新築を建ててから十数年。自分の家のスレート屋根は大丈夫なのか、そもそも屋根の寿命がどのくらいなのか気になっていませんか。なかには、訪問営業の業者から屋根の劣化を指摘され、塗装工事を勧められたという方もいらっしゃるかもしれません。
スレート屋根の寿命は、約10~20年と言われています。しかし、お住まい周辺の環境(気象条件、交通量など)やメンテナンスの有無によって劣化の進行具合が変わり、一概に、20年間大丈夫というわけではありません。
どのメーカーも、基本的には10年ごとの定期メンテナンスを推奨しています。
ただし10年という年数はあくまで目安であり、ベストなタイミングは、劣化が軽いうちに、早めにメンテナンスを行なうこと。劣化を放置しておくと、最悪の場合、室内の雨漏りにまで繋がってしまいます。雨漏りの補修には、大掛かりな工事が必要になり、費用も高くつきます。そうなってしまう前に屋根をメンテナンスすることで、費用を抑えつつもスレート屋根の寿命をのばすことができるのです。
とはいえ、具体的にどんな状態になったらメンテナンスを検討すればいいのかわからないかと思います。この記事では、スレート屋根の寿命とあわせて、メンテナンスすべき劣化症状も掲載しておりますので、ぜひご活用ください。
1.スレート屋根の寿命はメンテナンスによって左右される!
1-1.スレート屋根とは
スレート屋根とは、「スレート」という屋根材を使用した屋根のことを指します(別称:カラーベスト、コロニアル)。
スレートには、粘板岩を薄く板状に加工した「天然スレート」と、セメントと繊維質材料を混ぜて厚さ5mmほどの板状に成型した「化粧スレート」の2種類がありますが、天然スレートは、天然の岩を使用するため非常に高価で、ほとんど普及していません。そのため、この記事では、化粧スレートを使用した屋根をスレート屋根とし、ご紹介させていただきます。
1-2.スレート屋根の寿命は10~20年「塗り替え」によって寿命が変わる
前述いたしましたが、スレート屋根の寿命はだいたい10~20年で、一般的には新築または前回のメンテナンスから10年を目安に定期的な塗り替えを行なうのがいいとされています。
スレート屋根に使用されている化粧スレートは、セメントが主成分であることからスレート自体に防水性はなく、塗装によって防水性が保たれています。その塗装による防水性が切れる前に、新しく塗装を施すことで、スレートそのものの劣化を防ぐことができるのです。
日々太陽の紫外線や雨水に晒されているスレート屋根は、年々劣化してき、防水性が薄れていきます。そして、ほぼ剥き出し状態になってしまったスレート屋根は雨水や夜露をどんどん吸水してしまい、スレート自体の劣化が急激に進行、スレート屋根の強度の低下などを招いてしまいます。最悪の場合、スレートが吸収した雨水が建物内部にまで染み込み、雨漏りに繋がる可能性も考えられます。塗装の寿命が、スレート屋根の寿命を左右すると言っても過言ではないでしょう。
もし、新築または前回のメンテナンスから10年が経過している場合には、塗装による防水性が切れていないかどうかをチェックし、状態によって塗替えなどのメンテナンスを行なうことをおすすめします。
防水性が低下したスレート屋根に発生する劣化症状については、2章でご紹介いたします。
1-3.スレート屋根の劣化を放置しておくとこんなことに!
雨水を吸ったスレート屋根から、雨水が建物内部へ浸入してしまうと、水の通り道ができます。一度でも通り道ができてしまうと、雨が降る度に雨水が建物内部へ浸入するようになってしまい、木造の柱は湿気によって腐食しはじめます。湿気を含んだ木材はシロアリの大好物なので、建物の耐久性はあっという間に低下してしまうのです。さらに、水分を含んだスレート屋根にカビや藻が発生するなど、建物の外観を損なう可能性もあります。
また、一番上の写真のように、室内に雨漏りが発生していなくとも、屋根直下の野地板や断熱剤等が水びたし!といった状態になっている可能性も十分に考えられます。もともと建物には、水が浸入しにくいよう様々な工夫が凝らされていますが、降雨の度に雨水に触れていればあっという間に劣化してしまいます。上記のような状態に陥る前に、早めのメンテナンスが重要になってきます。
2.こんな劣化症状があったら寿命かも!
本来、屋根の診断は業者に依頼するのが確実なのですが、自分で確かめる方法もあります。
ただ、屋根に上がるのは非常に危険ですので、地上から屋根を見上げてみたり、近くにお住まいの屋根より高い場所があればそこから観察してみたりと見える範囲でチェックするようにしてください。その場合、地上から見えている症状よりも実際はもっと劣化が進んでいる可能性が高いです。
これからご紹介する劣化症状を1つでも見つけたら、専門家に屋根の詳細な診断を依頼しましょう。
詳しいメンテナンス方法については、3章でご紹介いたします。
2-1.色あせが起きている
実は、色あせは見た目が悪いだけではなく、塗装の防水効果が薄れてきたサインでもあります。
屋根が色あせているなと感じたら、業者にお住まいの診断を依頼し、詳しく屋根の状態をチェックしてもらいましょう。その後、状態にあわせたメンテナンス計画を提案してもらうことをおすすめします。
2-2.カビや藻が発生している
カビや藻が発生しているのは、塗装の防水性が切れてきたサインの一つです。
塗装の防水性が切れてくると、主成分がセメントのスレートは雨水などの水分を吸収するようになります。そして、日当たりの悪い北面や影になっている箇所にある湿気を含んだスレートに苔や藻が発生するのです。カビや藻の発生具合が軽ければ、カビや藻を高圧洗浄等できれいに洗い流し、「塗り替え」でメンテナンスを行ないます。
2-3.スレート屋根にひび割れが発生している
スレート屋根で見られる劣化症状の一つです。
塗装の防水性が切れてくると、雨や雪などが降った際にスレートが水分を吸収するようになります。そして、水分を含んだ状態のスレートが、太陽光などによって急激に乾燥、その繰り返しで、膨張と収縮が何度も発生した結果、スレートが耐えきれずにひび割れが発生します。放置しておくと、ひび割れの隙間から建物内部へ雨水が浸入してしまったり、ひび割れ部分の拡大・増加によりスレートの滑落に繋がります。この劣化症状を見つけたら、早めに「補修工事」や「塗替え」などのメンテナンスを検討するといいでしょう。築10年以上が経過している場合には、新築時に施された塗装の効果が切れてくる頃なので、「塗替え」をおすすめいたします。
2-4.スレートの欠けが起きている
スレートのひび割れを放置していると、最終的にはひび割れしていた部分が欠けます。上記写真のような症状を見かけた場合には、早めの応急処置を行なった方がいいでしょう。
劣化の程度や範囲によって、シーリング材を使った補修、板金を使った補修、塗替え、カバー工法*、葺き替えといったメンテナンスが必要になります。劣化が軽ければ軽いほど簡単なメンテナンスとなり、費用も安くなります。
*既存のスレート屋根の上に金属サイディング等の薄くて軽い屋根材を重ねる工法。
【2004年以前に、新築を建てられた方】
2004年以前に作られたスレートは、強度を高めるためにアスベスト(石綿)が含まれています。そのため、ひび割れや滑落によってアスベストが飛散する可能性があります。
※人体に影響を及ぼしてしまうものとして、2004年10月にアスベスト(石綿)が禁止され、それ以降に作成されたスレートにはアスベストは使用されていません。
2-5.スレートの反り・浮き
スレート屋根でよく見られる劣化症状の一つです。
スレートの反りをそのまま放置しておくと、台風などの横殴りの雨が降った際に、反り上がった小口から内部に雨水が浸入してしまいます。反りは塗装工事でなおせないため、見つけた際には、早めに「補修工事」や「葺き替え」等のメンテナンスを検討することをおすすめいたします。
2-6.棟板金が浮いている、釘が抜けている
スレート屋根には、屋根の棟にある「棟板金」という山形の金属板があります。
この棟板金が外気温の影響で膨張や収縮を繰り返すことで、棟板金を押さえている釘が徐々に押し出され、最終的に抜け落ちてしまうことがあるのです。放置しておくと、棟板金が外れ、剥き出しになった下地から雨水が建物内部へ浸入してしまいます。この症状を見つけたら、早めに業者に依頼して「補修工事」を行ないましょう。
もし築10年以上の物件の場合は、新築時に施された塗装の防水効果が薄まってくる頃でもありますので、「塗り替え」を検討するのもいいでしょう。
※屋根に設置されるものですので、見えない方が大半かと思います。もしご近所にマンションなどがあり、ご自宅の屋根を上から見ることができるといった場合に、注意してチェックしてみるといいでしょう。
2-7.室内に雨漏りが発生している
室内に雨漏りが発生している場合には早急にメンテナンスを行ないましょう。
元来、建物は水が入りにくいよう様々な工夫が凝らされています。そのため、天井に雨染みが発生するような状態は、スレート屋根だけではなく建物内部の奥深くまで劣化が進行している証拠でもあります。メンテナンスとしては屋根の葺き替えを行ない、下地から屋根材まで新しくするのが好ましいです。
3.スレート屋根のメンテナンス方法
スレート屋根のメンテナンスには、劣化の軽いものから「塗り替え」「カバー工法」「葺き替え」を行ないます。
3-1.塗り替えの工事内容と費用
塗り替えは、既存のスレート屋根を高圧洗浄できれいにした後、新しい塗料を塗る工事です。セメントが主成分のスレートは、本来防水性を持ち合わせておらず、スレート表面に塗装を施すことで防水性を有しています。そのため、経年劣化などで塗装がはげてくると、セメントが剥き出しの状態となり、最悪の場合室内の雨漏りに発展してしまうため、塗装の効果が切れてしまう前にまた新しく塗装を施す必要があるのです。
屋根塗装の相場は、約25~40万円です。
屋根塗装について詳しく知りたい方は、下記記事をご参考ください。
3-2.葺き替えの費用と工事内容
葺き替えは、既存のスレート屋根をすべて撤去し、新しい屋根材を被せる工事です。下地である野地板や防水シートも取り替えるため、スレート以外の屋根材にすることも可能です。スレート屋根の劣化がかなり進んでいる場合や、スレートを通して建物内部まで劣化が進行している場合に「葺き替え」を行います。
葺き替えの相場は、約160万円です。新しく被せる屋根材によって価格帯が前後します。
葺き替えについて詳しく知りたい方は、下記記事をご参考ください。
3-3.カバー工法の費用と工事内容
カバー工法は、既存のスレートの上に新しい屋根材を被せる工事です。スレート屋根の劣化が酷く、塗り替えでは対応しきれない場合の選択肢となります。
既存屋根材の撤去費等がかからないため、葺き替えを行なうよりも価格を抑えることができます。ただ屋根が二重になり重たくなるため、薄くて軽い金属屋根など、屋根材が制限されます。
カバー工法の相場は、約60~130万円です。新しく被せる屋根材によって価格帯が前後します。
4.10年以上が経過している場合は専門家に診断を依頼
2章で紹介したような劣化症状を見つけたけれど、塗装工事や葺き替えなど、お住まいにどんなメンテナンスが必要なのかわからないという方もいらっしゃるかもしれません。そんなときは、まず専門家にお住まいの診断を依頼し、メンテナンスが必要かどうかをチェックしてもらうのがおすすめです。診断は、無料で行なっている業者が多いです。
ここで最も重要になってくるのは、「”誰に”診断をしてもらうのか」です。
実は、診断の実施方法に明確な決まりはなく、業者によってさまざま。診断は、お住まいの劣化状況を正確に把握し、そこから最適なメンテナンス方法を提案するだけの知識が必要になるため、建築士、雨漏り診断士、外装劣化診断士などの専門の資格を持ち、診断経験の豊富な人員を有する業者に依頼することをおすすめします。
飛び込みの営業は避けた方が無難です。なぜなら、彼らは商談をし、契約を取るプロですが、住宅を診断するプロではないからです。医療免許のないお医者さんに診断されたくないように、お住まいの診断も免許(資格)を持ったひとに頼むべきと考えましょう。
依頼前にどんな人が診断してくれるのかHPのスタッフ紹介等をチェックするか、電話で問い合わせてみるといいでしょう。
また、1社だけではなく2社以上に診断を依頼し、診断方法の違いや診断結果のわかりやすさなどを比較することをおすすめします。2社以上の診断結果を比較することで、だいたいのお住まいの状況を把握できますし、丁寧な診断だったのか適当な診断だったのかを見極められるようになります。
リフォームジャーナルを運営するプロタイムズでも無料で診断を行なっています(診断を行なうのは、外装劣化診断士の資格を有するスタッフです)お気軽にご活用ください。
まとめ
この記事でのポイントを下記におまとめしましたので、あらためて復習してみましょう。
スレート屋根は定期的にチェックし、メンテナンスを行なうことで寿命をのばすことができます。
- スレート屋根の寿命は、10~20年、お住まいの周辺環境やメンテナンスによって変わってくる
- 主成分がセメントであるスレート自体に防水性はなく、塗装によって守られている
- 日々太陽光の紫外線や雨水にさらされているため、スレート表面の塗装も徐々に劣化し、防水性が低下していく
- 防水性が低下すると、スレートが雨水を吸水するようになり、最悪の場合雨漏りに繋がる
- こんな劣化症状を見かけたら、寿命かも!【スレート屋根の色あせ、欠け・破損、ひび割れ、反り、カビ・藻の発生、棟板金を止めているネジが緩んでいる】
- 寿命が気になり始めたら、専門家に診断を依頼。お住まいの正確な現状を把握し、メンテナンスを!
- 依頼は資格と経験を持った専門家を有する業者に行ない、2社以上を比較するのがおすすめ