アパートの外壁塗装にはそれなりの費用がかかるため、塗装するべきかどうか、判断に迷っているアパート経営者も多いのではないでしょうか。特に気になるのは、「外壁塗装をすることで、入居率は上がるのか」といったところでしょうか。
結論を先に申し上げますと、アパートの入居率を上げるために外壁塗装はするべきです。老朽化の進行と、入居率の低下は、無関係ではありません。仮に同じ賃料&条件で、外観がみすぼらしいアパートの物件と、見栄えの良いアパートの物件の写真を不動産屋で見せられたとすれば、おそらく多くの方が新しい方を選ぶでしょう。
ただし、やみくもに塗装するのはオススメできません。せっかく塗装するのであれば、経営者視点で戦略的に塗装するのが、賢い選択です。費用の妥当性を判断するにしても、塗装すべきタイミングや色選びにしても、”アパート経営的には、こう判断するのがオススメ”というポイントがあるのです。
この記事では、アパート経営者必見の外壁塗装に関する情報をまとめてご紹介します。入居率を上げるために外壁塗装を検討されているアパート経営者は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.アパートの外壁塗装費はいくらが妥当?!
1-1.アパートの外壁塗装にかかる費用相場
一般的な2F建てアパートの場合、200~300万円(500㎡)が外壁塗装費の相場です。さらに、この費用にプラスして、足場代(600~800円/㎡)がかかります。
上記の費用は、あくまで一つの参考です。外壁塗装の費用は、塗装する塗料の種類や塗装する面積(広さ)、劣化の進行具合など、さまざまな要因によって変動するため、正確な費用を知りたい場合は、見積りとってみることをオススメいたします。
※外壁塗装の費用については、「【保存版】外壁塗装にかかる費用の相場と見積書の見方」の記事もぜひご覧ください。
1-2.費用の妥当性を判断するには”塗料の耐久性”という観点も必要
塗料には様々な種類があり、それぞれ耐久性も異なります。一般的に耐久性の低いものは低価格、高いものは高価格となっています。
つまり、耐久性の低い塗料を選べば1回の塗り替え費用は抑えることができるものの、塗り替え周期が短くなるため、長い目で見れば、余計に費用がかかってしまう可能性があるということです。
外壁塗装費は、塗り替え1回にかかる費用だけでは正しく判断できません。”塗料の耐久性”という観点も含めて、長期的な視点で判断するようにしましょう。
■塗料別の相場目安
人気NO.1は、耐久年数と費用のバランスが良いシリコン塗料。1回の塗り替え費用をおさえたい場合には、アクリル塗料やウレタン塗料を選ぶと良いでしょう。耐久性重視の場合には、ピュアアクリル塗料や光触媒塗料などもオススメです。
塗料 | 耐久年数 | 費用 ※1缶あたり |
---|---|---|
アクリル | 約3~5年 | 5,000~15,000 |
ウレタン | 約5~7年 | 5,000~20,000 |
シリコン | 約7~10年 | 15,000~40,000 |
ピュアアクリル | 約15年~ | 50,000~70,000 |
フッ素 | 約15年~ | 40,000~100,000 |
無機 | 約15年~ | 50,000~120,000 |
光触媒 | 約15年~ | 50,000~100,000 |
※上記はあくまで目安です。塗料メーカーや製品によって価格が異なります。
2.外壁塗装で入居率を上げるために知っておくべき2つのこと
入居希望者がアパートに訪れたときに、一番最初に目にするのが「外観」です。そのため、外観が美しく、魅力的であることは、入居率を上げるうえで絶対にクリアすべきポイントと言えます。
そこで重要となってくるのが「外壁の劣化を進行させないこと」と、「より魅力的な外観を演出すること」です。この2点を外壁塗装で実現することが、入居率を上げることにつながるのです。
2-1.外壁塗装すべきタイミングを見逃さない
“外壁の劣化がひどくになる前に…”というのはわかっていても、いつ外壁塗装すればいいか、というのは、アパート経営者にとっての悩みどころの一つでしょう。
見極め方には、「劣化症状で見極める方法」と「塗装周期で見極める方法」があります。
■劣化症状で見極める方法
外観が色あせていたり、カビや藻が発生していたりすると、それだけでアパート入居の意志が下がってしまう可能性大。下記のような劣化症状が見られる場合には、塗装をすべきタイミングです。
劣化症状 | ||
---|---|---|
ひび割れ(0.3mm以上) |
色あせ |
チョーキング (外壁を手で触ると、白い粉状のものが付着する状態) |
塗膜の剥がれ |
カビ・苔・藻 |
サビの発生 (手すり・鉄骨階段など) |
※外壁塗装には、美観を美しく保つだけでなく、劣化を食い止め、建物の資産価値を守るという役割もあります。劣化症状が見られる場合には、早めに塗装するようにしてください。
■塗装周期で見極める方法
一般的な塗り替え周期から、おおよその外壁塗装すべきタイミングがわかります。
補修内容 | 周期 |
---|---|
塗り替え | 約 10~15年※使用する塗料によっても、塗り替え周期が異なります。 |
2-2.入居率を左右する色は、入居者層によって決める
入居率を最優先に考えるのであれば、色選びは入居者層の志向性を基準に選ぶのが正解です。
どんなにオシャレであっても、ポップな色合いのアパートは、年配の方には敬遠されてしまうかもしれません。また、くすんだ色の外壁のアパートには、あまり魅力を感じない若者が多いかもしれません。
入居者層は、男性か女性か、学生か社会人か、単身かファミリーか。入居率を上げるためには、その層に合わせた色を選ぶことが重要です。
※色選びについて詳しくは「外壁塗装で成功する色選びの為に押さえる6つのステップ」「外壁の人気色を参考に!色選びに失敗しない方法」「外壁の色を決めるときのポイントとおすすめシミュレーションサイト」などの記事もご覧ください。
3.気になる外壁塗装の工事期間&工程
3-1.工事期間は2~3週間が目安
アパートの大きさによっても大きく異なりますが、目安は2~3週間(14~21日)です。また、各部屋についているベランダや2階建以上のアパートについている外階段なども塗装する場合には、別途日数がかかります。
※外壁塗装の工事期間について詳しくは「気になる外壁塗装の期間を徹底解説 !!」の記事もご覧ください。
3-2.知っておきたい工事の流れ
詳細な内容まで覚える必要はありませんが、おおよその流れは掴んでおきましょう。あらかじめ流れを把握しておけば、進捗状況がチェックしやすくなります。
アパートの外壁塗装の流れ | ||
---|---|---|
①業者選び | ▼問い合わせ | 気になる業者に目星をつけ、2社以上に見積りを依頼しましょう。 |
▼建物の診断 | 業者が実際に建物の劣化状況をすみずみまでチェックし、どういう補修が必要なのか工事のプランを検討してくれます。 | |
▼見積り | 「建物の診断」の結果をもとに、算出された見積書を受け取ります。提出された複数社からの見積書を比較・検討して、業者を選びましょう。 | |
②契約 | ||
③打ち合わせ | ▼色決め | 業者と相談しながら、外壁の色を決めます。 |
▼工事前打ち合わせ | 工事前に、工事のスケジュールや工事工程について説明を受けましょう。 | |
④工事 | ▼足場組立 | 足場業者が、作業に必要な足場を組むところから工事がスタートします。 |
▼洗浄 | 高圧洗浄機などを使って、建物にこびりついた汚れを落としていきます。 | |
▼下地補修 | ひび割れなどの劣化箇所は、塗装前に補修します。 | |
▼養生 | 塗装の際、塗料などが飛び散らないように、塗装しない箇所をビニールやテープを使って覆っていきます。 | |
▼下塗り | 外壁材と塗料の密着性を高めるために、まず「下塗材」と呼ばれる塗料を塗装します。 | |
▼中塗り・上塗り | 仕上げに「中塗材」「上塗材」を塗装していきます。 | |
▼足場解体 | 塗装工事完了後、足場業者が足場を解体します。 | |
⑤完成! |
4.工事中のトラブルを避ける!入居者へのフォローは絶対
塗装工事をするにあたり、アパート経営者の悩みの種となりやすいのが、入居者への対応です。
大きなトラブルに発展させないためには、入居者が気になるであろうポイントを把握し、きちんとフォローすることが重要です。
4-1.塗装工事のお知らせは着工の1週間前までに完了させる
何の告知もなく、突然、足場の組立がはじまったりすると、入居者は当然とまどってしまいます。できれば1ヶ月前から、遅くとも1週間前には、塗装工事をする旨と、大枠の期間は告知しておきましょう。
また工事に際して、駐輪場の自転車を動かしてもらったり、ベランダに置いてあるものを片付けてもらったりと、協力してもらわなければならないこともあります。事前に業者に入居者に協力いただきたい内容や日程等を確認し、できれば工事の告知と同時にお伝えできるのがベストです。
4-2.洗濯物が干せない日時は明確に伝える工夫を
汚れを高圧洗浄機で落とす、塗料を吹き付けるなどの作業工程の間は、汚れる可能性があるため、洗濯物を外に干すことができません。そこで、入居者には、いつ洗濯物が干せないのか、日程と時間を明確にお伝えすることが重要です。
気をつけておきたいのが、急なスケジュール変更。塗装工事は天気や湿度などの要因によってもスケジュール変更せざるを得ない場合もあるため、その都度、正しい情報を入居者にお伝えする必要があります。いざという時に慌てずにすむよう、エレベーターや掲示板に張り出すなど、何らかの伝達手段を事前に考えておきましょう。
4-3.“におい”に配慮した塗料選びも選択肢に
入居者が気になるポイントの一つに塗料の“におい”があります。特に、子育て世代や高齢者など、家にいる時間の長い入居者が多い場合には、注意してください。
臭いのトラブルを避けるためには、そもそもにおいが少ない塗料を選ぶという方法が有効です。具体的に、どの塗料を選べばいいかは、塗料選びの際に、業者に相談してみましょう。
5.業者を選ぶ際にチェックすべき3つのポイント
5-1.施工実績で技術力&経験値をチェック
ひとくくりに“塗装業者”といっても、アパートからマンション、工場、戸建住宅まで幅広く手掛けている業者もいれば、戸建住宅に注力している業者もいます。そこで、その業者がどんな塗装工事を主力としているか、技術力や経験値を探るのに、施工実績が大いに役立つのです。
アパートの塗装をお願いするのであれば、やはりアパートの施工実績が豊富にある業者の方が、提案の幅も広く、技術力も間違いないため、より安心と言えます。
5-2.必ず確認しておきたい保証制度の有無
新築工事とは異なり、分類としてはリフォームに含まれる外壁塗装工事には、工事保証の法的な義務はありません。そのため、何らかの不具合が発生した場合の保証があるかどうかは、頼れる業者を見抜く一つの指標になります。
リフォーム業者による工事保証の有無は必ず確認するようにしましょう。その際、「保証対象と保証年数」も併せてチェックしておくと、何かトラブルが発生した際に安心です。
業者によっては、リフォーム瑕疵保険*を導入している場合もあります。
5-3.500万円以上の塗装工事ができるのは『建築業の許可』を受けた業者だけ
建設業法第3条では、請負金額が500万円以上の工事の場合には、建築業の許可を受けることが義務づけられています。
500万円を超える工事になる場合は、建築業の許可を取得している業者かどうか、必ず確認するようにしましょう。
※建築業の許可について詳しくは、国土交通省のホームページにてご確認ください。
※業者選びについて詳しくは「外壁塗装でトラブルを防ぐ『業者選びのポイント』」「【保存版】知らないと損!悪徳リフォーム業者の手口と絶対に騙されない為の全知識」の記事もご覧ください。
6.【補足】アパートの外壁塗装費は修繕費?資本的支出?
税務上、アパートの外壁塗装費を修繕費として計上すればいいのか、資本的支出として計上すればいいのかで、迷っている方も多いのではないでしょうか。
どちらに該当するかは、ズバリ“塗装の目的が何なのか”によって異なります。
6-1.“原状回復”が目的の場合は「修繕費」
維持管理や修理など、原状回復を目的とした外壁塗装は「修繕費」となります。
【例】修繕費として計上する場合
・ひび割れや剥がれなどの経年劣化の補修
・雨漏れの補修
・災害によって損失した部分の補修
修繕費は、外壁塗装工事をした年に、一括で経費として計上します。
6-2.“建物の価値を高めること”が目的の場合は「資本的支出」
耐久性アップや、デザインの変更など、建物の資産価値を高めることを目的とした外壁塗装は資本的支出となります。
【例】資本的支出として計上する場合
・デザイン性・美観の向上を目的とした塗り替え
・もともと塗装していた塗料よりも、耐久性の高い塗料での塗り替え
・モルタル外壁からサイディング外壁への張り替え
資本的支出は、資産として計上し、減価償却していきます。
※工事費用が20万円未満の場合や、塗装周期が3年周期の場合など、上記が原則が当てはまらない例外もあります。外壁塗装費の税務上の処理について、詳しくは、「知っておきたい外壁塗装の減価償却のしくみ」の記事もご覧ください。
7.まとめ
アパート経営者必見の外壁塗装に関する情報をまとめてご紹介しました。
まずは、「1.アパートの外壁塗装費はいくらが妥当?!」を参考に、外壁塗装にかかるコストをシミュレーションしてみましょう。また「2.外壁塗装で入居率を上げるために知っておくべき2つのこと」でご紹介した入居率を上げるための手立ては必ず把握しておく必要があります。
アパートの外壁塗装を経営にプラスに働かせるためには、戦略的に進めることが重要です。ぜひご紹介した内容を参考に、メンテナンス計画を練ってみてください。