一人暮らしをする際に実家から家具を持ってきたけど、イマイチ色が気に入らない、数年使っている椅子の色に飽きたので、手軽にお金をかけず身の回りの持ち物のイメージチェンジをしたい、という方は多いのではないでしょうか。
また、現在DIYが流行っていることもあり、いろんなリメイク方法があることをご存知の方もいらっしゃるかと思います。
そんなとき、手軽に安価でできる方法のひとつとして挙げられるのが、缶スプレーを吹き付けるだけで塗装ができる「スプレー塗装」です。
なんとなくやり方はわかるけれど、正しい手順がわからない、準備物がわからない・・・という方はいらっしゃいませんか?
本記事では、スプレー塗装で生活品のイメージチェンジをする方法と注意点をまとめました。
目次
1.基本的なスプレー塗装の準備物・やり方
1-1.スプレー塗装の準備物
まずは準備物から揃えていきます。スプレー塗装の基本的な準備物は下記の通りです。
名称 | 用途 | 金額 |
---|---|---|
耐水ペーパー | 対象物の表面を磨く。水に濡れても大丈夫。金属などの目詰まりしやすいものを削る時に、水を使うことにより、削りクズが水で流されるため、通常のサンドペーパーよりも早く削れ、長持ちする。 | 100~500円 |
下塗スプレー(プライマーサーフェイサー) | プライマーは接着力の強化・金属には錆の防止機能を追加する役割をもつ。
サーフェイサーは細かな傷を隠し、素地の凹凸を埋め、下地の色を付ける役割をもつ。 下地塗料が塗られることで、上に塗る色のムラを防ぐことができる。 |
700~1500円 |
上塗(色付け)スプレー | 色付け用。
大きく分けて、水性塗料・ラッカー塗料・ウレタン塗料・油性(アクリル)塗料の4種類があり、用途や好みで選ぶ。 |
300~1000円 |
マスキングテープ(塗装しない部分がある場合のみ使用) | 塗装しない箇所にマスキングすることで、塗料の付着を防ぐ。 | 100~300円 |
マスカー | 住宅の屋内外の養生に利用。 塗料が付くと困る箇所を覆うことで汚れを気にせず作業が行える。 |
100~300円 |
手袋 | 油性塗料だと特に落ちづらくなり、また皮膚にも良い影響は与えないため、実施時には手袋をする。
また手袋をし、それでも皮膚についた際はすみやかに洗い流す。 |
100~500円 |
マスク | シンナー等の臭いの直接吸引を防ぐ。 特に油性スプレーは臭いがきつい場合が多いので、マスクは必須。 |
100~300円 |
新聞紙 | 床が汚れないように敷く。 | |
エアーダスター | 細かな隙間等のほこりを吹き飛ばしてくれる。
必須ではないが、細かな網目状のもの(換気扇カバー等)を塗装する際は使用すると便利(1-3参照)。 |
500~1000円 |
1-2.スプレー塗装のやり方
ここでは、スプレー塗装のやり方をご紹介いたします。
①場所選びを行う
準備物が揃ったら、次は場所選びです。スプレーは細かな塗料が舞ってしまうので、意図せぬところに塗料が飛び散って付着する可能性があります。下記の方法からご自身に合ったものを選んでみてください。
・外で行う
室内だと大事なものを汚してしまう恐れもあるため、外で行うのが理想です。畑などが近くにある場合は、風で砂埃が運ばれてきてせっかく綺麗に塗っても塗装面に埃が付着してしまうこともありますので、風の無い晴れた日に行ないましょう。また、道路沿いだと排気ガス等で予期せぬ汚れがついてしまいますので、避けた方が良いです。
・室内に塗装ブースをつくって行う
室内でしかできない場合、スプレーの飛散を防ぐために塗装ブースを作って行う方法がオススメです。目安としては、塗る対象物の横幅の2倍以上の大きさのダンボールを用意し、その中で対象物を塗装します。これで室内でも多くの塗料飛散を防げます。念のため養生は行ってください。
・ベランダで行う
ベランダを養生して行う方法です。換気と室内の汚れ問題からは解決されます。注意点として、近隣から臭いのクレームが上がる可能性あります。
・ホームセンターに設置されている工作室で行う
近くに大きめのホームセンターがあれば、大抵工作室(塗装ブース設置の店舗もある)がある場合が多いです。自分のテリトリーを汚すことなくできるので、初めてスプレー塗装に挑戦される方にはオススメです。
②マスカーで養生する
室内で行う際は必ずマスカーで壁を養生し、スプレーの飛散汚れを防ぎましょう。
①の場所のうち、ホームセンターの工作室以外の場所で行う際は養生は必須となります。
養生を行うことで、汚れがつくことを気にせず集中して作業に取り組むことができます。
③対象物を綺麗に掃除する
汚れがついていると、スプレー塗装を行っても仕上がりとして綺麗に色がつきません。また、後々の塗膜(塗装しでできた膜)が剥がれる、という不具合に繋がってしまうこともあります。
どんな物でも、生活空間に置いていると油汚れやほこりがついているものです。まずは新品の雑巾等で入念に拭き取りましょう。エアーダスターと呼ばれる空気が強く出るほこりの掃除用スプレーもありますのでそちらも活用してみてください。
④表面を磨く
次により塗装のノリをよくするために表面を耐水ペーパーやサンドペーパーで磨いていきます。もし古いもので傷が入っているようであれば、その後にパテ(くぼみ、割れ、穴等の欠陥を埋めて、表面を平たくするために用いられる塗料のこと)などで埋める補修も同時に行うことをお勧めいたします。
⑤下塗スプレー塗装を行う
ここで早速色付け!といきたいところですが、その前に下地用スプレーというもので下地処理の仕上げを行います。DIYのスプレー塗装で下塗りまでやることは一般的ではありませんが、この作業をやることで仕上りが格段に良くなります。
下地用スプレーの中でも、プライマーと呼ばれるものは塗ることで接着力の強化や錆の防止をしてくれるものです。また、サーフェイサーと呼ばれるものは細かな傷隠し、素地の小さな凹凸埋めをするもので、色(白)がついたものが主なので、上に塗る本番の色を綺麗につけることができる効果があります。
現在プライマーサーフェイサーという、その名の通り上記2つの機能を併せもったものがありますので、そちらを使用することをお勧めいたします。
⑥乾燥時間をしっかり取ってよく乾かす
下塗塗装スプレーが完了しましたら、乾燥時間をしっかり取ってよく乾かします。
プライマーサーフェイサースプレーの乾燥時間目安としては大体1時間くらいです。乾燥時間の詳細に関しては、製品それぞれの表面に記載があるはずですのでそちらを必ず確認し、念のためにもプラス1時間くらいを見ておいたほうがいいでしょう。
物が大きければ大きいほど塗装面も広いので乾燥時間もそれだけ多くかかります。この時間をしっかりと確保しないと、思わぬところに塗装の色がついてしまったり、後々の塗膜(塗装でできた膜のこと)がはがれてしまったり、という不具合に繋がってしまいます。
補足ですが、どうしても乾燥時間を早めたい・・・という方は、遠赤外線ヒーターやドライヤーを当てて乾燥を早めるという方法があります。
⑦色付けのためのペイントスプレー塗装を行う
ここで本番の色付けです。
スプレーで横棒を1本引くイメージで上から下に順に対象物に吹き付け、スプレーの幅半分くらいが前のラインに重なるようにします。スプレー缶と対象物との距離が遠いほど薄くつき、近いほど厚くつき液がたれやすくなります。少し遠くから吹き付けるときはスプレーをゆっくり動かし、逆に近くで吹き付けるときは早く動かすと液だれを防げます。
対象物の大きさによっても、適度な距離間隔が変わってきますので、一度ダンボール等で試し吹きをしてみてからやってみるといいでしょう。
またポイントとして、1度塗りで終わらそうとしないことです。1度全面に塗り終わったら、乾燥時間をとり、もう一度重ね吹きする、という工程を何度かしてあげるとより発色がよくなり、綺麗に仕上がります。
そして吹き付ける時は、対象物の大きさでスプレーを止めるのではなく、対象物の1.5倍以上の幅を目安に吹き切ることが重要です。そうすることで対象物の端から端まで均一の塗布量をつけることがきます。
2.スプレー塗装できるもの、できないもの
1章では基本的なスプレー塗装について手順をご紹介しましたが、ここではスプレー塗装できるもの、また反対にスプレー塗装できないものを、塗装ポイントとともにお伝えします。
2-1.スプレー塗装できるもの
基本的にはラッカー塗料スプレーで色付塗装を行うのがオススメです。準備物の説明の際に、水性塗料・ラッカー塗料・ウレタン塗料・油性(アクリル)塗料の4種類があると述べましたが、その中でも価格が安価で手軽に使え、塗料が残っても保管して後日使える、また乾燥が速く仕上がり感も良いという長所を持つのがこのラッカー塗料です。
また更にコストがかかってもいいからより色持ちをよくしたい、仕上がりをきれいにしたい、という方にオススメなのが、ラッカー塗料で色付塗装した上から、ウレタン塗料でクリアー仕上げ(透明のコーティングをする)する方法です。ラッカー塗料で色付した色をむき出しにすることなく、クリアー塗装で上から守ってあげるイメージです。
このウレタン塗料は摩擦姓や耐薬品性、硬度、ひび割れに強く、耐水性に加え、光沢もよく、肉もちも良いという長所もあり、色持ちとともに物持ちも良くしてくれる役割を持っています。しかし価格が割高で、2つの液を混合させて使う使い切りタイプなので余っても24時間を過ぎると缶の中で硬化して使えなくなるのが短所です。
スプレー塗装をDIYすることは安価で手軽なので、上記のクリアー仕上げのように一手間加えてあげるのもいいかと思います。
では、それぞれの塗装ポイントを見ていきましょう。
①椅子・机
椅子や机は本体と脚部分をネジ留めされているものも多いでしょう。その場合は分解して個別にスプレー塗装を行い、乾燥してから再度組み立てる、というやり方をお勧めいたします。こちらの方が塗り残しを防ぎ、きれいに仕上げることができます。
②カラーボックス(棚)
収納用に購入することの多いカラーボックスも一般に白やシルバーのものが多いため、好みの色に変えたい方も多いことでしょう。
こちらをスプレー塗装するポイントはいくつかあります。
・表面がまんべんなく白っぽくザラザラになるくらい磨く(「1-4 表面を磨く」参照)
→後々の塗装の剥がれを防ぐ
・椅子、机と同様に分解してから塗装する
・隅から塗装する
・明るい色(黄色や赤など)を塗装する際はプライマー塗装(「1-5 下地処理のためのプライマースプレー塗装を行う」参照)にて白を塗装する
③換気扇カバー
お家に必ずある換気扇カバー。ほこりで黒ずんでいたり、黄ばんでいたりしませんか?これもスプレー塗装で簡単に蘇らせることができます。
また換気扇カバーを塗装する際の注意点として、細かいほこり等のゴミが網目の隙間に入っていたりするので、1章でご紹介したエアーダスター(ほこりの掃除用スプレー)を使ってまず汚れを落とすところから始めるのがポイントです。
④プラスチック容器
インテリアの小さなポイントとして100円ショップで買ってきたプラスチック容器を塗装し、花瓶やペン立て・小物入れに活用するときも、一気に色付けをできるスプレー塗装がおすすめです。
趣味程度で始められるものなので、初めてスプレー塗装に挑戦される方はこれから始めてみてもいいかもしれません。
2-2.スプレー塗装できないもの
スプレー塗装は300ミリ缶で1㎡前後が目安のため、小さな対象物を塗るのが前提です。またスプレー塗装だけが塗装ではありません。ものによっては他の塗装方法がおすすめな場合もあります。
①ウッドデッキ
戸建てのお家に住んでいる方であれば、庭に面したテラス部分にウッドデッキを設置されている方も多いでしょう。ウッドデッキであれば木材の木目に沿ってしっかりと塗料を吸収させ、木材保護を行う必要がある為、スプレー塗装ではなく「刷毛(はけ)」を使って塗装する方法の方がお勧めです。
ウッドデッキの塗装方法を詳しく知りたい方はこちら
②内壁
室内の壁など多面積を塗装したい場合は、スプレー塗装してしまうと多方面に塗料の飛散が考えられるため刷毛とローラーを使用するのがおすすめです。
安全面を考えるとプロのリフォーム業者に頼んでも良いでしょう。
内壁リフォームに関して他の方法を詳しく知りたい方はこちら
このようにそれぞれの対象物によって、よりよい塗装方法がありますので必ずしもすべてスプレー塗装で行う必要はないのです。よって、塗装する前に、まず自分が塗装したい対象物はどの塗装方法が適切なのか知ることが大切です。「○○(対象物名) 塗装方法」と検索してみるといいでしょう。
3.スプレー塗装の注意点~必ずお読みください~
ここではスプレー塗装を行う際の注意点を挙げてみました。スプレー塗装を実施する前に必ずお読みください。
3-1.臭いに注意
使用するスプレー缶の種類にもよりますが、特に油性のものだとシンナーが多少入っているので臭いがきついものが多いです。室内で行う場合は必ず窓を開けて換気をする、マスクを着用し直接臭いを吸い込むことをできるだけ防ぐ、という対策をとるようにしましょう。
3-2. 使う前にスプレーをよく振る
カラカラと音が鳴り始めたら、そこからさらに30秒程よく振ります。塗装中も定期的に振ることで、仕上がりにムラが出にくくなります。
3-3.薄く数回に分けて重ね塗りする
初心者が取り組むなら3~4回は塗らなければいけない、と考えておいた方がいいかもしれません。一度で綺麗に色をつけるのはプロでも至難の業です。スプレー塗装に限らず、どんな塗装方法でも最低2回塗りが基本です。重ね塗りは乾くのを待たずにすぐ重ねて大丈夫です。理想の仕上がりにするためにも納得いくまで塗り重ねてみましょう。
まとめ
いかがでしょうか。手軽に安価なコストでできるスプレー塗装ですが、「綺麗に仕上げる」ということを考えると気をつけるポイントは多くあります。
しかしお読み頂いてわかったかと思いますが、どれも難しいことではなく、ひとつひとつの工程に時間をかけて丁寧に行うことが結局は理想の仕上がりになる近道だといえるでしょう。是非スプレー塗装で身の回りの生活用品のイメージチェンジをしてみてください。