みなさんの家の屋根の積雪対策は万全でしょうか。この記事をお読みの方は、おそらくなんらかの不安を抱えていることと思います。
日本列島は一部地域を除けばほとんどの地域で積雪の可能性があります。実際に、2014年には関東や四国で大雪が降り積もりました。東京都心でも足が雪に埋もれてしまうほどの積雪があったのです。「うちの地域は雪が積もらない」といった油断は禁物です。どの地域でも積雪は起こり得ることなのです。
しかし、降雪量は気象状況によって日々変化するため残念ながら予測できません。予測できないことだからこそ、事前の積雪対策や知識が必要です。また、積雪は落雪による被害につながる可能性もあります。落雪によって隣家に被害をあたえてしまい近隣トラブルに発展するケースも少なくなりません。
そのような被害を未然に防ぐ、もし被害が起こったとしても最小限におさめるために、この記事では、具体的な積雪対策と落雪被害について紹介します。
目次
1.積雪がない一般的な地域の屋根の積雪対策
日頃、積雪がない地域ではどのような積雪対策をしたらよいのでしょうか。
積雪対策には3つの対策があります。
①隣家などへの事故を防止する対策
②積雪から家を守る対策
③積雪した場合の事後対策
普段積雪がない地域では、家が壊れてしまうほどの積雪はありませんので②や③の対策はこの章では割愛します。詳しくは2章で紹介します。
1-1.隣家などへの事故を防止する対策|雪止めの設置
「雪止め」とは、屋根に積もった雪がすべり落ちないようにするための部材です。雪止めを取り付けることで雪を引っ掛けることができます。
豪雪地域では、雪下ろしが必須なので雪止めをつけておくと邪魔になるため設置されていません。設置したとしても、雪の重みで雪止めが曲がってしまい役に立ちません。
しかし、それ以外の地域では、落雪を防ぐためにも設置しておくとよいでしょう。また、雨樋破損の防止にもなります。雪止めを設置していない場合、雪が屋根からすべり落ちる際に雨樋に雪が引っかかってしまい、雨樋破損につながる恐れがあります。
現在、雪止めが設置されていない屋根の場合は、後付けも可能です。自分で設置することもできますが、高所での作業ですので業者に依頼したほうが安心でしょう。価格は一般的なスレート瓦で10万円程度です。
2.積雪・豪雪地域の屋根の積雪対策
毎日雪下ろしをおこなうような積雪・豪雪地域では、屋根自体をリフォームするという対策が主にとられています。
2-1.隣家などへの事故を防止する対策
2-1-1.無落雪屋根への葺き替え
(画像出典:http://www.k-shinsetsu.jp/build/)
北海道にいくと、平らな屋根が多いことにびっくりされる方もいるのではないでしょうか。近頃、北海道では当たり前になってきたそうです。平らで四角い家には庇(ひさし)や小屋根がないので氷柱ができません。そして、屋根自体がVの字型になっており、屋根に積もった雪が太陽光で溶け出し、その水は中央に設置されたダクトを通り外に排出される仕組みになっています。
この屋根は、積雪することがないので雪下ろしをする必要がなく、また、隣家や通行人への事故(落雪)を防ぐことができます。ただし、雪の重さに耐えうるだけの住宅自体の耐久性が必要です。
2-1-2.融雪システムの設置
(画像出典:http://www.melonbun.com/pdf/kitaguninoharu.pdf)
灯油、ガス、電気等のエネルギーを用いて雪を融かす方法です。屋根全体に電気式のヒーターを設置し、屋根をあたたかくし、屋根に雪が積もらなくするという方法です。ただし、溶けた水が再び凍り、氷柱になる可能性があります。落雪は起こりませんが、電気代が発生します。
ヒーターを屋根材の下に敷く本格的なものと、融雪ネットという屋根材にネットを載せるだけの簡易的なものがあります。融雪ネットは、使用しない時は収納することができるので、雨風にさらされることもありません。
2-2.積雪から家を守る対策|落雪システムの設置
(画像出典:http://www.techno-aizu.com/snowfall.html)
屋根の棟にヒーターをとりつけ、棟部分の雪を溶かして雪を分裂させて意図的に落雪を起こします。小さな落雪を繰り返すことによって、大きな落雪被害を防ぐことができ、積雪による倒壊も防ぐことができます。また、雪下ろしの必要もありません。こちらも電気代がかかります。人工的に小さな落雪を起こすので、落雪による事故を完全に防ぐことはできません。
2-3.積雪した場合の事後対策|雪下ろし
前項の対策をとっていない場合は、雪下ろしをしましょう。雪は積もると水分を含んでどんどん重たくなります。その為、屋根に積もった雪は雪下ろしをする必要があります。
どれくらい積もったら雪下ろしすべきなのか、目安を知りたい方もいるかもしれませんが、実は明確な決まりはありません。住宅の耐久性はそれぞれで、築年数等によって大きく変わってきます。
ですが、どんな建物でも、一般的には50cm以上だと要注意、90cm以上は危険という基準が浸透しているようです。カーポートや倉庫の屋根は耐久性が低いので、早めの雪下ろしが必要です。
一方で、雪下ろしでの事故は毎年必ず発生します。事故を防ぐためにも、50cm未満の積雪の場合は無理せず様子を見たほうが良いかもしれません。
2-4.積雪対策の比較一覧表
対策方法 | 価格 | 特徴 |
---|---|---|
雪止め | 10万円程度 | 一般的な地域では効果的。何十センチも雪が積もるような地域では、雪の重みで金具が曲がってしまうため、落雪防止効果はほぼなくなる。 |
無落雪屋根 | 数百万円程度 | 屋根がVの字型になっているため、落雪の可能性はほぼ無し。雪下ろしの必要はないが、雪の重さに耐えうる住宅の耐久性が必要。 |
融雪システム | 約65万円~320万円 | 屋根全体にヒーターを設置するため、雪が常に溶け屋根に積雪することはない。そのため落雪の可能性も低いが、電気代がかかる。 |
落雪システム | 約200万円 | 意図的に小さな落雪をおこすため、落雪は防止できないが、大きな落雪による事故は防げる。 |
雪下ろし | ― | 特別な対策をしておらず、50cm以上積もった場合におこなう必要がある。また、屋根以外に倉庫やカーポートの屋根は耐久性が低く、上記のような対策がとれないため雪下ろしが必須。 |
既存の屋根に対策をとる場合は、融雪ネットや落雪システムは比較的に設置が簡単で設置費用も安く済むでしょう。新築の場合は、無落雪屋根を検討してみると良いかもしれません。
3.積雪・落雪による被害例
屋根に積もった雪が落ちることによる事故はさまざまあります。以下にその例をあげます。
<隣家や人への落雪事故>
- 隣家の敷地への落雪(カーポート、テラスルーフ、車、鉢植え等の破損)
- 通行人への落雪(雪、氷柱)による怪我
<自宅の家の事故>
- 積雪による樋の破損
- 敷地内への落雪(カーポート、テラスルーフ、車、鉢植え等の破損)
- 雪下ろし中の怪我、転落
他にも様々ありますが、一番怖いのは人の命に関わる事故です。雪下ろし中に転落してしまい死亡したというニュースは毎年のように聞きます。それくらい、身近な問題なのです。
一方で、トラブルに発展しそうなのは、隣家への落雪です。隣家の敷地内のものを破損させてしまった場合、いくら仲がよかったとしてもこちらで弁償しないといけなくなるでしょう。
そういったことを発生させない為にも、はやめの積雪対策が必要です。
4.落雪による損害は火災保険が適用される
万が一、落雪によって損害が起きた場合、火災保険を利用しましょう。
4-1.適用されるのは被害者側の保険
落雪被害は、台風や地震といった自然災害と同じ扱いになります。ですので、火災保険に加入していれば保険が適用されます。ただし、火災保険はあくまでも「自分の家」についての保険なので、落雪被害を受けた場合に補償されます。隣家に落雪被害を与えた場合、隣家が受けた被害は隣家が加入している火災保険が適用されることになります。
被害を与えた場合は、まず隣家に火災保険の加入有無を確認しましょう。被害者である隣家の保険を使って修繕することになりますが、火災保険は何度使っても保険料が一切変わりませんのでご安心ください。
被害を受けた場合は、ご自宅の火災保険の加入内容を確認して下さい。保険証券を確認し、被害箇所の雪災の補償有無を確認します。保険証券が見当たらない場合は、契約している保険会社に雪災補償の有無や補償内容を確認して下さい。
4-2.補償を受けるまでの流れ
実際に被害が起きた場合、どのような手順で進めたら良いのでしょうか。
被害を受けた場合の例だと、以下のような流れになります。
①保険会社へ連絡
まずは、申請に必要な書類を手配します。
②屋根工事会社へ問い合わせる
申請時に報告書や見積書を提出する必要があるので、屋根の工事会社へ問い合わせをします。火災保険適用に慣れている経験豊富な業者を選ぶとスムーズでしょう。
③書類送付
保険会社へ書類を提出します。
④保険会社の調査
保険鑑定人により、現場調査を実施します。鑑定人は実際に損害の大きさを確認し、保険金の支払を認定する判定材料とします。
⑤保険金の確定
無事に損害が補償対象であると認められれば、保険金が振り込まれます。
まとめ
積雪した屋根は非常に危険です。また、どの地域でも積雪するおそれはあります。被害を未然に防ぐためにも、積雪対策は事前におこないましょう。
また、もし隣家へ落雪被害を与えてしまった場合、火災保険が適用されます。被害を受けた場合は、自身の火災保険が適用できます。補償金額等は、保険会社の調査結果によるので、まずは一度保険会社に相談しましょう。
正しい積雪対策で、あらゆる被害を事前に防ぎましょう。