ふすまは木の枠組みと和紙を何重にも貼り重ねて作る日本の伝統的な建具です。調湿性や断熱性に優れており、日本の気候にマッチしていることから古くから使用されてきました。
ただこのふすま、長期間使用していると破れや汚れなど、どうしても劣化することは避けられません。この記事をご覧の方も、ふすまの汚れや傷みにお困りの方は多いと思います。ふすまがそのような状態になったら、この機会に張替てみてはいかがでしょうか?
この記事ではふすまの張替方法はもちろん、張替をしたあと綺麗に保つ方法、また張替でお部屋のイメージをがらりと変える方法をご紹介いたします。
1.ふすまを張替る前に知っておきたいこと
ふすまにはいくつか種類があり、種類によって張替方法や費用が変わります。まずはふすまについて知っておいていただきたい情報をご紹介します。
1-1.ふすまの種類と見分け方
あまりご存知の方はおられませんが、実はふすまには種類があります。種類によって張替の方法が異なりますので、種類を見極めることがふすまの張替において重要です。
ふすまには大きく分けて2種類あります。
・本ふすま(組子ふすま)
伝統的なふすまの作り方で、組子(障子にもある細い木枠部分)の上に何重にも和紙を張り重ね作られます。和紙で作られることから通気性に優れ、反りやねじれなどに強いという特徴があります。
また枠組みが健全であれば何度でも張替ができることも大きな特徴です。しかし製造方法の工程上、作るのに時間がかかるため量産は難しく、高価なものが多いです。
画像出典:一般社団法人日本襖振興会
・戸ふすま
戸ふすまは、本ふすまと同じような形で組子を作りますが、その上に和紙を張り重ねるのではなくベニヤ板など板を貼りその上にふすま紙やクロスを貼るものです。和室と洋室の間仕切りに使用されることが多く、丈夫ですが重量があります。板に貼ってあるので、本ふすまと異なり物をぶつけるなどの衝撃でふすま紙が破れるといったことは起きにくいです。
また最近よく住宅で使用されているのが、発泡プラスチックやダンボールを芯材として作られたふすまです。表面には戸ふすまと同じようにふすま紙やクロスが貼られています。軽量で大量生産がしやすく安価であることが大きなメリットですが、発泡プラスチック、ダンボールは他のふすまに比べ耐久性に劣り、張替の際も丁寧にしなければふすま自体の反りが発生する可能性があります。
画像出典:一般社団法人日本襖振興会
~ふすまの種類の見分け方~
・叩いたときに音がする場合は戸ふすまである可能性が高い
・枠組みが外せるものは本ふすま、外せないものは戸ふすまやその他のふすまである
・段ボールを芯材として使っている場合、ふすまの取っ手部分を釘などではなくボンドで接着している
上記3点をポイントにふすまの種類を見分けましょう。
1-2.ふすま紙の種類
ふすま紙にも種類があり大きく分けて和紙でできている鳥の子タイプ、糸を使用して織って作る糸入りタイプ、また最近ではビニールでできたビニールタイプのものがあります。
鳥の子タイプと糸入りタイプは使用する材料や作る工法により値段に差があり、安いものは1帖 2,000円程度から、最高級のものになると50,000円以上と値段に大きな差があります。一般的な住宅では1帖 3,000円~5,000円程度のものがよく使用されます。
1-3.張替はどこに頼めばいいの?
いざ張替をしようと思ってもどこに頼んだらよいのか分からないという方も多いかと思います。ふすまの張替はリフォーム店さんや工務店さんに頼むのが一般的です。特にリフォーム店さんは内装工事をメインでされることが多いことから対応してもらえる可能性が高いです。
ただしふすまの種類によっては対応が難しいこともあります。また希望する紙の種類、デザイン等にこだわりがある場合は、ふすま屋さんに依頼されるのが一番安心です。
また、ふすまの張替はDIYすることも可能です。初心者向けのお手軽な張替方法から上級者向けの本格的に和紙を張る張替方法もあります。詳しい張替の方法は記事の後半でご紹介いたします。
1-4.ふすまの張替にかかる費用
業者に頼む場合、最も安価な鳥の子タイプのもので1帖あたり4,000円前後にて対応する業者が多いようです。ただし【1-2.ふすま紙の種類】でご紹介したように、使用するふすま紙の種類によって値段は大幅に変わります。以下に参考価格を記載します。
鳥の子特価品:3,000円~/帖
鳥の子:4,000円~/帖
織物:6,000円~/帖
上鳥の子:10,000円~/帖
上織物:10,000円~/帖
手すき和紙等特上品:25,000円~/帖
クロス貼り:4,000円~/帖
また柄や紙質にこだわりがない場合、地域のシルバー人材センターにふすまの張替を依頼することもできます。リフォーム店等業者へ依頼するよりも安いケースもあるため、一度お問い合わせをしてみてください。
2.ふすまの張替をしてお部屋の印象をチェンジ ~事例集~
当然のことですがふすまを張替して綺麗にすることでお部屋の印象もが明るくなります。また最近では生活様式が洋式になったため、それに合わせて家具等も様式になり、そのため和室の扱い方に困る方が多くなっています。そんな方におすすめなのが壁紙やシールをふすまに貼ることでの張替です。ここではご自身でできるふすまの張替の事例をいくつか紹介します。参考になるものがあれば幸いです。
2-1.和室のイメージをそのままに
メーカー品番:805
メーカー品番:808
メーカー品番:814
メーカー品番:824
メーカー品番:826
画像出典:株式会社太陽 はるか第5集
2-2.和室から洋風のイメージに変えたい
メーカー品名:花シリーズ
メーカー品名:七宝シリーズ
メーカー品名:縞シリーズ
メーカー品名:寂シリーズ
メーカー品名:絣シリーズ
メーカー品名:霰シリーズ
画像出典:ルノン株式会社 ルノン凜第2集
3.ふすまをDIYで張替する方法
業者に頼むよりコストを抑えたい!DIYには自信がある!という方はぜひDIYでふすまの張替をしてみましょう。自分で張替をしたものには愛着がわきますし、手間はかかりますが費用を大幅に抑えることができます。
DIYの場合、インターネットで張替セットが販売されています。こちらを活用するとふすま1帖あたりおよそ3,000円で張替することができます。紙質を選ぶ場合は業者に依頼するときと同様、紙質により値段が変わりますが、安いふすま紙だと700円程度から購入可能です。
DIYでふすまの張替をする際注意すべきなのが、仕上がりです。ふすま紙を貼るとき失敗してしまい歪んでしまったりすると見栄えが著しく悪くなります。
また一度一般の方が張替をしたふすまは、プロの方からすると施工が難しくなる場合が多いです。結果として断られる、費用が高額になる、納期に時間がかかるなど様々な弊害が発生するおそれもあります。
こちらの点を念頭におきDIYをするか業者へ依頼するかを決めましょう。
3-1.DIYでふすまを張替する方法
ふすまの張替をする方法には大きく分けて以下の4種類あります。
・のりをふすま紙に塗り貼りつける方法
・のり付きのふすま紙に水を塗りつけ貼りつける方法
・アイロンで貼りつける方法
・シールのように粘着質のふすま紙を貼りつける方法
アイロンで貼りつける方法や粘着質のものを貼りつける方法が、枠を外す必要がなく貼り方も簡単なため初心者の方におすすめの方法です。次いで水で貼りつける方法が中級者向け、のりを塗り貼りつける方法はつけるのりの量により、しわが生まれたりと難しいため上級者向けになります。
ここでは簡単にできるシールで貼りつける方法・アイロンで貼りつける方法と、水で貼りつける方法をご紹介いたします。
3-2.張替の方法
シールタイプのものとアイロンで貼りつけるタイプは枠を外す必要がないため、作業は非常に簡単です。
【粘着ふすま紙(シールタイプ)の場合】
必要な準備物
粘着ふすま紙 ハンマー 地ヘラ 鋲抜きまたはペンチ ハケ ポンチローラー
インテリアバール 竹ヘラ マスキングテープ カッター はさみ ペン
事前準備
①まず、引き手部分を取り外します。引き手を上に持ち上げ、釘の頭が浮いてきたら釘をペンチで引き抜き、引き手を外します。
その後枠部分をマスキングテープで養生しておきます。
②次にふすま紙を貼り付け位置を決めます。新しく貼り付けるふすま紙をふすまに重ね、角の位置に印をつけておきます。
ふすま紙の貼り付け
③まずふすま本体を上下さかさまにします。次に先程つけた印側の部分を10cmほど剥がし、ふすま本体の角に合わせて枠部分に軽く貼り付けます。
④軽く貼り付けたあと、ふすま紙がまっすぐ貼れているかどうか確認してください。まっすぐ貼れていることが確認できたら、いよいよ貼り付け作業です。空気が残らないよう中心部分から外側へ空気を押し出すように押さえていきます。粘着シートは一気に剥がしてしまうと作業しづらくなるため、20cm程度ずつ剥がしましょう。
この作業を全面に行い、すべての面の貼り付けが終われば次の工程に移ります。
⑤枠からはみ出ているふすま紙の四隅に切り込みを入れ、竹へらを使用して枠に沿ってふすま紙を圧着していきます。その後余分なふすま紙部分を切り、ローラーで最終圧着します。
⑥引き手部分にカッターで切り込みを入れ、引き手をつけ、鋲を刺し込み完成です。
【アイロンで貼りつける場合】
必要な準備物
アイロン はさみ カッター ペンチ
地ヘラまたは押さえ定規 ハンマー ポンチ インテリアバールまたは引き手はずし
アイロンで貼りつけるタイプの壁紙
粘着ふすま紙(シールタイプ)と異なる工程は貼り付けの方法のみのため、貼り付け方のみ記載します。
①ふすま紙をふすまにあて、貼り付ける位置を決める。
②アイロンを高温スチームに設定し、ずれないように注意しながらふすまの中心部分を縦方向にアイロンで押さえ密着させる。
③その後左右方向にアイロンを動かし全面に密着させる。
④ふすま紙の四隅に切り込みを入れる。
⑤ふすま枠に沿ってアイロンで押さえる。
⑥最後にふすまの周囲にまんべんなく均一にアイロンがけをして作業終了。
【水(のり)で貼りつける方法】
これまで記載した粘着シートタイプのものやアイロンで貼り付けるものに比べて、枠の取り外しや作業手間があることから難易度が高めの方法になります。
必要な準備物
インテリアバール 養生するもの(ビニールシート等) 鋲抜きまたはペンチ
ポンチ スポンジ マスキングテープ 竹ヘラ ハンマー カッター
はさみ 刷毛 バケツ 地ヘラ 雑巾 再湿ふすま紙
※注意点:枠を外す際は上下左右どこの部分を外したのか分かる様にしておく
ふすまの種類によっては、枠の大きさ、幅などが異なる場合があります。いざ張替が終わったので枠を付けようと思って手間取ることがないように、外した後は上下左右どの箇所を外したのかが分かる様に印をつけるなどしておきましょう。
事前準備(枠を外す)
①最初に上下の枠を取り外します。枠を持ち軽くゆすり枠部分とふすま本体との間に隙間をつくります。
②隙間にインテリアバール(マイナスドライバー)を差し込み、軽くハンマーで叩きながら隙間を広げます。
③ふすまと枠部分が離れてきたら、刺さっている釘ごと枠をふすまから引き抜きます。
同様の作業を上下左右して枠を外し、引き手部分を取り外します。この手順は他の張替え方法と同様です。
事前準備(ふすま紙の貼り付け準備)
④ふすま紙を逆方向に巻き、巻きぐせをとる。
⑤ふすま紙をふすまの上に置き、貼り付け位置を決める。
⑥ふすま本体の角で折り目をつけ印をつける。
⑦先程つけた折り目から2cm外側をカットする。
⑧貼り付けの際に床を汚さないよう床にビニールシートなどで養生する。
貼り付け作業
⑨ふすま紙を裏返し、水を含ませたスポンジで水をつける。
⑩全体に水をつけ紙が伸びるまで5分程度おく。
⑪表面がぬめぬめになったことを確認し、ふすま紙の上にふすま本体を載せる。
⑫ふすまを裏返し(ふすま紙を上)にして、刷毛を使ってふすま紙とふすま本体の間に入っている空気を抜く。
⑬しわになっている箇所がある場合は一度ふすま紙を剥がし、刷毛で中心から外側に押さえながら貼り付ける。
⑭側面は雑巾で貼り付ける。
⑮角の部分はハサミで、その他の余分な部分はカッターで切り落とし、半日~1日程度乾燥させる。
仕上げ作業
⑯外す順番とは逆に、左右の枠から取り付けをし、最後に上下の枠を取り付ける。
⑰釘を打ち付ける際は枠に傷をつけないようダンボールなどを間にはさみ打ち付ける。
⑱引き手部分を放射線状に切り込みを入れ、引き手をつけ鋲で固定する。
3-3.注意点
・どこに設置していたふすまか分かるようにしておく
複数枚のふすまを張替する場合、部屋によりふすまのサイズが異なる場合があります。作業をするときはどこの部屋から持ってきたのか分かる様に保管しましょう。
・破れがある場合は先に補修をしておく
ふすまは2枚~3枚程度あれば上に重ね張りすることができます。上から貼ることで表面の汚れやシミなどは隠せます。ただし破れを隠すことは難しく、破れたまま上に貼るとその部分だけ密着不良を起こし表面が浮いてしまい見栄えが悪くなります。張替をする前に、破れ部分は受け紙(薄紙)を貼りふすまがフラットな状態になるようにしておきましょう。
4.ふすまを張替したあとも綺麗に保つ方法
せっかく綺麗に張替をしたふすま。どうせなら長く綺麗な状態を保たせたいですよね。ここではふすまを綺麗に保つための工夫と日ごろからできるメンテナンスをご紹介いたします。
4-1.防水スプレーでふすまの汚れを防ぐ
ふすまに防水スプレーをかけておく。これだけで汚れが付きにくくなります。とはいえ防水スプレーをしているからといって濡れ雑巾で拭くことがないようご注意くださいね。
4-2.綺麗な消しゴムで手垢を落とす
引き手部分は開け閉めをするときに手垢がどうしてもついてしまいます。手垢も長年の蓄積で黄ばみやシミなど汚れの原因となりますので、日頃のメンテナンスが重要となります。
そこで利用したいのが消しゴムです。綺麗な消しゴムで引き手まわりをこすることで手垢を落とすことができます。既に使用している消しゴムを使ってしまうと鉛筆の汚れが移ってしまうことがあるので必ず新品のものを使いましょう。
また住宅用洗剤を雑巾につけて拭くことでも同様に綺麗にすることができます。
4-3.シートやスプレーでペットからふすまを守る
ふすまを汚れたり破れたりしてしまう原因のひとつにペットのいたずらが上げられます。特に猫を飼っているお家では、張替たふすまを爪とぎからどう守るかは悩みの種でしょう。
猫が爪を研ぐ場合は、少し見栄えは悪くなりますが爪とぎ防止シートを貼ることでふすまを守ることができます。こちらは1,000円前後で購入できます。またふすまへ爪とぎ防止スプレーを散布することでも同様の効果が期待できますが、頻繁に散布しすぎると黄ばみの原因にもなるので注意が必要です。
4-4.ちょっとした工夫で子どもからふすまを守る
お子様がいるご家庭だとふすまに落書きをされる、子どもが室内で遊んで拍子に破るなどあるのではないでしょうか。
落書き対策として多くの方が実践されているのが、ふすま以外に落書きできる箇所を作ることで子どもを満足させるというものです。リビングに黒板やホワイトボードを設置したり、窓にかけるクレヨンなどを与えることで対策がとれます。また破れ等に対しては、ふすまを張替る際に破れにくい素材のものを貼ることで対策がとれます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ふすまを張替する際には紙の種類によって値段が大きく変わること、DIYでする際は比較的簡単な粘着質のふすま紙やアイロンで貼りつけるタイプがおすすめであることがお分かりいただけたと思います。
また、張替したふすまを綺麗に保つ方法として防水スプレーや消しゴムを使ってのメンテナンス、またペットから守るために爪とぎ防止シートを活用することもご紹介しました。
ふすまを張替るとお部屋の雰囲気をがらりと変えることができます。これを機会に綺麗なふすまに張替してみてはいかがでしょうか。