DIYは昨今、様々な番組やブログなどで取り上げられています。『DIY×女子』という新たな言葉まで生まれ、2015年は空前のDIYブームと言えるでしょう。
DIYの関連商品は売り上げを伸ばし、デザイン性が高い工具なども誕生しました。“一人一台ドライバーを持っている…”なんて時代もそう遠くないのかもしれません。
DIYはこれまでは単なる日曜大工として使われていた言葉でしたが、いまやその形を変え小物作りから自分で出来るリフォームなどにまで広く使われ、DIYの言葉の定義も変化しつつあります。
もともとDIYの語源は「自分でできることは自分でやる」という考えから出来ました。
もし、DIYでリフォーム工事までできるとなれば、出費が大きい面も含めてDIYで安く済ませたいという声も多く存在するのではないでしょうか。
ただ、家の事となると失敗のリスクも大きく、安全面の心配もあります。
実際、家のリフォームはDIYでどこまで出来るのでしょうか。
家をリフォームする真の目的は『今の家に永く住み続けること』。日本の家は欧米に比べ住宅寿命が短いこともあり、定期的に行われるメンテナンスは大きな金額が発生する一大イベントです。ですから、自分ができること、プロに依頼しなければならないことをすみ分けし、一番お得にメンテナンスをする方法を選択することが重要です。
しかし、リフォーム時に困ったことのアンケート調査によると「見積りが適正かわからなかった」「プランが適切かどうかわからなかった」という項目が1位と2位と大きく占めています。判断基準がわからないのです。そのような時に豊富な知識で、中立な立場でアドバイスをしてくれるホームセンターは非常にありがたい存在です。※住宅リフォーム市場データブック2014より
今回はDIYグッズ&リフォーム工事まで家に関わる全ての商品群を揃え、関東に26店舗を展開中のホームセンター『ユニディ』のナンバー1販売員、本部の方へ今後のリフォームの在り方、お得にリフォームする方法をお伺いしました。
目次
1. ズバリ、家のリフォームはどこまでDIYで出来る?
DIYはリスク中心に考えて失敗しても大丈夫な箇所で行なう
DIYにオススメ | DIYをオススメしない(リスクが高い) |
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・室内塗装
・ウッドデッキ塗装 ・クロスの張り替え |
・外壁塗装 ・屋根 ・床の張り替え ・水廻り ・電気の配線 ・ガス関係 |
DIYに興味のある方はリスクの低い箇所に関しては、DIYされて良いと思います。
ウッドデッキの塗装や室内塗装、クロスの張り替えなどは、もし失敗したとしても大きなリスクにはなりませんので、DIYで行っても良いと思います。
しかし、床に関してはリスクの高い箇所です。部屋の床にクッションを敷くだけなら良いのですが、張り替えとなると既存の床を剥がして貼り直します。フローリングは実(さね)と受けの部分、雄雌があるのですが、少しずれたりすると床が鳴ったりすることがあります。プロとDIYの差が出やすい箇所ですね。
室内塗装は実は簡単でDIYオススメしたい箇所です。しかしお客様にとっては勇気がいる箇所のようです。塗料が昔に比べて進化しているので、貼るよりも簡単で落書きがあっても少し塗装をすると簡単に消すことが可能なのですが、お客様の中にはムラが出たらどうしよう、などの不安を抱えていらっしゃる方も多いようです。接客対応時にはそのお客様の不安を取り除いて背中を押すこともしています。DIYでの室内塗装は達成感があり、満足度も高い部位でもあります。
形から作る、クリエイトするという観点ではDIYの入門でもあるウッドデッキを作られる方は多いです。専用のキットなどもありますし、春先に一店舗三ヶ月で約100セット位キット品が売れた事もあります。それ以外でもご自身で設計からして作られる方もいらっしゃいます。しかし、木部なので1~2年で朽ちてきたり、傷みがひどくなったりします。その際は再塗装する方もいいらっしゃれば高耐久な金属アルミに変えたいなどのご相談を頂くこともあります。
リスクがある箇所としてDIYされるのを避けた方がよいのは水廻りです。例えばトイレの本体の交換です。排水の勾配などによるトラブルが多いので避けた方が良いでしょう。水は家にとって天敵なので、少しの水漏れが命取りになります。気付かずに半年経ってしまうと周囲全てカビが発生してしまいます。唯一手を出しやすいのは水道でしょうか。
外壁に関してもあまりオススメはしません。ご自身で塗装される方もいますが、知らずにシーリングの上などから塗装をしてしまうとその後が大変です。ご自身で塗装をしてプロの手で直せない所が出てきてしまうとこれから先塗装工事をしても保証の対象外になってしまいます。驚く事に外壁塗装をする際に洗浄しない方も多くおられます。すぐに剥げてしまったりするケースもあったりひどい方は屋根にコケがあるまま塗装したケースなどもありました。実は簡単に見えて一番難しい箇所、失敗すると大きな金額がかかってしまう箇所ですね。
屋根はとても危ない箇所なので、オススメはしていません。しかしご自身でDIYされる方はいます。トタン屋根が多くあった時代では、ちょうど秋の時期に良く売れますね。
電気関係、壁の中の配線、ガスなども専門業者に任せるべきです。我々はプロの方にも販売をしているので、一般消費者の方でも買えてしまうので注意を促すように心掛けています。
創るものがない?手取り足取りの日本の住宅事情
海外では住宅にドアも壁も何もついていない国も多いと思います、スケルトン状態での住宅に自分で取り付けたり、業者を雇って付けたりします。ですので、海外のホームセンターでは、床やドアが普通に販売されています。ここまで住宅を内装まできちんとした状態で引き渡しを行うのは日本くらいじゃないでしょうか。住宅の引き渡しの常識が日本と海外では全く違います。内装業者などもご自身で選ばれて失敗している方も多くいらっしゃいます。
そのような事情もあって、日本ではなかなかリフォームのDIYが受け入れられない現状もありますね。特に自発的DIYは少なく、非自発的DIYの方が多く感じます。
2.お得なリフォーム工事実現の為に出来ること
DIYとプロが行うリフォームは真逆のように見えて延長線上にあるもの
『お得にリフォームをすること=イニシャルだけでなくランニングコストまで見ること』
先ほども少しお話をしましたが、DIYとリフォーム分野は実は全くの別もので、アメリカと日本のDIYは知識とレベルに差があります。もちろん自分で補修ができる箇所もありますが、やはり限界があるのも事実です。
我々も数十年この業界でやってきましたが、まだまだDIY文化は日本には根付いていないと考えます。
DIYで対応できなくなったら、プロのリフォームをされる方が多くいらっしゃいます。自身で出来る所までDIY、その先はプロのリフォームということです。我々もレベルの段階に応じた商材を全部揃え、顧客のニーズに応じて我々がコンシェルジュとして対応しています。
来店されて相談を伺う内容で多いのは『防音したいけどどうしたら?』とか『駐車場を作ろうと思っているけど、どの割合でコンクリートを混ぜたらよいの?』などのお悩み。
その際、プロに任せた方が良いと思ったら自分でやらない方が良いと勧める事もあります。お悩みをどのように解決するか、そのベストな手段は何かという事を考えてリフォームを選択される事をオススメします。
3.なぜ、工事費用込みのリフォーム商品を強化しているのか?
消費者では業者選びが非常に難しい、その手助けをできればと考えています。
我々は本来材料屋です。塗装の商材を現在強化していますが、これまでは塗料やラッカーなど自分で塗る商材しか置いていませんでした。
しかしアメリカと日本のDIYにはレベルの差があります。それは当然でアメリカと日本の住宅寿命には大きく差があり、アメリカは100年、日本は30年という根底がまだまだ変わっていません。その根本が変化していないのでDIYに関しては知識もレベルも当然違います。
これまでも塗装工事の相談もありました。様々な業者さんともお付き合いをしましたが、塗装工事の業者選びは本当に我々でも難しい。『2年で剥がれた』とか、『雨漏りが起こった』とか毎月のようにクレームを受けていました。
言い方は悪いですが、いい加減な塗装工事や手抜きしようと思ったらいくらでもできますからね。本当に信用できる業者を探していました。形に残るものなら善し悪しの判断がつきますが、塗装はもちろん塗料に色はついていますが商品は出来上がるまでわからないですからね。ですから、お客様もなおさら疑心暗鬼になってしまいます。
弊社では、劣化箇所を動画で撮影してみて頂くビデオ診断を推奨していますが、これまで『屋根見ましたけど穴空いていましたよ!すぐやりましょう』などという営業と違い、どこが、どのようにダメなのかをしっかり伝えられるので、お客様にとってかなり大きな安心材料になっています。塗料も同様で、色は付いているがこれが本当に良い性能なのかわからない。今回導入した塗料はそれをしっかりと見える化出来ているのでお客様に説明しやすい。
私たちも根底の部分を変えていきたいし、日本の住宅寿命を延ばしたいと思っています。それにはまだまだDIYでは追いつきません。だからプロ仕様のサービスを導入し、お客様の選択材料としています。
大事な家に関わるリフォーム工事は『安いからいいだろう』というものではありません。
大事な家に関わる塗装は身につけるものと同じく『人と違うから付けたい』『価値があるものだから付けたい』など良いものを選んで自慢する価値があると思います。
4.家のリフォームで大きなキーワードとなるのは『エコ』
「直す」より「変える」方が得になる?最新のエコ商品事情
多い時で店舗には一日約5000人が来店します。問い合わせ内容は商品の使い方からコンクリートの配分量など内容は様々ですが『もの(トイレやキッチン)が壊れたけどどうすれば?』『古くなってきたけどメンテナンスは必要?』など故障や経年劣化による相談が非常に多いです。
『DIYで修理=最も安い』と思われがちなのですが、商品の性能進化により、性能が以前のものとは圧倒的に違う商品も多く出ていて、ランニングコストも考えると商品を変える方が安いケースもあります。
新しい商品は『エコ』をキーワードに多く販売されている為、イニシャルコストだけでなくランニングコストも含め、商品を変える選択が総合的にお得になることもあります。エアコンなどはいい例で、昔のエアコンは電気代がかなり違います。修理と取り替えを総合的に見て何年で投資回収ができるかなどを検討して決めるべき商品ですね。
トイレも同様で、昔のトイレは一回に約10ℓ以上の水を使いますが、今のトイレは節水型で約4ℓ程度しか水を使いません。年間にすると4人家族の場合、一日8回トイレに行ったら、年間240ℓのお風呂で約200杯以上の違いがでます。お客様はそういった事をなかなかご存じないので、水漏れなどの際にはその話をさせて頂いたりもしています。
イニシャルコストをもちろん大事ですが、私たちはランニングコストも含めご提案をさせて頂きます。そうする事により考えていた金額よりも意外と安く『直す』→『変える』の選択をされる方も多くいらっしゃいます。
5. DIYの人気部位と用途
網戸の張り替えなどの手軽なものから、ウッドデッキなどのガーデニング用品まで要望は幅広い
■網戸の張り替え
季節指数が影響しますが、手軽にできる網戸が一番多いかもしれないですね。年末、4~5月の二回、網戸は住宅に10枚程設置されており意外とボリュームもあります。網戸選びは、色展開が多くありますので、サッシの色と合わせる事が多いのですが、最近は虫を寄せ付けない替え網やメッシュステンレスでできた防犯用の網戸などもあります。目の細かさなどもスタンダードな18メッシュから20、24などの展開があり、虫が入らないように目の細かいものを選ばれる方も増えています。
※数値が大きいほど目が細かくなります。
■水廻り
水道のコマパッキンやトイレの水漏れなどもご自身でされる方もいます。どうしてもトイレも20年経つと水漏れも増えてきます。しかし、今トイレは節水になってきているので交換をされる方が多いです。
昔のトイレと今のトイレでは全く違います。コーティングの技術なども違い、汚れも劇的に付きにくくなっていますので、今後トイレのDIYは減ってくるかもしれませんね。水廻り関係はDIY、リフォーム共に相談件数は多いですね。
■塗装
塗装する箇所はウッドデッキなどが多く、人の生活と密接している木部はDIYされる方が多いですね。
外壁塗装のDIY件数は少なく、気軽にDIYをやれる庭のものが多いように感じます。ウッドデッキを作ったから塗りたい、メンテナンスしたいから塗りたいなどのニーズは大きいように感じます。木を購入される方は一緒に塗料を買って帰られる方が多いです。塗料へのニーズは保護とデザイン(色)という観点が塗料に大きく密接しているように思います。
6. 手軽にできるDIYオススメグッズ
DIYerには個性を求める方が多く、人とかぶらないことやオリジナリティーを出すことが重要視されています。DIYもひとつの『自己主張』の形なのかもしれません。昔ながらのDIYは木から形を作り、クリエイトする所から始まっていました。今はメイクするという観点の方が多いとのこと。自分流にリメイクして飾るそこが現在のDIYのポイントです。
株式会社ユニリビングの本部佐藤さんがオススメする、DIYオススメグッズを紹介します。
① UROCO Recipe
自分の好きなカラーの木を組み合わせて作るおしゃれなウッドフックボード。
杉を加工し、自然の木目を残しながら、鮮やかなカラーを実現。年輪の所を削り立体感を出しています。
カラーバリエーションも豊富で好きな色を自分流に組み立てて作ることができる商品です。
② nuro DECO
描いてはがせる画期的な工作用デコレーション塗料です。木や紙、素焼きの鉢、コンクリートなど様々なものに描くことができます。
ハロウィンイベントやクリスマスなど季節のイベントに、ガラス瓶のデコレーションに、使い道豊富な商品です。
③ 紙バンドテープ
安価でできるクラフトアート。好きなバンドを選び様々な創作が可能です。かごを編んだり、コースターを作ったりなど子供でも気軽にチャレンジできる商品です。うまく色を組み合わせてキャラクターを作るつわものもいらっしゃるそう。
7.ホームセンターは地域にとってどのような存在であるべきか?
我々ホームセンターは何かと聞かれると、やはり材料屋だと思います。
先ほど述べさせていただいた、日本とアメリカの住宅事情が違うように元々家をスケルトンの状態からドアを取り付けたりなど、自分で内外装施工を行う文化が日本にはありません。ですから、当然ホームセンターの在り方も大きく違いがあります。もちろん日本には材料を並べているだけのショップも存在します。
そんな中で我々が目指すべき方向性は『提案型の売り場』と『問題解決できる接客』だと思っています。
パーツを並べるのはもちろんですが、それを自分流に組み合わせるヒントや事例を我々が提供し、これが自分の部屋だったらと想像してもらえる。我々は気付かないところで専門用語が入ってしまいます。お客様には専門用語を入れた瞬間伝わりません。売り場では多くある情報を整理し、箇条書きにするくらいわかりやすく全く知識がない方も売り場を見るとこれは何のためにどうやって使って、いくらでどのようなメリットがあるのかが一目でわかるようにしたいと思います。
リフォームに関しては、今後商品ラインナップに関してお客様ニーズにお応えできるように豊富に揃えることと、接客面に関してはお客様の不安を取り除く事に徹底的に取り組みたいと思っています。スタッフ一人一人がコンシェルジュとしての対応を徹底していますし、ニーズを引き出す為に売り場のスタッフも多い方だと思います。
後、地域貢献として子供が参加するDIYイベントを定期的に実施しています。子供さんメインであれば夏休みイベントを7~8月に店舗を挙げてこういったものを作りましょうとアナウンスを行い募集しています。非常に喜んで頂いておりますし、今後も続けていきたいと思います。
■ユニディとは
地元に根強いファンが多いDIY型ホームセンター。首都圏中心にホームセンター『ユニディ』、工具・金物の店『ユニハードウェア』を展開し、地域のお客様やプロの職人へ満足して頂く商品・サービスを提供。他にはないホームセンターの価値を追求した店づくりが強み。
ストアコンセプトは『信頼、楽しさ、優しさ』
本当に良いと思ったもの、自分の家にリフォームできるほどの商材しかオススメしない信頼のできる商品の販売、自分で作る楽しさを追求した売り場、そしてお客様のニーズをコンシェルジュとして伺い、よりニーズにマッチする提案する優しさを持った接客、相談に乗る姿勢を徹底している。
【まとめ】 これからの次世代リフォームの在り方とは?
今回の取材で日本の建築業界の細かさ、DIYという観点の日本と欧米の違いなど様々な点からお話を伺う事ができました。昨今のアパートでは入居の時にはすでにライトが付いていたり、壁紙にデザイン性があったりする賃貸物件が出てきたり、デザイナーズ物件が多く出ているなど、日本の住宅はますます手を入れて創られている、特に創るものがないほど恵まれています。
しかし家は定期的にメンテナンスが必要になります。その際にDIYとリフォームを融合し、コストダウンと自分らしさを出せるリフォームを行いましょう。
『定期的なメンテナンス』と『DIYするべき部位とプロに依頼する項目をうまく分ける』事が重要
まずは家のメンテナンス表を作成してみましょう。『いつ、どこに何をしなければならないか』を一覧化し、プロにお願いするか、DIYするかを考えましょう。
このメンテナンス表を作成しておくとプロにお願いする場合、他のメンテナンス箇所もまとめて安くお願いできる交渉もできます。また、プロにお願いするべきか、自分で対応をするべきか迷った場合は中立でなおかつプロの立場であるホームセンターのスタッフに相談すると良いでしょう。その際話がスムーズに進むように今使われている名称や型番なども一緒に入っていると便利です。
自分で判断できない場合は是非DIY商材とリフォーム商材を持ち合わせたホームセンターに相談することをオススメします。
古くなったから、壊れたからではその商品をどうするかのみになってしまい、コスト削減が図れませんし、予定外の出費が出てしまいます。例えば水道でもパッキンの交換なら自分でできるなど、自分でできる項目とできない項目に分け管理とメンテナンスを定期的にする事が大事です。
DIYとプロのリフォームをうまく融合させ、家を快適に、永く持たせる家づくりを実現しましょう。
取材協力 株式会社ユニリビング http://www.uniliv.co.jp/
〒270-2267 千葉県松戸市牧の原2番地の38
リフォーム事業部 マーチャンダイザー 佐藤 淳一 氏
リフォーム事業部 ユニディ松戸ときわ平店 奥田 次朗 氏