塗装

何社も相見積もりをとって塗装業者を選んだはいいものの、本当に施工内容は適切なの??

塗料は正しい方法で塗られて初めて製品として成り立ちます。

正しい方法の1つに塗料の「乾燥時間を守る」ことがあります。

乾燥時間を守らずに塗ってしまうと、不具合(膨れ・剥がれ等)を引き起こすリスクを倍増させることになります。

塗膜が剥がれたり、膨れたりという事態を引き起こしてしまう原因は、塗膜表面ではなく塗膜内部の乾燥が不十分な状態で施工することにあります。

ここでは、トラブルを未然に防ぐための外壁塗装の乾燥時間について説明していきます。ぜひ参考にしてください。

1.外壁塗装の乾燥時間の基礎知識

まずは外壁塗装の乾燥時間について詳しく説明していきたいと思います。

1-1.乾燥時間とは:塗料が乾くまでの時間のこと

乾燥時間とは、下塗りを塗って上から2回目の塗装の中塗り、同様に中塗りを塗って上から3回目の塗装の上塗りというそれぞれの塗装の間の乾かす時間のことです。
乾燥の目安としては、指の腹でこすって、塗膜に異常(しわ・めくれ等)が出ない状態です。

塗料というものは半製品です。塗られて、乾燥し、密着することでやっとひとつの商品として成り立ちます。つまり、塗料の性能が十分に発揮するには塗った後に十分に乾燥させて塗膜を形成する必要があるのです。

例えば、日頃よく使われる接着剤ですが、「接着剤=瞬間的に硬化」というものばかりではないですよね。
完全に硬化して密着するまで10分、24時間、なかには2~3日も待たないといけないものもあります。

その接着剤と同じように、塗料にも接着剤のような働きがあり、決められた乾燥時間を守らないとしっかりと外壁に付着しないのです。

1-2.乾燥時間を守らないと塗料の性能を最大限発揮できない可能性が高い

塗料は乾燥させないままに無理に塗ってしまうと不具合を起こします。

塗装工事は湿式工法なので、各工程間(下塗り→中塗り→上塗り)でしっかりと乾燥をさせてから次工程に移らなければなりません。
塗料ごとに乾燥時間が決まっていますので、メーカーのパンフレットに記載ある乾燥時間を守ってしっかり乾燥させなければなりません。

塗料の乾燥には時間がかかります。中には乾燥時間を待ち時間と捉え、ほんのちょっと乾かしただけで次の工程に移る業者もいます。

しかし、この乾燥時間を守らないばかりに、不具合を引き起こすことに繋がるのです。

家を長く守るために塗装をしたのに、乾燥時間を守らなかったために塗料の性能が発揮できず不具合を引き起こしてしまうと、元も子もありません。

乾燥時間を守らないことでよく起こる不具合として「膨れ」や「剥がれ」があります。

外壁塗装をする際、水性や溶剤系の塗料を使用します。多くの外壁塗装の現場では水性塗料が使用されますが、その水性塗料は半分以上が水分でできており、その水分を蒸発させて残った樹脂で塗膜を形成していきます。

しかし、塗膜が乾燥する前に次工程に移ると、下塗り塗料に残っている水分が中塗り塗料に吸収されてしまい、塗膜の形成不良となります。

この形成不良こそが、膨れや剥がれの原因となります。

【例】梅雨時期の工期が詰まってしまっているときの施工(雨も時々降っているとき)

~1日目の工程~

工程時間
高圧洗浄午前中
養生13:00~15:00
下塗り15:00~17:00
中塗り17:00~19:00

~2日目の工程~

工程時間
上塗り8:00~10:00
養生剥がし11:00~

※あくまで一例です。業者、塗料の種類等、施工状況によって工程は異なります。

上記のように、塗装を乾燥させる時間もなく、さらには梅雨時期のじめじめした時期にこのような塗装をしてしまうと不具合を引き起こす原因となります。

剥離
<施工不良によって剥離を起こした塗膜>

乾燥時間を守らない等による外壁塗装の剥がれは、塗装が終わってすぐよりも、2~3年経った後に起こるケースが多いです。
塗装直後は多少の密着不良があっても剥がれずに何とか付着している状態を保てるためです。
よって、塗装直後はその不具合に気づけないことがほとんどです。

せっかく塗ったのに剥がれが起こり、下地ごと補修しないといけないとなると余計に費用もかかってしまいます。
そうならないためにも、メーカーの定める塗料ごとの乾燥時間を守った施工が重要になるのです。
乾燥時間はメーカーのパンフレット等で確認できます。

塗料 パンフレット
<メーカーのパンフレットに記載された施工工程表>

1-3.1日で下塗りから上塗りまで一気に仕上げてしまうのはあり得ない

一般的な外壁塗料では、乾燥時間は4時間ほどのものが多いです。

下塗り→乾燥時間(4時間)→中塗り→乾燥時間(4時間)→上塗り

と考えても、一つの現場につき乾燥時間は8時間以上必要になります。
つまり、各工程の塗る時間を半日としても、1日で仕上がるはずはないのです。

しかし、世の中には1日で下塗りから上塗りまで仕上げてしまう業者もいます。
工程表を見せてもらい、乾燥時間を考慮した内容(1日1工程)になっているかを確認しましょう。

工程表

施工知識がなく、乾燥時間を守らずにどんどん塗ってしまう業者もいますが、乾燥時間を完璧に守らず施工をしてしまっている業者もいるのが実態です。

塗装見積の内訳は金額の約5割が職人の人件費(人工)です。
他社に負けない価格を提供しようとするとどうしても人件費を落とさざるを得ません。
そこで、人件費を削減しようとすると工期を短くするほかないのです。

一般の方が業者に向かって指摘をすることはとても勇気のいることです。
前もって、見積書をもらった段階で、「この塗料なら乾燥時間はどのくらいか?」「工期はどのくらいか?」といった質問をして、その業者がメーカーのパンフレット通りの回答をするかどうかで見極めることもできます。

 

2.塗料や季節によって乾燥時間は異なる

乾燥時間はどの塗料も一概に同じではありません。また、季節や気候によっても乾燥しやすい、しにくいといった変化があります。
この章ではその違いを解説していきます。

2-1.塗料によって乾燥時間は異なる

塗料メーカーごとに乾燥時間の基準は多少変動がありますので、使用する塗料メーカーのパンフレット等で確認することが重要です。

また、塗料の乾燥時間は水性塗料か溶剤塗料かによっても変わってきます。

水性塗料は水分が蒸発することによって塗膜をつくるため、低温だと溶剤塗料以上に極度に乾燥が遅れることがあります。

実際のところ、外壁塗装は安全面を考慮して水性塗料を使用、屋根塗装は塗装初期の降雨・結露などによる影響を受けにくい溶剤塗料を使用するのが、まだまだ主流となっています。

2-2.乾燥しにくい気象条件下では乾燥時間を延ばす

外壁塗装の場合、塗料を乾かすのは外になりますので、気候に左右されます。

外気温が低くなればなるほど、その分乾燥時間も長くなります。
夏場は乾燥が比較的短く、冬は比較的長くなります。

また、冬場は気温が低すぎると外壁塗装そのものが行なえません(気温5℃以下は塗装不可)。また、特に梅雨の季節などは雨が降ったり湿度が高すぎたりすると外壁塗装は行なえません(湿度85%以上は塗装不可)。

ただし、冬や梅雨は塗れないわけではなく、年中塗装は可能です。

冬や梅雨の季節でも晴れていて、気温が5℃以上、湿度も85%以下の場合は塗装可能なので、特に「この季節は塗装はダメ」ということはないので、季節に関してはあまり気にしなくても良いでしょう。

気温や湿度以外の条件でも乾燥速度は変動しますので、下記の表を参考にしてもらえればと思います。

【さまざまな観点から見た乾燥時間の比較】

乾燥時間季節天気
比較的短い晴れ
普通春・秋曇り
比較的長い冬・梅雨

この他にも、塗膜の厚みが厚ければ乾燥時間が長く、薄ければ短い、北面の方が日照時間が短く乾燥しにくいといった条件もありますので、参考にしてください。

また、塗膜が乾燥した目安としては、指で触って塗膜が付くかどうかです。この基準もぜひ覚えておいてください。

 

まとめ

外壁塗装において乾燥時間を守ることは大変大事なことです。乾燥時間を守らないことによって様々な施工不良に繋がってしまうのです。

「メーカーのパンフレットに則った乾燥時間を確保してある」、「工程表も乾燥時間を考慮した内容になっている」、「塗料の塗り回数を厳守している」だけでなく、「乾燥時間をしっかり守っているかどうか」まで見て良い施工業者かを判断しましょう。