屋根

皆さんの暮らしを守る大切な家も年月と共にだんだんと傷んでいくのはご存じだと思います。壁面であれば、「ここが傷んでるなぁ」と気づく事ができますが、屋根の場合そうはいきませんよね。
皆さんはご自分の家の屋根を見た事がありますか?また、ご自分の家の屋根が今、どんな傷みの症状を持っていて、その症状を直す為にはどんなメンテナンスが必要かご存知でしょうか?
今回は、スレート瓦という、日本でも近年多く使われている屋根材にスポットを当て、その特徴とメンテナンスの方法、またメンテナンス時、気を付けなければいけないポイントについてご紹介します。

.スレート屋根とは

1-1.スレート屋根は軽量で耐震性に優れた建材

まず、スレート屋根という建材がどのようなものなのかをご紹介します。

スレート屋根の正式名称は「着色スレート瓦」といいます。メーカーによっては、コロニアル、カラーベストなどの名称がついていますが、すべて同じスレート瓦です。厚さが4.5㎜、内容成分は85%がセメントで、残りの15%が石綿で構成されています。4.5㎜ととても軽量な為、建物への負荷が少ないので、地震対策にも非常に優れた建材であるといえます。さらに、色や形状が様々にある為、近年の住宅建材として非常に多く使用されています。一方で、この建材は寒さに弱いので、寒冷地での使用ができないという弱点があります。

簡単に説明すると、上記のような特徴をもった建材です。では、この建材の特徴を他の建材と比較しながら分かりやすく解説していきます。

・重さと特徴で比較

上記でご説明したとおり、スレート瓦は非常に軽量で地震対策に優れた建材です。住宅の上に重さが掛かりすぎると、建物全体のバランスが崩れ、地震などの揺れが起こった際、大きく揺れてしまいます。軽い屋根材ですと、バランスが良い為、地震があっても倒壊など最悪のケースを防ぐ事ができます。それでは、他の建材はスレート瓦にくらべてどのくらいの重みがあるのか?ここで特徴とともに見ていきましょう。

屋根材比較

上の図の重さは、あくまで参考なので、出しているメーカーによって建材の重みは事なります。目安として見ても、スレート瓦が非常に軽量で、優れた建材であることがわかります。
次の章では、この優れた建材の性能を長く持続する為に必要なメンテナンスについてご案内します。

1-2.スレート屋根は塗装メンテナンスが必要

良くされる質問に、「屋根って、見た目を気にしなければ塗替えしなくていいんでしょ?」というものがあります。果たしてそうでしょうか?多くの方が、スレート屋根などにほどこされる塗装を、「美観の為」にしていると誤認しています。ここでは、なぜスレート屋根を塗装しないといけないのか、また、塗装をせずほうっておいた屋根にどんな傷みの症状がおこり、最悪の場合どのような被害を引き起こしてしまうのかを見ていきましょう。

・建材の主成分から見る塗装の必要性

まず、スレート瓦という建材の主成分から、塗装の必要性をみていきましょう。

スレート瓦は、85%のセメントと、15%の石綿でできています。スレート瓦自体に防水性は無い為、工場で生産される際、初期塗装を施されます。
つまり、スレート瓦は、表面の塗装に防水性を依存しているのです。その為、初期塗装の切れる約10年のタイミングで様々な劣化症状がでてきます。

スレート瓦の耐候性や耐久性を長く持続する為には、表面の防水塗装を切らさない事が大切なのです。

・スレート瓦の構造から見る塗装の必要性

では、次にスレート瓦の構造と、塗装の必要性を見てみましょう。皆さんはスレート瓦がどのように、屋根の上に載っていると思いますか?またどのようなものを使用して接着していると思いますか?下の断面図は、スレート瓦を使用した屋根をイメージしています。

屋根の構造

屋根は、野地板と呼ばれる板の上に、防水シートを載せ、スレート瓦を重ねます。重ねたスレート瓦は釘で打ち付け、止められています。

この時、注目して欲しいのが、スレート瓦を固定している釘は防水シートと野地板を貫通していることです。本来、スレート瓦表面の塗装が防水性を発揮している場合、雨水がついても弾くので問題はありませんが、10年弱経過し、防水性が切れてしまっていると、スレート瓦は水を吸水します。吸収された雨水は、じわじわと下面へ染みていき、最終的に釘を伝って野地板へ染みていきます。防水シートや野地板にも吸水性がある為、すぐに屋根裏へ雨染みができるという事はありませんが、この状態が何年も続くと最悪の場合、雨漏りという症状になってしまいます。

スレート雨漏れ

最悪の事態を防ぐためにも、スレート瓦の塗装は定期的におこない、しっかりと防防水性を保ち続ける事が重要だと言えます。

スレート屋根をメンテナンスする場合

2-1. スレート屋根の劣化の目安

それでは、どんな症状がでてきたらスレート屋根が傷んでいると言えるのか、劣化の写真とともに見ていきます。

■コケの発生

コケ

スレート瓦の代表的な劣化としてあげられるのが、コケの発生です。先ほど書いたように、スレート瓦は主成分がセメントなので、表面の塗装が劣化すると、水分を吸収するスポンジのようになってしまいます。その為、日当たりの悪い部分などは上の写真のようにコケが発生します。コケは水分を蓄える性質を持っている為、吸水性のあるスレートに常時、水を与え続けるという悪循環を起こしてしまいます。

■釘抜け

釘抜け

スレート瓦は釘で固定されていますが、この釘が自然と抜けてしまう事があるのです。スレート瓦や屋根の頂上部の棟押さえという板金は気温の変化によって、わずかですが膨張、収縮をします。日中の暑さで膨張し、夜間の寒さで収縮する事で、長い年数を掛けて、ゆっくりと釘を外に押し出してしまいます。これを放置しておけば、釘から雨水がつたい、躯体へ水を浸入させてしまう事になります。メンテナンスをおこなう際は、釘が抜けかけていないかを確認し、傷んでいる釘は新しいものに変える等の対策を取る必要があります。

2-2.スレート屋根を塗装する場合

スレート屋根の塗装

では、実際スレート瓦の屋根をメンテナンスする場合、どのような方法があるのかご紹介します。一番オーソドックスな方法は塗装です。外壁面の汚れを落とした後、塗装で防水性を持たせます。

塗装をする場合のメリット塗装をする場合のデメリット
・カバー工法、葺き替えに比べると金額が安く済む

・カバー工法、葺き替えに比べて工数が少ない為、短期間で終わる

・塗装で済ます場合、カバー工法、葺き替えに比べて耐用年数が短い

・傷みのひどいスレート屋根には塗装をできない場合がある

スレート屋根を塗装でメンテナンスする場合、足場代を含め、約50万円程度が掛かります。
屋根のメンテナンスの中では、もっとも安価でポピュラーですが、築年数が経ち、塗装でメンテナンスできない屋根もありますので、業者の方と打合せをしっかりしましょう。

2-3.スレート屋根をカバー工法する場合

カバー工法

次に、古いスレート瓦の上に、新しい屋根を載せるカバー工法というメンテナンス方法がります。新たに乗せる屋根材はガルバリウム鋼板を使用するのが一般的です。「屋根が重くなってしまわないか?」と不安に思われる方もいるかもしれませんが、旧屋根材との重さと、新たな屋根材のガルバリウム鋼板を合わせても、日本瓦よりはるかに軽いのです。

カバー工法をする場合のメリットカバー工法をする場合のデメリット
・廃材が出ないので、葺き替えをおこなうよりも安く済ませる事ができる

・塗装のメンテナンスよりも、耐久性を長く保つ事ができる

・旧屋根材の上に新しい屋根材を重ねる為、葺き替えに比べて屋根が重くなる

・ガルバリウム鋼板を使用する際、雨音が響く場合がある

カバー工法でメンテナンスする場合、足場代を含め、約100万円~150万円ほどかかります。塗装にくらべて値段は高くなりますが、塗った場合よりも長く美観性や防水性を保つ事ができます。また、塗装には適さない、劣化の進行が進んだ屋根にもカバー工法はオススメです。

2-4.スレート屋根を葺き替える場合

葺き替え

葺き替えとは、旧屋根材を一度全て取り除き、新しい屋根材を貼りなおす工事の事を言います。旧屋根材を処分する為に、廃材処理費が掛かるなど費用的なデメリットはありますが、耐用年数の長さ、地震対策の優位性から見るとオススメのメンテナンス方法です。

葺き替えのメリット葺き替えのデメリット
・野地板や防水シートも交換ができる為、耐用年数が一番長い

・新たに乗せる屋根材を選ばない為、デザインの選択の幅が広がる

・旧屋根材を処分する費用が掛かる為、価格的負担が大きくなる

・工期が長く、騒音、異臭、埃、煙などで民家に迷惑が掛かる場合がある

屋根を葺き替える場合、足場代や廃材処理費を含め、150万円~ほど掛かります。下地材も交換する事ができるので、すでに躯体に水が入ってしまっている場合には葺き替えをするのが良いでしょう。また、葺き替えの場合は新たな屋根材の選択の幅が広がります。屋根材に希望がある方は、葺き替えの検討をするのも良いでしょう。

屋根の補修には、上記のようにいくつかの方法があります。ご自分の家の劣化や経済状況に応じて選んでいくのが良いでしょう。

.スレート屋根のメンテナンス時、気を付けたい2つのポイント

3-1.縁起りをしないと雨漏りの原因に!

いざ、屋根を塗装しよう!と思った時、どんなところに気を付ければいいのか、どんな業者に頼めばいいのか分からないと不安ですよね。ここでは、スレート屋根を塗装する際、一番気を付けたいポイントと、業者選びの目安をご紹介します。

・スレート屋根の要、縁起り!

スレート瓦を塗装でメンテナンスする時、一番大切な作業が「縁起り」と言われるものです。簡単に言うと、スレート瓦の重なり部分に隙間を開け、雨水を逃がす排水口を作るという作業です。

縁起り

スレート瓦の屋根は、薄い瓦を重ねて施工されます。通常は上記の図のように、瓦と瓦の隙間から水は流れていきます。この隙間が塗料によってふさがれてしまうと、逃げるはずだった水が逆流、さらに内部に滞留し、最終的には釘を伝って野地板や天井裏へと流れていきます。縁起りを行わない事は、最悪の場合、雨漏れを引き起こす、初歩的な施工不良です。塗料が完全に乾く前に、スケッパーなどで、隙間を人為的に作る必要があります。

・施工業者を選ぶ目安

縁起りはスレート屋根を塗装でメンテナンスする際の、もっとも重要な作業工程です。業者を選ぶ際には、この「縁起り」の必要性や作業の方法を詳しく説明してくれたか?という目安を持ってみてはいかがでしょうか。

3-2.DIYでの補修は危険です!

近年、自分の住まいは自分でメンテナンスしようというDo it your selfの考え方が若い世代を中心に広まっています。住宅への関心が高まり、定期的なメンテナンスの必要性を持ってもらう事は、住宅の寿命を延ばす上で重要な事ですが、屋根へのDIYは考え物です。一番の理由は危険だからです。

■DIYの屋根塗装の危険性

建設現場での事故原因

上の図は建設業における死亡災害発生状況を表した図です。この図を見ると、落下事故による死亡がもっとも高い事が分かります。屋根でのDIYは高所での作業です。建設業に携わる、プロでも5年間に217人が死亡する程、危険が伴います。安全対策への知識や経験のない方がおこなったらどのくらい危険なのか、想像に難くないでしょう。屋根のメンテナンスがしたい、どのくらい傷んでいるのか知りたい場合は業者に依頼することをお勧めいたします。屋根塗装をDIYで行なう場合の注意点については「屋根塗装のDIYで注意するべき6つのこと」をご覧ください。

.まとめ

今回は、スレート瓦の特徴から、メンテナンスの方法、塗装する場合に気を付けたいポイントについて紹介しました。スレート瓦は優れた建材で、しっかりとメンテナンスをおこなえば長く使う事ができます。劣化の目安を自分でしり、定期的なメンテナンスを心がける事が長く、健康な家に住む為に求められています。

今回の記事を読んで、自分の家は築何年だったか?どんな傷みがあるのかな?など考えるきっかけにして頂ければ幸いです。