寒冷地の方は要注意!「凍害」の対処方法と予防方法を徹底解説

凍害

北海道地方や東北地方、北陸地方などの寒い地域にお住まいの方で「外壁にひび割れが発生したり、表面が剥がれ落ちたりしている。なんでこんな劣化症状が発生しているの?どう対処すればいいの?」とお悩みの方は多いのではないのでしょうか?寒冷地で発生するそのような劣化症状は、『凍害』と呼ばれる現象により発生するものです。

外壁における『凍害』というのは、文字通り「凍ることにより発生するトラブル」です。外壁の隙間(目には見えない程の小さな隙間)から雨が染み込んで、凍結と融解(固体が熱によって液体になること)を繰り返すことでひび割れが発生したり、外壁表面が剥がれ落ちたりする劣化症状です。窯業系サイディングの外壁やコンクリートの外壁に発生しやすいと言われています。

凍害が発生する仕組みや対策方法を十分に理解していないと、場合によっては、大規模な改修工事が必要となり、高額な改修費用が掛かってしまう危険性もあります。

そこで、今回の記事では、寒冷地域にお住まいの方に向けて、「凍害」が発生する理由や凍害が起きた際の外壁の見た目、対処法などを詳しくご紹介します。凍害を未然に防ぎ、少しでも長く建物を使い続けるために、この記事がお役に立てば幸いです。

1.凍害の基礎知識について


出典:プロタイムズ仙台南店

1-1.凍害が発生する仕組みと原因

凍害というのは文字通り「凍ることにより発生するトラブル」です。特に窯業系サイディングの窓枠などのサッシまわり、シーリングの隙間、外壁に発生している細かなひび割れなどから雨が染み込んむことで外壁の内側が湿った状態となり、冬になるとその水分が凍結(凍り固まること)と融解(溶けること)が繰り返されることによって、徐々に劣化する現象のことを指します。

【凍害のメカニズム図】

【なぜ凍害は発生するの?】
なぜ凍害が発生してしまうのでしょうか?それはズバリ「外壁が経年劣化している」ということが一番に上げられます。

凍害の発生する確率の高い窯業系サイディングやコンクリートにはセメントが原料として使用されますが、このセメントは湿気や水分を吸収しやすい素材です。ただ、窯業系サイディングやコンクリートは、水分の吸収を抑えるために、新築時には塗料が塗られた状態で使用されています。これにより紫外線や雨水などの建物の劣化要因から建物を守る役割を果たします。

しかし、経年とともに、塗料の膜は劣化してしまい、塗料の効果が徐々に失われてしまいます。そうなると、窯業系サイディングやコンクリートが、水を吸収しやすい状態になるため、冬場になると凍害が発生する確率が高くなるのです。

つまり、「経年とともに劣化が進行し、水を吸収しやすくなる」ことが凍害が発生してしまう原因であると言えます。

 

1-2.凍害が発生しやすい地域

凍害による外壁の劣化症状は、主に山間部、内陸部を中心に広く分布しています。地域別に見ると、北陸地方、東北地方、北海道地方に発生する確率が高い言われています。

しかし、程度の差はあれど、全国的にどこでも凍害が発生する危険性はあります。寒くない地域だから凍害が起きない訳ではありませんので、どの地域に住んでいても注意は必要です

農林水産省が「凍害」に関する資料の中で、凍害の発生する危険度を日本の地図で表現しています。数値が高くなる程、凍害の危険度は高くなります。お住まいの地域はどうか、確認してみて下さい。


出典:農林水産省(http://www.maff.go.jp/kanto/nouson/sekkei/kokuei/dogisyo/passfinder/pdf/concrete2115.pdf)

 

1-3.凍害が発生しやすい箇所

凍害はコンクリート外壁や窯業系サイディングなどの外壁表面に発生することが多い現象です。また、水回りに面している、水分や湿気の多い箇所には特に凍害が生じやすい状態になります。どんなところに凍害が発生しやすいのかを下記にまとめました。

①風呂場、台所、洗面所に面している外壁

水回りは湿気が多いため、壁内部の結露が起こりやすい状態にあります。そのため、サイディングやコンクリートの裏側から吸水し、剥離などの劣化症状が発生します。

②アルミサッシまわり

冬場は暖房で室温が上がり、アルミサッシの結露が長時間続くため水分が発生してしまいます。これによりサッシ周りやサッシの下あたりに凍害の劣化症状が発生しやすくなります。

③サイディングボードの目地周辺

サイディングボードの目地にはシーリング材を施しています。このシーリングは経年とともに劣化し、切れたりひび割れが発生して、隙間が生じてしまいます。その隙間からサイディングに端部、裏面に雨水が回り、表面の剥離につながってしまいます。

この他、水切り板金まわりや幕板、破風板、バルコニー、建物の角の部分なども、水が浸入しやすく、凍害が発生しやすい部位です。

 

2.凍害が進行すると危険な状態に

凍害は、進行とともに、劣化状況が深刻になっていきます。そこで、第2章では、凍害が進行した場合に、どのような見た目になるのか、また、凍害の進行を放置しておくと、どのようになるのか、という危険性についてご紹介します。

2-1.凍害が進行した時の外壁の見た目

外壁に凍害が発生すると「①ポップアウト⇒②微細凍害⇒③スケーリング⇒④崩壊」という順番で劣化症状が進行していきます。
そこで、まずはそれぞれの劣化症状の推移でどのような見た目になるのか、劣化症状の推移をイラストと写真を用いながら、説明していきます。

①ポップアウト

コンクリートの表層に含まれる骨材粒子などが水分を含むことで膨張し、破壊されることでできた表面の円錐状の剥離のことです。凍害の初期に現れる劣化症状です。

 

②微細ひび割れ

紋様や地図状のひび割れが発生する劣化症状です。

 

③スケーリング

表面が薄い欠片となり、剥離・剥落する劣化症状です。

 

④崩落

コンクリートが小さな塊となって崩れ落ちる劣化症状です。崩落が発生すると、建築材が剥き出しになり腐食や欠損が発生するため、建物にとって非常に危険な状態となっていきます。

2-2.凍害を放置すると大規模な補修工事が必要になることも

ポップアウト、微細ひび割れ、スケーリング、崩落といった、凍害による劣化症状を放置するとどんな問題があるのでしょうか。ただ単に「見た目が悪くなる」という問題だけではありません。劣化した箇所から水分が建物内に浸入してしまうため、建物の構造体が腐食し、内部に雨漏れが発生する可能性もあります。

そのような状態になると、場合によっては、外壁の改修工事だけでなく、建物内部の修繕工事が必要になることもあり、大規模な補修工事を行う必要が出てきます。その分、塗装工事などと比較すると高額な改修費用が必要になってしまいます。

早めの対策を取ることで、工事の費用を抑えることができ、さらには建物の外観や内部構造を守ることにも繋がるのです。第3章以降では、いよいよ凍害が発生した場合の対処法や凍害を発生させないための対策方法について説明いたします。

上の写真は、雨漏りが進行し、建物内部の断熱材やその近辺の構造体が腐食している様子です。凍害が進行し、建物内に水が浸入するようになると、上の写真のように、内部の腐食が進行する可能性もあるので要注意です。

 

3.凍害が発生した場合の対処方法

凍害が生じた際には、「①パテを使って部分補修を行う」「②塗り替える」「③新しい外壁材に張り替える」という3つの手段によって対処します。凍害の進行のレベルによって、どの対策を選択するのか、変わってきます。

第3章では、「実際に凍害っぽい劣化症状が発生してしまっているが、どう対処したら良いの?」という方に向けて、3つの対処法と、どのレベルの時に、それぞれの対処法で補修すればいいのか、ご紹介します。

3-1.一番の対処法は「新しい外壁材に張替えして、塗装する」

凍害が発生した際に一番有効な対処法は、「新しい外壁材に張替えて、その後塗料を塗る」という方法が良いでしょう。
新しい外壁材に変えることで、新しく綺麗な見た目になるだけではなく、建物の防水性や耐候性が格段に向上し、凍害のリスクを減らすことができる、というメリットがあります。

しかし、他の対処方法に比べて、高額な工事費用が必要となる、というデメリットもあります。

 

3-2.塗り替える

塗り替えは、既存の外壁の上に新しく塗料を塗る工事です。ポップアウト、微細ひび割れ、スケーリングしている外壁にオススメです。劣化している箇所にパテを使って補修し、外壁表面をなめらかに整えた後、その補修した上から塗料を塗り替えます。劣化箇所が大きい、または劣化の数が多い、という家にオススメの工事です。価格はおよそ80~150万円程が相場と言われています。※使用する塗料のグレードによって、費用は異なります。

塗り替えすることで、劣化して弱くなっていた防水性能や紫外線に対しての耐候性を再び向上させることができ、凍害の発生を抑制することができます。また、一般的に塗り替えに使用されるシリコン塗料は、耐用年数が約10年のものが多いため、約10年間は、メンテナンスがいらない、というメリットもあります。

 

3-3.パテを使って部分補修する


画像出典:プロタイムズ福岡南店

パテとはペースト状の充填材のこと。傷の隠蔽や水漏れの防止などに使用されます。ポップアウトや小さなひび割れなど、凍害の初期に発生する劣化症状が見られる場合で、そこまで目立つような傷になっていない場合は、パテを使っての部分補修が可能です。価格はおよそ20~40万円程が相場と言われています。※補修する箇所によって費用は異なります。

安価で工事を行うことができる、ホームセンターなどで購入すれば自分でも手軽に工事できるというメリットがあります。しかし、パテは短い年数で劣化してしまうため、パテが剥がれた箇所は凍害がさらに進行してしまう危険性もあり、あまりオススメはできません。パテを使っての補修工事はあくまで応急処置である、ということを覚えておきましょう。

 

3-4.窓・サッシ・目地部にはシーリング材を打設する

窓枠やサッシの部分、さらには外壁のシーリング部分からも湿気が浸入しやすい、ということは先ほどもお伝え致しました。そこで、排気口や窓枠、サッシ、外壁の目地部の周辺に凍害の劣化症状が確認された場合、凍害が発生している箇所の補修工事とともに、シーリング材を打設し、住宅の隙間と全面的に埋める工事を行うようにしましょう。価格はおよそ25~50万円が相場です。※シーリング材を打設する箇所の目地の長さにより金額は異なります。

 

4.凍害を進行させないための予防方法

4-1.窓サッシや換気フードに水切りを付ける

窓まわり、サッシ、換気フードは湿気がたまりやすく、凍害が発生しやすい箇所です。そこで、そのような箇所に水切りを付けることをオススメします。この水切りによって、外壁に伝い水するのを防ぐことができ、周辺の湿気を減らすことができます。水切りを使用することで、凍害防止になるだけでなく、伝い水による雨筋汚れも抑制できるため、汚れをつけたくない、という方にもオススメです。


画像出典:プロタイムズ仙台北店

上の写真は、窓のサッシの部分に水切りを装着した様子の写真です。この水切りを付けることで、外壁に水が伝うことを防ぎ、凍害を抑えることができます。このような水切りを窓サッシや換気フードに付けることをオススメします。

4-2.定期的に自分でお家まわりをチェックする

凍害は徐々に進行していきますが、早期の発見をすることで、改修工事の規模とそれに伴う工事費用を小さく抑えることができます。そこで、自分自身で年に1~2回くらいは、水回りやコンクリートの部分をチェックしてみましょう。

【お家の点検項目】以下の項目をセルフチェックしてみましょう

●外壁を1周回って、ひび割れや崩落がないか確認する

●サイディング外壁の目地部に打設されているコーキングが劣化していないか確認する

●窓まわり・サッシ・換気フードの周辺に、劣化症状はないか確認する

●リビング・お風呂などに面している外壁に劣化症状はないか確認する

 

そして、少しでも第3章でお伝えした劣化症状が確認されたら、外壁の診断を行っている会社に相談し、お家を隅々まで点検してもらうようにしましょう。その際に、何が原因で凍害が発生しているのか、どうすれば凍害の進行をストップできるのか、そして、凍害以外にはなにか劣化症状はないか、尋ねてみましょう。

 

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まとめ

今回は寒冷地域にお住まいの方に向けて、「凍害」のメカニズムや凍害が起きた際の外壁の見た目、対処法などを紹介しました。
凍害は確かに寒い地域で発生する確率の高い劣化症状です。しかし、それ以外の地域であっても寒い時に発生することもあり、決して油断してはいけません

凍害の進行を防ぐために、そして建物を長く使い続けるためにも、定期的な建物のチェックや細かい補修工事は行うように心がけてください。

また、なにか劣化があるな、と気づいた際には、必ず業者の方に点検を依頼し、どのように対処すれば良いのか、尋ねるようにしましょう。

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