近年、タイルは、様々な風合いや色彩、形、材質感が表現できる豊かな意匠性をもつことから人気が高く、玄関床、浴室、室内の柱などの内壁はもちろん、外壁にも多く使用されています。
しかし、一つ一つが独立しているため、部分的に剥がれたり、浮きやすかったりと、不具合を引き起こしてしまうということもあります。
外壁にタイルを使用している場合、欠損だけでなく、その破片によって周囲の物や人に被害を加えてしまう2次被害が起きる可能性があるため、たとえ1箇所の欠損、欠落でも原因をしっかり突き止める必要があります。
本記事では、外壁のタイルがもたらす被害と、不具合に合わせた補修方法をご紹介いたします。
目次
1. 住宅に使われるタイルの基礎知識
1-1. タイルの種類と特徴
タイルの種類は、素地の種類や成型方法や、焼成方法、釉薬の有無を変更することで、外壁タイル、内装タイル、床タイル、モザイ クタイルなど用途によって分けられています。
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外装タイル | |
内装タイル | |
床タイル | |
モザイクタイル |
画像出典: LIXIL|タイル建材
内装タイル|Tile Life
旭トステム外装】LIXIL(INAX) 住宅用外装タイル商品情報
中でも、建物の外壁に用いられる外装タイルは、高強度で吸水率が低く、耐候性・耐久性に優れている特長が適切であるため、磁器質およびせっ器質のものがよく用いられます。また、モザイクタイルは内・外部の壁・床に用いられ、材質は磁器質のものが多いです。
また、外壁タイルの形状は正方形や長方形、でこぼこしたものなど、メーカーによってもさまざまで、重さもそれに比例して重いものは1つのタイルで2~3kgもの重さをもつものもあります。
1-2. 外壁タイルの施工方法
外壁タイルは、乾式と湿式の2種類の施工方法があり、外壁への貼り付け方が異なります。
乾式方法と湿式方法の違い
湿式工法 | 乾式工法 | |
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概要 | モルタルを使って壁に貼る方法で、木造のセメントモルタル下地に貼ったり、マンションの外壁にも使われている。 | ベースサイディングを通気工法で施工してからタイルを貼る方法。 貼り方は、引っ掛ける、接着剤で接着する、などがある。 |
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メリット | 材料の種類や調合方法で様々
質感や雰囲気が楽しめる高級感のある仕上がり。 |
施工不良や剥離の心配がない。
通気工法(または通気できる仕様)を採用している。 塗り替えやシーリングの打ち替えなどのメンテナンスがいらない。 |
デメリット | 職人の技量が必要 重量がある 工期が長い |
他の壁材に比べれば重量がある。 |
出典先: レンガ – 大之木ダイモ | 広島、呉の注文住宅・工務店
出典先: タイルの貼り方 | タイルライフ アウトレットタイル販売(通販)サイト
2. 外壁タイルの不具合の原因と欠損・欠落による二次被害
タイルは他の屋根材に比べて耐用年数が長い印象から、“メンテナンス不要”といわれることがありますが、少し語弊があります。外壁のタイルは耐用年数としてはおおよそ10~15年程度で、お家の立地環境によって短くなったり、長くなったりします。
通常のモルタルやサイディングは、表面を塗装して保護しているため定期的に塗装などによるメンテナンスが必要となるのですが、タイルに関しては、塗装は不要ですので、定期的に塗替えというメンテナンスはいりません。
しかし、形あるもの、劣化しないものがないように、タイルも劣化します。外壁タイルが劣化すると、ひび割れや滑落、部分爆裂などを引き起こします。よってタイルの恐ろしいところは、1つ1つが孤立している為、劣化すれば1つずつぽろぽろと取れてしまうことによる、2次被害です。
もし剥離し、そのかけらが周辺のものや人を傷つけてしまった場合、住んでいる方、区分所有者皆が加害者になってしまいます。実際に剥離したタイルが通行人に直撃し、死亡事故となったケースさえあります。
2-1. タイル欠落の原因は日射と放冷による膨張・収縮
その原因は、日射と放冷による表面温度変化で起こる膨張・収縮の繰り返しとその重さにより、タイルが欠損・欠落したり、浮いたりという不具合が起きると考えられています。
他には、タイルの圧着不足、タイル裏足に不純物が付着、プライマーの不適正使用(種類・濃度等)などの施工上の問題も中にはあるかもしれません。
2-2. 1箇所でも不具合ある場合は、被害を与える可能性がある
外壁のタイルに不具合が出た場合、他の箇所でも同じ症状が起きている可能性が高い為、何故その不具合が起きたのかという原因を調べる必要があるのです。理由としては、1箇所起きているということは最低四方は同じ影響を受けている、また、その欠落した1つにつられて落ちる可能性が極めて高いからです。
現在、インターネット上では内・外壁タイルの補修の方法が多く掲載され、だれでも容易に市販の接着材を手にいれ、つなげたり、張り替えたりができます。そのため、浴室のタイルや、玄関のタイルなどを自分で補修する方も少なくありませんが、外壁に使用されるタイルはDIYで行うには難しい箇所です。
3.不具合の症状で変わる!外装タイルの症状別補修方法
外壁タイルを使用する外壁に起こる不具合としては、タイルのひび割れ、目地のひび割れ、タイルの浮き、壁の汚れの4つが主に発生しやすいです。発見方法としては、目視で判断か、打診棒といって先端に丸い球のついた棒で壁をなで、その音の出方で不具合が起きているかどうか調べます。
多くの業者はこの方法を使用して、事前調査を行い、その結果、補修が必要と診断された箇所の修復工事を行います。
3-1. タイルのひび割れ
タイルに、大きなひび割れや欠損が生じている場合は、タイルを取り外して新しいタイルを貼り付けます。
新しいタイルを貼り付ける部分と残しておく部分を切り離すために、新しいタイルを貼り付ける部分の周辺の目地部から電動カッターで切断します。新しいタイルを貼り付ける部分のタイル陶片及び張付けモルタルを除去し清掃し、接着剤の塗布した後に、タイル陶片をもみ込むようにして貼り付けます。タイル貼り付け完了後は、接着剤の仕様にしたがって乾燥させ、接着剤硬化後、目地モルタルで目地詰めを行い、補修完了です。
張替えの際は、周りのタイルと同じ予備のタイルがない場合は、既存のタイルと遜色のないものを用意いたします。
微細なひび割れはタイルの色に合わせたエポキシ樹脂を注入して補修します。
3-2. 目地のひび割れ
出典先:大規模修繕コンサルタント
コンクリートなどの壁面に生じたクラック(ひび割れ)は、エポキシ樹脂で割れ目を塞ぎ、壁面に馴染むようモルタルで平滑に仕上げ、最後に補修箇所が壁面と同じ色になるよう塗装を施します。
3-3. タイルの浮き
タイル自体が大きく浮いているもしくは、剥がれかけている場合は、浮いたタイルを一旦壁面から取り外し、接着用のモルタルで貼りなおし作業を行います。
タイル裏面の張り付けモルタルの充填不足や、暑さ等で水分が急激に蒸発して張り付けモルタルが硬化しない「ドライアウト」現象によるもので、その浮きの範囲は比較的狭く、10枚以内で浮いていることが多くあります。タイル自体の浮きはタイル裏の空隙が狭く、エポキシ樹脂を注入しても充填出来ない為、張り替え工法を実施します。
浮きが軽い場合は、目地の部分に穴を空け、エポキシ樹脂を注入して固定します。
タイル自体の浮きでは無く下地モルタルの浮きの場合、電動ドリルでタイルの目地の交点に躯体コンクリートに貫通するまで穴を開け、エポキシ樹脂を注入し、ステンレスピンを挿入して浮いたタイルが剥落しないようにします(ピンニング工法と呼ばれる)。
ただし、1、2枚の浮きでは、補修を実施しない場合もあります。
タイルは素地とタイル間だけで「剥がれ」に対する強度を保っている訳では無く、目地も剥がれに対する強度を保つ上で重要な要素である為、撤去作業により「共浮き」を発生させないよう、タイル目地が健全であれば、敢えて何も手を付けないということも選択肢の一つになります。
■タイルの浮きを調べる際のポイント■
タイルの浮き調査時の浮き音の種類は大きく分けて2種類あります。 1つはタイルのすぐ裏面で浮いている際に打診棒(※)で叩くと鳴る音で、「キンキン」「ピンピン」という金属音に近い高い音があります。もう1つは下地モルタルの裏に大きな浮きがある際の音で「ゴンゴン」「ゴロゴロ」といった鈍く音域の低い音があります。タイルの打診調査(打検調査)は、この音の違いによって判断します。 (※)打診棒 |
4. 業者選びのポイントは “打診検査をやってくれる会社か?”
気になる箇所がある場合は、業者に連絡してまずは診断をしてもらいましょう。
対応してくれるところは、ハウスメーカーやリフォーム店を始め、工務店、塗装店さまざまですが、ちゃんと診断してくれるか否かの判断基準は、「打診棒(パールハンマーとも呼ばれる)を使用して診断をしてくれるかどうか」です。
前章でも何度か出てきているこの打診棒ですが、タイルの不具合をみるためには絶対必須の道具です。タイル補修の専門の会社はどんなに大規模な建物の外装タイルの診断もこの打診棒を使用して調査します。
まずは、一度診断の依頼をし、業者に見てもらって、対処方法を教えてもらうと良いでしょう。なお、リフォームジャーナルを運営するプロタイムズでも外壁の調査を無料で承っております。
5. まとめ
いかがでしたでしょうか?現在、お家には内装・外装ともにさまざまな箇所でタイルが使用されています。内装用タイルなどの少しの補修であれば自分での補修は容易ですが、外壁タイルは、構造上の問題などが絡んでくるため、素人が行うには難しい部分です。
タイルの欠落によって、家の周囲の物や人へ被害を及ぼす二次被害の危険性もあるため、気になる箇所がある場合はまずは、業者に打診調査を依頼し、症状を見てもらい、対策を施すことが望ましいでしょう。