コンクリート外壁の塗り替えをご検討の中の方で、「塗り替えを行なう上でどんな塗料を選べば良いのか」とお悩みの方は多いのではないでしょうか?
コンクリート外壁用の塗料には、主に撥水効果を付与する「撥水剤」、表面を保護し、風化を防止することができる「カラークリヤー塗料」、建物の動きに追随し水の浸入を防ぐ「弾性塗料」の3種類があり、それぞれ仕上りや金額、性能に違いがあります。
塗料を選ぶ上では、まず各塗料がどのような性能を持つのか、どのくらいの費用かかるのか、押さえておく必要があります。
そこで今回の記事では、コンクリート外壁の塗装をご検討の方に向けて「コンクリート外壁用の塗料を選ぶポイント」を中心に、オススメ塗料、費用などをご紹介いたします。コンクリート建造物の塗り替えをご検討中の方はぜひ参考にしてください。
目次
1.コンクリート用塗料に求められる機能
まずは、コンクリート用の塗り替え塗料にどのような機能が求められるのか、ご説明します。塗料を選ぶ際には、耐候性、防水性、透湿性の3つの機能が求められます。
1-1.耐候性
耐候性とは紫外線や雨などの劣化要因に対して、変質や劣化を起こしにくい性質のことです。耐候性が高い塗料は、劣化が起こりにくいため、その分長持ちする(次回の塗り替えまでの周期が長い)ということが言えます。塗料の耐候性が高いかどうか、を判断する基準の一つに「促進耐候性試験※の結果を確認する」という点があります。促進耐候性試験の結果が長い程、耐候性のある塗料である、ということが言えるのです。
オススメされた塗料について、耐候性を調べる際には、どのくらいの耐候性があるのか、塗料のパンフレットを確認し、業者にどのくらいの期待耐用年数なのか、確認するようにしましょう。
※促進耐候性試験とは、人工的に屋外の条件を再現して劣化を促進させ、製品の寿命を予測する試験のこと。
1-2.防水性
コンクリートは雨に強くはない、という弱点があります。雨ざらしにされたコンクリートは表面がボロボロと剥がれるなどの劣化症状が発生します。さらには、ひび割れなどが発生するとそこから水が浸入し、雨漏り発生のリスクも高まります。そのためコンクリートには柔軟性があり、ひび割れなどの動きに追随する「防水性」を有する塗料を使うことをおすすめします。
1-3.透湿性
透湿性とは液体である水と気体である湿気の粒子の大きさの違いを利用して、塗膜が湿気は通し、水は遮断する機能のことです。透湿性のある塗料はコンクリート内部の湿気を徐々に抜く役割を持つため、塗装した塗膜が膨れなどを起こしにくくなります。
2.コンクリート外壁用塗料の種類
2-1.コンクリート用塗料の特徴まとめ
第2章ではコンクリート用の塗料について、詳しく紹介します。まずは、各塗料がどのような性能・費用なのか、確認します。
塗装工法名 | メリット | デメリット | 費用相場 | こんな人にオススメ |
---|---|---|---|---|
撥水剤 | ・安価で施工できる ・水を弾くことで雨水の浸入を防ぐ |
・耐用年数が短く、こまめにメンテナンスする必要がある ・透明なため、下地補修の跡を隠蔽できない |
1,500円/㎡ | 大きな劣化症状はなく、雨漏り予防対策をしたい方 |
カラークリヤー塗料 | ・コンクリートの風合いを残すことができる ・撥水剤よりも保護機能が高い |
・撥水剤と比較し、高額になる | 3,500円/㎡ | ひび割れなどの劣化症状が見られ、かつコンクリートの風合いを残したい方 |
弾性塗料 | ・ひび割れの表面化を抑え、雨漏りのリスクを抑える | ・塗りつぶしのためコンクリートの風合いを消してしまう | 2,700円/㎡ | ひび割れなどの劣化症状が見られるため、ひび割れを保護して水の浸入を防ぎたい方 |
※費用は参考です。施工箇所の状態や施工業者によっても異なります。
2-2.撥水剤
撥水剤は、水をはじくため、防水性が高く雨水の浸入を抑えることができる塗料です。第1章で説明した通り、雨水は外壁を劣化させる最大の要因の1つです。そんな雨水の浸入を抑えることができるのが、撥水剤です。
【メリット①】 雨水の浸入を防ぐ
特にコンクリート打ちっぱなしのような、外壁そのものを守るための保護層がない場合、透明な撥水剤を使うことで見た目が変わらずに、雨水が浸入するのを抑制することができるのです。
【メリット②】 美観を保持する
外壁は、雨や雪による汚れが付着しやすい状況にあります。雨水自体に含まれる汚れが付くだけでなく、屋根に付着しているホコリが雨水で流れてきたり、泥はねにより汚れが付着してしまうことにより、汚れが付着してしまうのです。
撥水剤にて仕上げた外壁は水分を弾くため汚れが定着しにくく、水で洗い流すだけで落ちやすくなります。
【デメリット①】耐用年数は低い
塗膜の寿命は短く、他の塗料に比べて劣化しやすい塗料です。そのため、定期的にこまめにメンテナンスする必要があります。
【デメリット②】下地の色や補修跡を隠蔽できない
無色透明であるため、下地の状態がそのまま表面にあらわれてしまいます。下地の色の違いや下地補修を行なった箇所を隠蔽できない、という難点がある塗料です。
【特徴まとめ】
撥水剤を用いての改修が必要な劣化症状 | 期待耐用年数 | 費用目安 |
---|---|---|
外壁表面の雨シミ | 3~7年 | 約1,500円/㎡ |
※費用は参考です。施工箇所の状態や施工業者によっても異なります。
2-3.カラークリヤー塗料
カラークリヤー塗料を用いた塗装法は、コンクリートの上に表面を保護するためのクリヤー塗料を塗布する工法です。撥水剤との違いは、下地の色の違いを目立たなくすることができる点、クリヤー層が保護することにより耐候性が向上する点にあります。
【メリット①】 クリヤー層が建物を保護する
クリヤーの工程が増えるため少々割高になるものの、撥水剤のみ塗布するのに比べ、コンクリート表面に保護層を設けることができます。
保護層に用いる塗料はシリコン塗料の場合、約12年程の耐用年数、フッ素塗料の場合15年程度の耐用年数がそれぞれ期待できます。
【デメリット①】撥水剤に比べて割高になる
撥水剤の上にクリヤー塗料を塗布する、という工程のため、高額になります。その分、耐候性が高く、建物自体を塗膜が長期間保護するため、メンテナンス周期は長くなります。
【特徴まとめ】
カラークリヤー塗料を用いての改修が必要な劣化症状 | 期待耐用年数 | 費用目安 |
---|---|---|
漏水・凍害・中性化 | 5~10年 | 約3,500円/㎡ |
※費用は参考です。施工箇所の状態や施工業者によっても異なります。
2-4.弾性塗料
弾性塗料はひび割れに対して有効な塗料で、動きがある素地に対してひび割れ防止のために使われます。弾性というだけあって、伸びる塗料のためひび割れに塗膜が追随し、ひび割れの表面化を防ぐことができます。結果、雨漏りの発生を抑制する効果が期待できます。しかし、撥水剤やクリヤー塗料とは違って塗りつぶしするため、コンクリートの風合いが消えてしまう、というデメリットもあります。
【メリット①】ひび割れを防ぐ
弾性塗料の一番の特徴は伸びる塗料である、ということです。そのため、ひび割れを防ぎ、雨水の浸入を防ぐため防水機能に優れています。
【デメリット①】 塗料を多く使うため高コストになる
複層弾性塗膜と呼ばれる工法を使用する場合、下塗り+中塗り2回+上塗2回、という多くの塗料と工程を要することになります。そのため、他の工法に比べ高コストになってしまう、というデメリットがあります。
【デメリット②】 コンクリートの風合いが損なわれる
クリヤー塗料や撥水剤と違い、色付きの塗料で塗りつぶすため、コンクリート特有の風合いが損なわれてしまいます。
【特徴まとめ】
弾性塗料を用いての改修が必要な劣化症状 | 期待耐用年数 | 費用目安 |
---|---|---|
クラック・雨漏り | 6~10年 | 約2,700円/㎡ |
※費用は参考です。施工箇所の状態や施工業者によっても異なります。
弾性塗料について、詳細を知りたい、という方はこちらの記事をご覧下さい。
2-5.【塗料選びの注意点】価格のみで選ばない
塗装工事の施工業者から提案される塗料は、安価な塗料から高額な塗料まで様々な種類があります。ここで注意しておきたいのが「価格のみで塗料を選ぶのは注意が必要」ということです。
価格が安い塗料のプランは安い分、高額な塗料に比べて耐久性などの性能が劣ることも多く、せっかく塗り替えたのに、10年経過せずに再度塗装が必要になる、ということも少なくありません。塗り替え工事の頻度が高くなると、その分改修費用がかさむため、結果、高額な塗料を使った塗り替え工事よりも高額になってしまう、という事態が起こることも考えられます。
塗料を選ぶ際には、「ただ安い塗料が良い」というだけではなく、期待耐用年数、価格、今後の塗り替え計画まで考えて選ぶことをおすすめします。
3.オススメのコンクリート用塗料
第3章では、オススメのコンクリート用塗料を種類ごとにご紹介します。実際に塗り替えの際にご参考にしてください。
3-1.オススメの撥水剤
■シランコートL(菊水化学工業株式会社)
菊水化学工業のシランコートLは、打ちっぱなしコンクリート用の濡色防止撥水剤。コンクリート内部まで深く浸透し、躯体と一体化して内側からコンクリートの劣化原因である水をシャットアウトします。水の浸入を防ぎながら、通気性も持ち合わせている塗料です.
■アクアシール200S(日本ペイントホールディングス株式会社)
躯体内部に深く浸透し、強力な防水層を形成します。また、カビや雑草の繁殖防止、塩害、凍害、酸性雨、アルカリ骨材反応などによるコンクリートの早期劣化防止などの効果も発揮する撥水剤です。
3-2.オススメのカラークリヤー塗料
■アクアベール1000(菊水化学工業株式会社)
アクアベール1000は水性シリコン系のクリヤー塗料で、打ちっぱなしコンクリートの質感を損なわずに塗り替えすることが可能です。シリコン樹脂を使用しているため、保護性能が高く、長期間に渡りコンクリートを保護します。
■SKカラークリヤー(エスケー化研株式会社)
エスケー化研のSKカラークリヤーは、耐候性、耐アルカリ性、耐汚染性、密着性に優れた塗料で、さらには表面の風化やエフロレッセンス(白華現象)※の防止効果も併せ持つ塗料です。
※コンクリート中の可溶成分が表面に出て白い粉状になる現象。
3-3.オススメの弾性塗料
■EC-5000PCM(株式会社アステックペイントジャパン)
約600%の伸縮率を持つ高弾性塗料です。アクリル樹脂の不純物を一切排除したピュアアクリル樹脂を使用し、耐候性を高めるために有機ガラス成分を配合しています。優れた伸縮率により、防水効果の高い塗料です。
■DANシリコンセラ(日本ペイントホールディングス株式会社)
シリコン樹脂配合の単層弾性塗料です。通常の塗料に比べて、塗膜が厚くつきやすく、波形模様・凹凸のある仕上がりになります。
4.コンクリートに塗装が必要な劣化症状
コンクリート表面にはひび割れやカビ・藻の発生などの劣化症状がよく見られます。このような症状が見られる場合には、塗装を行う必要があります。
4-1.ひび割れが発生している
コンクリートのひび割れは最も多い劣化症状の1つです。
4-2.表面にカビ・藻が発生している
カビや藻は、ひび割れから水が浸入することにより湿気が高い状況になることで発生します。
4-3.建物内部に雨漏りが見られる
ひび割れから雨水が浸入すると、内部まで浸透し、雨漏りを発生させてしまいます。
4-4.コンクリートが剥落を起こしている
コンクリートの剥落も多く見られる劣化症状です。これはコンクリートの中性化により、発生する劣化症状です。
5.DIYでコンクリート塗装はできるの?
最近自分で建物に塗装を行なうDIYが流行しています。自分の思い通りの仕上りになる他、何より塗料代・材料代のみで済み、安く行なうことができるのがそのメリットと言えるでしょう。しかし、その一方でリスクが潜んでいることも理解しておく必要があります。
【コンクリート塗装をDIYで行うリスク】
●プロが行なう訳ではないため、仕上りが汚くなる場合がある。
●安全対策で足場を組み立てる必要があるため、足場代で高額になる。
●塗料や塗装方法について専門知識が無いため、不具合が起こる危険性がある。
DIYは綺麗な仕上りにならない可能性も高くなります。また、安全対策の観点で、ヘルメットの装着や足場の設置、安全靴の装着など、安全面を十分に考えて施工しないと事故を起こす危険性が高いです。安全用具の準備や足場を立てる費用で結果的に高額になるという可能性もあります。そして、何より、専門知識が少ないため、不具合が早期に発生してしまう可能性があります。
以上のようなリスクを踏まえると「建物を長持ちさせる」という観点ではあまりオススメはできません。
6.コンクリート外壁を長持ちさせるために注意すべきポイント
建物の劣化症状を放置し続けると、雨漏りなどの劣化に繋がり高額な改修費用が必要となるだけではなく、建物自体の寿命が短くなる、というリスクもあります。そこで第6章では、コンクリートの外壁を長持ちさせるために知っておきたいポイントをご紹介します。
6-1.定期的に建物の状況を診断してもらう
ひび割れなどの劣化状況は自身で確認できますが、それ以外にも、自身では気づかない劣化症状が発生している場合も多くあります。だからこそ、定期的に工事のプロである、施工業者に建物の状況を確認してもらい、最適な工事を提案してもらう必要があります。できればご自身で「1年に1度」は建物の状況を確認、劣化などの心配があれば、業者に診断してもらい、改修工事の必要があるのか、いつごろ改修工事を行えば良いのか、相談するようにしましょう。
6-2.ひび割れが見つかったら早めに補修を行う
冒頭から申し上げている通り、ひび割れから雨水が浸入すると、雨漏りの発生やコンクリートの剥落などの劣化症状を招くことになります。そのような状況にならないためには、ひび割れの発生が確認されたら早めに補修工事を行う必要があります。
補修工事とは、撥水剤の塗布などを行う他、ひび割れ部分をシーリングと呼ばれる材料で埋める作業もあります。このシーリング補修のほうが、コストを安く抑えることができるため、小さなひび割れが発見された際には、シーリング補修を行うことをオススメします。
補修工事について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参考にしてください。
まとめ
今回はコンクリート用の塗料について詳しくご紹介しました。コンクリートは、ひび割れなどの劣化症状が発生しやすく、定期的なメンテナンスが必要な素材です。
コンクリートの風合いを残しながら塗装できる撥水剤やひび割れが起こりにくく高い防水性を発揮する弾性塗料など、様々な種類がありますが、一番は建物がどのような状況なのか、どのような塗料を使うのが良いのか正しく判断し、劣化に合わせた塗料を施すことが重要です。
定期的に専門家に建物の診断をしてもらい、塗装のタイミングや劣化状況を把握するようにしましょう。