我が家も建ててから10年も経過すると段々と傷みが目立ってきたなぁ…壁は色あせ、ところどころヒビが入ってきて…同じ築年数の近隣の家では外壁の塗り替え工事をしているのをよく目にするようになった。我が家もそろそろメンテナンスの時期なのだろうけど、いったいどんな塗料で塗ればいいんだろう?
そんなお悩みを抱えていないでしょうか?あなたの住まいの外壁に下記のような点が当てはまるなら、この記事は今後の塗り替えリフォームの助けになるでしょう。
・外壁がモルタル造りの家である
・外壁にヒビが入っている
住まいの建材は様々にありますが、その中でも「ヒビ割れしやすい」外壁材があります。当てはまるのがモルタルです。丈夫で耐火性に優れている反面、固く割れやすいという特徴があります。外壁にできたヒビを「たかがヒビ割れ」と甘くみていると最悪の場合、雨漏れを引き起こすこともあります。外壁にできたヒビ割れのうち、幅0.3ミリ以上のものを構造クラックといいます。このヒビ割れは表面の塗膜が割れているのではなく、外壁材事態が割れてしまっているものです。雨が降れば、構造クラックから雨水が外壁材の中に染み込んでしまうのです。
住まいを長く良い状態で保たせる為に必要な事は「建物の内部に水分をいれない事」です。ヒビ割れからの浸水を防ぐのに活躍するのが防水塗料です。
あなたの家がヒビ割れしやすいというリスクを抱えているのなら、防水塗料を検討する際の基準としてぜひご活用してください。
目次
1.防水塗料ってどんな塗料?
1-1.防水塗料はなぜヒビ割れに強いのか
防水塗料は塗料の中でも伸縮性に優れています。そのためヒビ割れに強いのです。
外壁の塗り替えで使用する塗料には様々な分類や種類があります。防水塗料は塗り替えで使用する塗料の中でもっとも伸縮性のあるものです。
(※防水塗料は防水工事に使用する防水剤とはことなります)
一般的に防水塗料と呼ばれるものは塗料の分類で言えば弾性塗料を指します。弾性塗料の中でも伸縮性に優れ、耐久性や美観性など様々な塗装の目的の中でも防水機能に優れたものが「防水塗料」と総称される塗料です。ここでは主な塗料の分類を上げ、防水塗料とその他の塗料の特徴と比較をします。まずは防水塗料と他の塗料の耐久性と特徴を比べてみます。
耐久性 | 塗料種別 | 特徴 | 主な製品 |
---|---|---|---|
高 | 変性無機塗料 | 強固な固い塗膜を持つ。耐久性と美観性に優れる。
※純粋な無機塗料は固すぎるため、ひび割れてしまうので塗替えには使用できない。 |
無機ハイブリットクリヤーJY(アステックペイントジャパン)
アプラウドシェラスターNEO(日本ペイント)
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高 | フッ素塗料 | 強固な塗膜を持つ。耐久年数と美観性に優れる。 | アレスアクアフッソⅡ(関西ペイント)
水性サンフロン(ロックペイント)
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高 | 防水塗料(弾性塗料) | 伸縮性のある塗膜を持つ。ひび割れに強い。 | EC―5000PCM(IR)(アステックペイントジャパン) |
普通 | シリコン塗料 | 性能とコストのバランスが良い。スタンダードな塗料。 | パーフェクトトップ(日本ペイント) |
低 | ウレタン塗料 | 現在はあまり使われていない。 | ファインウレタン(日本ペイント) |
防水塗料の塗膜の耐久性は、無機塗料やフッ素塗料よりも低く、シリコン塗料よりも良い程度です。
次に防水塗料の伸縮性を他の塗料とくらべてみます。この写真は塗料の伸びを測定する試験機で代表的な塗料の伸縮性を試験しています。白く糸状に伸びているのが塗料です。左の写真が一般的なシリコン塗料、真ん中の写真が微弾性塗料、一番右が伸縮性に優れた防水塗料の写真です。他の塗料に比べ、防水塗料は伸縮しているのが分かります。
なぜ、防水塗料のように伸縮性がある塗料がヒビ割れに強いのか?下の写真ではっきりします。
一般的な塗料や耐久性の良い硬い塗料(無機塗料、フッ素塗料)は外壁材が建物の動きによって割れてしまうと一緒に塗膜も割れてしまいます。防水塗料の場合は外壁材が割れたとしても、ヒビ割れに追随します。塗膜が割れてしまうとそこから水分が住宅内部に入ってしまいます。防水塗料は塗膜の伸縮性によってヒビ割れていたとしても雨水を住宅内部に浸入させません。
■防水塗料がヒビ割れに強い理由
・他の塗料よりも塗膜の伸縮性が良い
・伸縮性により外壁材がヒビ割れたとしても、ある程度割れに追随できる
1-2.防水塗料を使うのに適している外壁材
防水塗料がヒビ割れに強いのがお分かり頂けたと思いますが、ではどんな住まいに一番適しているのでしょうか。下記に住宅に良く使用される外壁材の特徴とどんな塗料が適しているかの判定を上げています。
外壁名称 | 外壁材の特徴 | 適している塗料 |
---|---|---|
リシン・スタッコなど(モルタル壁) | 砂、セメント、水を練り混ぜてつくった素材(モルタル)に、ざらざらとした凹凸模様の表情をもつ、スタッコで仕上げた外壁材。 | 防水塗料:モルタル壁は防水性能が低く、ヒビ割れが入りやすいので雨水が浸入することによる可能性がある。ヒビ割れを防ぐ防水塗料がオススメ。 |
ALC(軽量気泡コンクリート) |
セメント、生石灰、石膏、アルミニウム粉末などを凝固させ180℃という高温、10気圧もの高圧の蒸気をかけて10数時間養生したもの。 | ALCは防水塗料:耐火性・耐震性に優れているが、小さな気泡が多くあり吸水性が高い。一度水が入ってしまうとひび割れや欠けやすく劣化防水塗料で守るのがオススメ。 |
窯業系サイディング | 現在の住宅市場で最も多い外壁の素材。セメントを主な原料として作られており、耐火性に優れ、色や柄のパターンが多い。施工時より10年程でコーキング材にヒビ割れが発生します。 | 低汚染塗料:デザイン性の高いもの(意匠系サイディング)には低汚染機能を付加して美観性を重視するのもオススメ。
防水塗料:コーキング材を保護する為に防水塗料がオススメ。窯業系サイディングは蓄熱性が高いので遮熱性があると良い。 |
金属サイディング | 表面はスチール板などで、裏には断熱材を入れたサイディングのこと。断熱性・耐凍害性に優れているが、傷がつくとサビが発生しやすい。 | 防サビ塗料:サビを防ぐ防サビ性塗料がオススメ。金属は熱の影響を受けやすいので、弾力性のある防水系塗料は、塗膜の熱膨れが発生してしまう可能性が高いため不可。 |
モルタル造りの家は頑丈ですが、地盤の揺れでなどで割れやすい外壁材です。塗り替えの際は伸縮性のある防水塗料で塗装するのが良いでしょう。また、ALC造りの家は外壁材の内部に細かな気泡が無数にあるので、一度水分が中に入るとヒビ割れや欠けを起こしやすい素材です。同じように防水性の高い塗料をオススメします。
窯業系サイディングは家の状況にあわせて選ぶのが良いでしょう。まだ築年数が浅く、サイディングの柄を残したい方はクリヤーの塗料を、外壁のコケや汚れが気になる方は低汚染の塗料を、コーキングまでしっかりと守りたい方は防水塗料をオススメします。
金属系サイディングは防サビ塗料がオススメです。弾力性のある塗料は不具合が起こりやすいので避けましょう。
■防水塗料をにオススメの外壁材
・モルタル造りの家は割れやすい!塗り替えは防水塗料がオススメ。
・ALC造りの家は内部に水が入るとヒビ割れが起こる!塗り替えは防水塗料がオススメ。
・窯業系サイディングの家は住まいの劣化状況と欲しい性能によって使い分けるのがオススメ。
・金属系サイディングに弾力性のある防水塗料を使うと不具合に繋がるので避ける!
1-3.防水塗料を使用するメリット、デメリット
ここまで読むと防水塗料はとても良い塗料なのか!ぜひ使いたい!と思われている方も多いと思います。しかし、もちろん防水塗料はメリットの他にデメリットもあります。しっかりと良い面、悪い面を把握しておくことが必要です。
防水塗料のメリット | ・伸縮性に優れ、ヒビ割れに強い
・窯業系サイディングのコーキング材を保護できる |
---|---|
防水塗料のデメリット | ・塗りあがりにベタつきがあり汚れがつきやすい
・ふくれなどが起きやすい |
メーカーの定める施工要領をまもらないと、壁がぺたぺたとベタついたり、ふくれたりといった早期不良に繋がる可能性が高くなります。また、当然のことながら防水塗料はあくまで他の塗料よりも伸縮性にすぐれているというだけなので、年数が経てば次第に伸縮性が損なわれますし、地震など大きな地盤の揺れには追随できません。
2.防水塗料の商品例
2-1.防塗料のおすすめ商品はこれ!
ここからは防水塗料の具体的な商品を見ていきましょう。
【EC-5000PCM/株式会社アステックペイントジャパン】
成分 | ピュアアクリル樹脂 |
---|---|
種類 | 水性 |
対応素材 | 窯業系サイディング、コンクリート、モルタル、ALC等 |
耐用年数 | 15年以上 |
アステックペイントジャパンの水性形一液外壁用防水ピュアアクリル系上塗塗料です。ピュアアクリル樹脂自体が伸縮機能を持つため、長期に渡って伸縮性を保持し、耐候年数も15年以上と非常に高い耐候年数の塗料です。また、遮熱機能も兼ね備えた高機能な塗料です。
【DANシリコンセラ/日本ペイント株式会社】
成分 | シリコン樹脂 |
---|---|
種類 | 水性 |
対応素材 | コンクリート、モルタル等 |
耐用年数 | 10~12年 |
大手塗料メーカー、日本ペイントの1液水性反応硬化形弾性塗料です。
セラミックハイブリッドシリコン技術が従来の塗料に無い高い耐候性を実現させ、耐候年数10~12年の塗料です。また防カビ機能、更には透湿性、低汚染性も兼ね備えており、降雨時には雨水が汚染物質を一緒に洗い流す機能を持っています。
【セラミクリーン/エスケー化研株式会社】
成分 | セラミックシリコン樹脂 |
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種類 | 水性 |
対応素材 | コンクリート、セメント、モルタル、ALC等 |
耐用年数 | 8~10年 |
エスケー化研が販売している高耐久性・低汚染型水性セラミックシリコン単層弾性塗材です。オリジナル技術に基づく弾性セラミックシリコン樹脂を統合材とすることで、従来の単層弾性塗材と比べ、耐久性を向上させた塗料です。低汚染性、防カビ性も持ち合わせた塗料です。
【アレスアクアビルド/関西ペイント株式会社】
成分 | 水性アクリルシリコン樹脂 |
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種類 | 水性 |
対応素材 | セメント、モルタル、コンクリート等 |
耐用年数 | - |
関西ペイントの多機能水性反応硬化形エマルション系単層弾性仕上塗材です。「水性アクリル‐シリコン樹脂」という樹脂が使用されています。この樹脂は、ガラスやセラミック等に含まれている強靭な構造を持っており、耐候性に優れています。また、湿気を放出できる透湿性もあるため、結露を緩和します。
2-2.防塗料と他塗料の相場観の比較
防水塗料っていったいいくらなんだろう?と疑問に思っている方は下記のグラフをご覧ください。
下記は塗料の種別ごとに1缶あたりの相場観を比較したものです。防水塗料(弾性塗料)は1缶約5万円~7万円程します。もっともメジャーな塗料であるシリコン塗料の2倍以上の価格帯です。
塗料 | 耐久年数 | 相場価格 ※1缶あたり |
---|---|---|
アクリル | 約3~5年 | 5,000~15,000円 |
ウレタン | 約5~7年 | 5,000~20,000円 |
シリコン
(微弾性塗料) |
約7~10年 | 15,000~40,000円 |
防水塗料
(弾性塗料) |
約15年~ | 50,000~70,000円 |
フッ素 | 約15年~ | 40,000~100,000円 |
無機 | 約15年~ | 50,000~120,000円 |
光触媒 | 約15年~ | 50,000~100,000円 |
■防水塗料の商品例まとめ
・防水塗料と一口で言っても様々な種類がある!
・耐久性と伸縮性を鑑みて、一番住まいに合うものを選ぶと良い!
・防水塗料は1缶あたりメジャーなシリコン塗料の2倍以上の価格帯
3.防水塗料の性能を十分発揮させるための2つのポイント
3-1.基準塗布量を遵守しないと性能が発揮されない!
防水塗料はその伸縮性によって雨水から家を守っています。しっかりとした塗膜の厚みがついていないと塗料は伸びずにプチンと切れてしまいます。各塗料メーカーは1㎡あたりどのくらいの量の塗料を塗るのか基準を定めています。その基準が満たされていないと、表面上は綺麗に仕上がっているように見えても塗膜の厚みが薄いので耐久性が十分に発揮できないのです。
規定の塗布量を塗ってもらう為には、業者まかせにせず自分でも仕様を確認する事が大切です。塗装工事を検討し、数社に見積を取った場合、下記のようなものは要注意です。
工事の内容が「一式」で記載されていると、外壁の塗る面積はどのくらいで、どれだけの量の塗料缶が必要なのか分からないですよね。
上記の見積のように、塗る面積と1缶あたりの単価、そしてあなたの家には何缶の塗料が必要なのかしっかりと明記されている業者を選ぶのが塗布量を守って施工してもらうポイントです。
また、工事が始まったら下記の写真のように見積りに記載されていた缶数の塗料を使い切った証明をしてもらうと良いでしょう。
3-1.乾燥時間を遵守しないと性能は発揮されない!
塗料は空気中に溶剤が揮発して塗膜になります。十分な乾燥時間が確保できないと硬化不良をおこす可能性があります。その為、各塗料メーカーは「塗装の工程間を◯時間以上確保する事」という仕様を出しています。
一例として下記のように書いてあります。
工程内:2時間以上
同じ塗料を2回塗りする際、1回目を塗った後に2時間以上乾燥させてから2回目を塗る必要があるということ。
工程間:2時間以上
下塗の後に上塗を塗装するのが規定の工程となっている際、下塗を塗ったあと2時間以上乾燥させて上塗を塗る必要があるということ。
この乾燥時間が確保されているかを確認するには、工事の前に業者から工程表を出してもらうのが良いでしょう。一部の悪質な業者は人件費を安く上げる為に、乾燥時間を明けず一日に何工程もおこなう場合があるからです。
■防水塗料の効果を最大限発揮させる施工上の注意点
・性能を発揮させるには基準通りの量を使用する
・性能を発揮させるには基準通りの乾燥時間を確保する
まとめ
防水塗料はヒビ割れに追従し水の浸入を守る優れた性能を持った塗料です。住居は躯体の大半が木材やセメントなど水分に弱いものでできています。住宅の事を考えるのならば一番に優先したいのは「住宅に水を入れないこと」です。
「たかがヒビ割れ」と思っていると大変な事になります。構造クラックと呼ばれる幅0.3ミリ以上のヒビ割れは表面上の割れではなく、雨漏りの危険をはらんだ劣化症状なのです。
まず皆さんがすべき事は住宅の状態をしっかりと掴む事です。大切な我が家にどれだけのヒビがあるのか把握しましょう。特に固い建材の住宅は必須事項です。
そしてそこから、防水塗料の使用を検討してください。あなたの大切な我が家をご家族、子どもたち、孫たちと住み継いでいくためにまずはご自分の家を振り返る事から始めていきましょう。