤による補修や塗装などの定期的なメンテナンスが必要となるでしょう。

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出典:プロタイムズ金沢駅西店・富山中央店

また、画像のような横方向のひび割れには特に注意が必要です。横に伸びたひびが壁面を伝う雨水を全て受け止めてしまうため、内部への水の浸入のリスクが高くなってしまいます。リシン外壁のひび割れが目立つようになってきたら、一度プロによる診断を受けてみることをおすすめします。

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汚れはどうしても目立ってしまう

リシン仕上げの外壁は凹凸が多く、そこにホコリや水垢が溜まるためにどうしても汚れやすくなっています。また一般的なアクリル樹脂などのリシンには防カビ・防藻機能がついていないものが多く、大通りに面した壁や北面など湿気の多い場所では注意が必要です。カビや雨筋などの汚れが目立つと美観を損なうだけでなく、耐久性を下げてしまう要因にもなります。とくに汚れが酷い場合は、高圧洗浄などの対策を視野に入れるのもひとつの手です。

リシン仕上げ汚れ

リシン外壁を塗り替える際のポイント