おしゃれな外観を演出することができ、現在多くの住宅で採用されているサイディング外壁。住宅用建材使用状況調査によると、日本で使用されている外装材のうち、79%がサイディングを使用しているという調査結果が出ています。そんなサイディングの中でも高い人気を誇るのが窯業系サイディングです。おしゃれな外観を演出できることで人気ですが、一方でサイディングのボード自体やシーリングにひび割れが入りやすい素材でもあります。
窯業系サイディング外壁の家にお住まいの方は、「ふと外壁を見てみるとひび割れが多く発生している」ということもあるかもしれません。そして多くの場合、ひび割れの発生を見つけても「実生活になんの影響もないだろう」とついつい放置してしまいがちです。
しかし、そのまま放置し続けると状況は悪くなる一方です。最悪の場合、ひび割れから水が浸入し、雨漏れに繋がり建物の躯体を腐らせる事態に陥ってしまうこともあります。
そこで今回の記事では、窯業系サイディングに関する基礎知識から、劣化に対する補修方法、費用についてご紹介します。「住まいの窯業系サイディングにひび割れがある」という方はぜひこの記事を参考にしてみてください。
目次
1.窯業系サイディング外壁の基礎知識
1-1.窯業系サイディング外壁の長所・短所
人気が高く日本の多くの住宅に使用されている窯業系サイディングですが、どんな特徴があるのでしょうか?窯業系サイディングの長所と短所を下記の表にまとめました。
■窯業系サイディングの長所・短所まとめ
メリット | ・耐火性、耐久性に優れている。 ・タイル調、石張り調、木目調などのデザインバリエーションが豊富。 ・コストパフォーマンスに優れる。 |
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デメリット | ・熱を蓄熱しやすい。 ・塗られている塗料の膜が劣化し薄くなると水を吸収しやすい。 ・ボードとボードのつなぎ目である「シーリング」が劣化しやすく、そこから水が浸入しやすい。 |
窯業系サイディングの一番のよさは「バリエーションの多さ」・「コストパフォーマンス」です。
一方で、「吸水性が高い」というデメリットもあります。窯業系サイディング自体の防水機能は低く、表面に塗装することで防水機能を持たせています。そのため、表面の塗膜が劣化すると、雨水などが浸入しやすくなり、夏の暑さ・冬の凍結により収縮と膨張を繰り返すため、「ひび割れ」を起こす危険性が発生するのです。
更には、ボードとボードをつなぐシーリングも劣化すると、変形やひび割れを起こしてしまい、水が浸入してしまうのです。
窯業系サイディングについて詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。
1-2.劣化を放置するとどうなるの?
窯業系サイディングのひび割れを放置すると雨水が建物内に浸入し、次のような事態を招いてしまうおそれもあります。
■サイディング自体の劣化
放置するとどんどんひび割れなどの劣化が進行し、サイディング自体を取り替える必要が出てきます。
■外壁下地の腐食
ひび割れからサイディングに雨水が浸透し、木性の下地材が腐食する危険性があります。
■湿気によるカビの発生により体に悪い影響を及ぼす
雨水が浸入するとカビが発生しやすい環境になり、体へ悪い影響を及ぼす危険性があります。
■構造体の腐食
サイディングから浸透した雨水はやがて構造体にも浸透してしまいます。構造体に浸透することでシロアリの発生の危険性も高まります。構造体がシロアリに侵食されると、建物自体が地震などに対する耐性の低い建物になる危険性があります。
「多少のひび割れだから大丈夫だろう」と油断するとこのような状況を招いてしまいます。また、劣化が進めば進む程、改修にかかる費用も高額になっていきます。だからこそ、気が付いたときに補修を行なうことが重要になるのです。
2.補修が必要なサイディング外壁のひび割れの種類
2-1.ボード本体のひび割れ
第1章でもお伝えした通り、サイディング表面の塗膜が劣化し、雨水が浸入しやすくなると、夏の暑さ・冬場の凍結により、収縮と膨張を繰り返すことで、サイディング本体のひび割れは発生します。
また、サイディングボードの端に釘が打たれているため、釘の周辺にもひび割れが多く見られます。釘周辺にひび割れが起きるとサイディングが脆くなってしまい、水が浸入しやすくなります。
2-2.シーリングのひび割れ
サイディング外壁の中で一番に劣化が始まる箇所はシーリングです。シーリングがひび割れしている、シーリングがサイディングから剥がれている、などの劣化症状がある場合、新しいシーリング材を打ち替えるなどの補修が必要です。
2-3.その他メンテナンスが必要な劣化症状
■色あせ・塗装の剥がれ・チョーキングが発生している
これらの劣化症状はサイディング表面に塗装している塗膜の劣化が進行しているサインです。放置すると吸水しやすくなり、ひび割れが発生しやすい状況になりますので、メンテナンスが必要です。なお、色あせ・塗装の剥がれ・チョーキングなどの場合のメンテナンスは「塗装工事」を行います。
「サイディングの塗装工事」について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧下さい。
■サイディングの反り・欠け・大きな亀裂
劣化の進行が激しく、反り・欠け・大きな亀裂などが発生している場合、補修工事や塗装工事では対処できないため、新しいサイディングボードに取り替える、重ね張り工事、張り替え工事が必要です。
3.ひび割れの補修方法
第3章では、サイディングボードのひび割れ、シーリングのひび割れに対する補修工事の流れについて紹介します。
3-1.ボード本体のひび割れの補修方法
窯業系サイディングのひび割れを補修する際には、コーキングをひび割れ部分に充填する補修を行います。
補修事例:プロタイムズ金沢駅西店
①ひび割れ部分を清掃する
まずはカッターなどでV字に削り溝を作ります。その後、ひび割れ部分を刷毛などを用いてキレイに清掃し汚れやゴミなどの不純物を除去します。
②プライマーを塗布する
清掃が完了したら次はプライマーを塗布します。プライマーはシーリングと下地との接着力を高める役割を担う工程です。
③シーリング充填する
シーリングを充填して、ひび割れの箇所を埋め、ヘラを用いて平らに成形します。奥の方まで貫通しているひびに対して、しっかり防水することが大切です。
③モルタルにて表面を埋める
モルタルにて表面を埋め戻し、平らな仕上りにしたあと、塗装によって保護します。
以上のようにシーリングを用いて、サイディングボード本体のひび割れ補修作業を行います。
今回の作業はプロタイムズ金沢駅西店の事例を紹介しました。
http://kanazawaekinishi-toyamachuo.protimes.info/
リフォームジャーナルを運営するプロタイムズではサイディングのひび割れ補修のご相談も承っています。サイディングのひび割れが気になる方は、まずは無料の診断でサイディングの状態をチェックすることをオススメします。
3-2.シーリングのひび割れの補修方法
シーリングの補修には、既存のシーリングを取り除き、新しいシーリングに打ち替える「打ち替え」という方法と、既存のシーリングの上から新しいシーリング材を充填する「増し打ち」という方法の2種類があります。打ち替えに比べると増し打ちのほうが低コストですが、あまりオススメできません。仮に劣化の進行したシーリング材の上から増し打ちをしても、またすぐにひび割れなどの劣化症状が発生してしまうことがあるからです。最悪の場合、1年と持たないこともあるため、劣化症状が表れているときは「打ち替え」を行いましょう。
今回は打ち替えの際の補修方法をご紹介します。
①シーリングを撤去する
カッターなどを用いて切れ目を入れペンチを使って既存のシーリングを撤去します。この際、傷んでいる部分だけではなく、全てのコーキングを撤去します。
②養生し、プライマーを塗布する
養生テープを用いて、シーリングに近い外壁部分の養生作業を行います。シーリングのはみ出しを防ぎ一定の厚みで打ち換えを行うために非常に重要な作業であると言えます。
その後、サイディング本体の補修と同様、プライマーを塗布します。
③シーリング充填する
シーリングを目地部分に流し込み、ヘラなどで内部に隙間がないように均等にしていきます。
4.サイディング外壁のひび割れ補修費用の相場
第4章では、サイディング外壁本体とシーリングのひび割れ補修に要する費用の相場をご紹介します。今回は、業者に依頼した場合とDIYで行う場合で、費用の相場をご紹介します。
4-1.ボード本体のひび割れ補修の費用相場
概算の金額で、業者に補修を依頼する場合が20~40万円、自分で補修をする場合が2~4万円、それぞれ必要です。
■業者に依頼した場合の費用内訳
業者に依頼した場合20~40万円程必要です。
主には、補修を行う長さによって、変動しますが、足場を立てるかどうかによっても費用は変わります。2階部分の施工を行う場合、どうしても足場代がかかり、およそ15~20万円程追加で必要です。
■DIYの場合の費用を内訳
DIYの場合、施工費などは必要なく、材料費が必要です。下記の表で、必要な材料・工具と費用目安をご紹介します。
項目名 | 詳細 | 費用目安 |
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コーキング材 | 1本でおよそ3m分の目地打ちが可能。 | 500~2,000円/1本 |
コーキングガン | 容器にはいったコーキング材を押し出すための器具。 | 200~10,000円/1本 |
マスキングテープ | 養生テープ。汚れやシーリングを付着させたくない部分へ貼る。 | 300~500円/1個 |
ヘラ | コーキングを打ったあとになめらかな仕上がりにする道具。 | 500円/1本 |
※費用は目安です。業者や施工箇所の状態によっても異なります。
4-2.シーリングのひび割れ補修の費用相場
概算の金額で、業者に補修を依頼する場合が25~50万円、自分で補修をする場合が5~7万円、それぞれ必要です。
■業者に依頼した場合の費用内訳
業者に依頼した場合、25~50万円程かかります。主には、補修を行う長さによって、変動しますが、足場を立てるかどうかによっても費用は変わります。2階部分の施工を行う場合、どうしても足場代がかかり、およそ15~20万円程追加で必要です。更には打ち替えの場合、既存のシーリングを撤去する作業代も追加で必要です。
■DIY場合の費用内訳
DIYでシーリングの打ち替えを行う場合も、サイディング本体のひび割れ補修と同様に材料費がかかってきます。5~7万円かかると考えて良いでしょう。
必要な材料とその費用については、上記の表を参考にしてください。
4-3.DIYでのひび割れ補修はおすすめできない!
サイディングボードやシーリングのひび割れ補修は一見して簡単そうに見えるため、DIYで補修してみたいという方も多いのではないでしょうか。しかし、このような補修工事をDIYで行うことはオススメしません。理由としてはDIYにおいて多くのリスクがあることが挙げられます。
【ひび割れ補修を自分で行うリスク】
●養生を上手く行えずに、仕上がりが汚くなってしまい再度やり直すことになった。
●ひび割れ部分に完全に充填できずに、早期でひび割れが再発してしまった。
●コーキング材やプライマーの知識がなく、何を選べば良いのか分からず、間違ったものを使用してしまう。
などのリスクがあります。以上を踏まえると、ひび割れの補修であっても、DIYではなく、業者に依頼して補修してもらることをおすすめします。
5.サイディング外壁を長持ちさせるためにできること
サイディングを長持ちさせるためには、定期的に点検し、補修することが重要です。つまり、劣化症状を早めに見つけることが大切なのです。年に1~2回は点検と掃除を行いましょう。劣化しやすいシーリング材は約5~10年周期での補修を行うことをオススメします。
■補修内容とその頻度
補修内容 | 頻度 |
---|---|
点検&掃除 | 年に1~2回程度 |
シーリングの打ち替え | 約5~10年 |
塗り替え | 約 10~15年※使用する塗料によって塗り替え周期が異なる。 |
重ね張り・張り替え | 大きな欠け、反りが見受けられる場合に必要 |
まとめ
今回の記事では、サイディングのひび割れに対する補修方法を中心に説明しました。おしゃれな外観を演出できるサイディング外壁をなるべく長く使い続けるために、定期的な点検とメンテナンスは欠かせません。特にひび割れはよく起こりやすく、放置すると雨漏れのリスクも発生してしまいます。
だからこそ、ひび割れを発見したらすぐ業者へ相談し、補修を行ってもらうようにしましょう。