サイディング外壁のメンテナンス時期と費用まとめ

デザイン豊富で品質も安定していることから戸建住宅で、急速に普及しているサイディング。これから新築を建てる方の中にも、サイディングを候補に入れられている方は多いのではないでしょうか。

ですが、家を持つにあたってかかる費用は、初期の建設費用だけではありませんよね。

外装材は見た目を保つことはもちろん、耐久性の維持、水漏れなどを防止するためにも、メンテナンスが必ず必要です。これは、サイディングも例外ではありません。

そして、外壁材は家の側面全体を覆っているのですから、メンテナンス費用もそれなりに高額となります。

今回はそんなサイディングのメンテナンスについて、種類別に、時期や方法・費用に分けて解説します。ぜひ、サイディング選びや、正しいメンテナンスにお役立てください。

目次

1. サイディングの種類別メンテナンス時期

そもそもサイディングとは、サイディングボードとも呼ばれているように板状の外壁材のことを総称して指します。サイディングは素材によっていくつかの種類に分けられ、それぞれで耐久性、つまりメンテナンスの時期も異なります。

ここではサイディングの種類別に、特徴と一般的なメンテナンス周期を見ていきましょう。

1-1. 窯業系サイディング

窯業系サイディング

セメントと繊維質を主原料とする、現在最も主流となっているサイディングです。デザインが豊富で、選ぶ楽しさがあるのが魅力です。

住宅の躯体にサイディングボードを釘で打ちつけ、ボードとボードの間をシーリング材で埋めて施工します。

 ■メンテナンス周期

7~10年

窯業系サイディング自体の寿命は30~40年と言われています。ほとんどメンテナンスは必要ないと思っている人もいるようですが、実際には、サイディングより先に目地部のシーリング材や、サイディング表面の塗装に劣化が現れます。7~10年周期でメンテナンスが必要となるため、注意が必要です。

1-2. 金属系サイディング

金属サイディング

アルミニウム・鉄(スチール)などの金属を成形・加工し、断熱材で裏打ちしたものが金属系サイディングです。窯業系サイディングに次いで主流のサイディングで、金属の質感を活かしたモダンでシャープな見た目は、窯業系とは異なる魅力と言えるでしょう。

また、外壁材としては重量が軽く、建物に負担をかけにくいという特徴も持っています。

 ■メンテナンス周期

10~15年

セメントを主材とした窯業系サイディングと比べ、水の浸み込みや、ヒビ割れの心配がなく、一般的にメンテナンス周期は少し長め。

ただし、金属特有のサビの発生には要注意です。沿岸部の立地での塩害や、薬物飛散等の周囲の環境からの影響、金属片からの貰いサビなどが原因で、思いもよらず早期にサビが発生する可能性もあります。

1-3. 木質系サイディング

木質系サイディング

天然木・合板などの木材を主材とするサイディングで、木のぬくもりを感じられる質感が最大の特徴です。

断熱性に優れ、環境にも優しい素材ですが、防火指定のある地域では使用できないため、消防法を確認しておきましょう。

 ■メンテナンス周期

10年前後

木の性質を理解して、上手く付き合っていかなければならないのが木質系サイディングです。湿気を嫌うため、長期間濡れた状態が続くと腐食につながります。

また、木目を活かすクリヤー系の塗装がなされている場合、再度クリヤー系塗料で塗り替える場合、すでに劣化している箇所を覆い隠すことは困難です。少し早いかな?と思ったくらいでメンテナンスを行うことが、味わいを失わずに長持ちさせるコツです。

1-4. 樹脂系サイディング

樹脂系サイディング

画像出典:http://www.zeonkasei.co.jp/common/000074464.pdf

日本ではあまり普及していませんが、アメリカ・カナダで主流となっている外装材です。

塩化ビニル樹脂(いわゆるプラスチック)を主原料とし、雨水や塩害に強い特徴を持っています。塗装でなく顔料を練り込み色付けするため、色あせや変色が少ないのも長所です。

 ■メンテナンス周期

10~20年

優れた耐久性をもつ樹脂系サイディングですが、弱点は紫外線です。紫外線のエネルギーにより、樹脂同士の結合が切れ、徐々に弾性が失われていきます。

この場合は、紫外線を遮る塗料を施工したり、張り替えをしたりする必要があります。

1-5. メンテナンスフリーのサイディング、メンテナンスは全く不要?

最近、大手ハウスメーカー等でも取り扱われているメンテナンスフリーのサイディングですが、永久にメンテナンスは必要ないと勘違いされがちです。

しかし、サイディングボード同士をつなぐシーリングの劣化が先に始まったり、振動などによって素材自体にヒビ割れや欠けが発生したりなど、形あるものは必ず老朽化します。

汚れにくく耐候性に優れた材料や施工方法を採用することで、『次回メンテナンスまでの期間を長くできる』、言い換えると『あまりメンテナンスをしなくて良い』のが、メンテナンスフリーのサイディングです。

頻度が低くなる分、手間はかからなくなるにしても、必ずメンテナンスは必要になると考えた方が良いでしょう。

2. メンテナンス方法と費用相場

メンテナンス方法は劣化の度合いによって変わります。劣化の種類、もしくは新築・前回の改修からどれくらい経過しているかを基準にメンテナンス方法を見ていきましょう。

2-1. シーリング工事によるメンテナンス

シーリングとは、サイディングボードとサイディングボードの継ぎ目(目地部)、もしくはサイディングボードと窓枠のサッシなどの間に詰められている、ゴム状の詰め物です。ボードの隙間からの雨水の浸入を防止し、外部からの振動を吸収する役割を持っています。

サイディングの種類によっては、継ぎ目にシーリングを施工しない施工方法もありますが、窓枠の冊子周りではシーリングが用いられます。

正常なシーリングは、指で押すと跳ね返すような弾性がありますが、経年劣化により徐々に弾力を失い、防水・振動吸収の役割を果たせなくなってしまうため、打ち替えをする必要があります。

シーリングの寿命は約7~10年と言われていますが、紫外線や雨などの影響で早期にヒビや痩せが発生することもあります。新築・前回の打ち替えから5年経った頃より、定期的に点検を行うと良いでしょう。

■シーリング工事の費用相場(単価:900~1500円/m、延床面積30坪の場合)

2045万円

■シーリング打ち替えが必要となる劣化症状

細かいヒビがある 肉痩せしている 破断している
 02-シーリング-細かいヒビ  03-シーリング 痩せ  04-シーリング 破断

2-2. 塗り替え(塗装)工事によるメンテナンス

サイディング表面の塗装が劣化すると、サイディングボード自体が水を吸い、吸水と乾燥を繰り返すうちに反りや浮きが発生してしまいます。

塗装の劣化でサイディング自体が傷んでしまう前に、表面の汚れを高圧洗浄で落とし、上から新しく塗装するのが塗替え工事です。

使用する塗料の種類によってメンテナンス周期や費用相場は大きく前後しますので、これは3章で詳しくお話します。

サイディング自体のメンテナンス周期は長く設定されていても、施工されている塗料の寿命が短ければ、早めの塗替えによるメンテナンス工事が必要となります。

■塗替え工事の費用相場(シリコン塗料で塗替え、延床面積30坪の場合)

70~150万円

■塗り替え工事が必要となる劣化症状

色あせがある チョーキングが発生している 塗膜の剥がれがある
 05-色あせ  06-チョーキング  07-剥がれ
カビや藻が発生している サビが発生している

※金属サイディングの場合

 08-カビ

 

 09-金属サイディング サビ

画像出典:http://www.fp-tanaken.jp/fpfamily/2015年7月 vol45/

2-3. 張り替え工事によるメンテナンス

シーリングや塗装も、劣化要因から100%家を守れるわけではありません。長い期間をかけてサイディングボード自体が傷むと、シーリング打ち替え、塗り替えでは外装自体の劣化の進行を抑えられなくなり、張り替えが必要となります。

張り替え工事では、古いサイディングボードを撤去し、新しいサイディングボードを施工します。

サイディング自体の寿命からすると30~40年周期で張替えを行えば良いことになりますが、シーリング打ち替えや塗装の塗替えによるメンテナンスを怠っていれば、その分サイディングボード自体の劣化は早く進行します。この場合、早期に張り替えが必要になる場合があります。

■張り替え工事の費用相場(延床面積120㎡の場合)

200万円~

■張り替え工事が必要となる劣化症状

反りや浮きがある 欠けがある ボード自体に痛みが見られる
 10-反り  11-欠け  12-サイディングの腐食(カコ・藻・カビ)
サビによる腐食が激しい

※金属サイディングの場合

衝撃による凹みがある
 13-サビによる腐食が激しい

画像出典:http://www.yuzu-tosou.com/gaihekitosou/kinzoku/

 14-金属サイディング-凹み

画像出典:http://ishiikosakujo.jp/wall/steel-siding/

2-4. 工事には足場代などの諸経費がかかる

サイディングの塗り替え、張り替え時はもちろん、シーリング打ち替え時にも、足場を立てる必要があります。

■足場代の費用相場

約15~20万円

また、現場管理費、廃材処理費用など、諸経費が別途加算されることも忘れてはいけません。

詳しくは、【保存版】外壁塗装にかかる費用の相場と見積書の見方を参照ください。

2-5. 自分でできる日常のメンテナンス

想定よりずっと早く、サイディングのヒビ割れや、シーリングの破断を見つけてしまったとき、1回1回業者に補修の依頼をしていては費用がかさみます。

簡単な補修であれば、プロに頼まなくとも自分でできるものもあります。

■幅0.3mm以下のヒビ割れの補修(難易度中)

ヘアクラック 微細なセメントの粉を、ひび割れに塗布・定着させ補修します。

セメントチョークを手で塗りこむ『チョーク式』、セメントの粉を噴射し定着させる『スプレー式』の方法があります。

必要な材料・工具、補修工程は、これを読めばすべてわかる!外壁のひび割れ対処トラの巻を参照ください。

■シーリングの打ち替え(難易度高)

コーキングヒビ 古いシーリング材を撤去し、専用の接着剤を小口に塗布した後、シーリング材を充填し補修します。

必要な材料・工具、補修工程は、プロが教える!外壁の補修が必要な劣化の症状を参照ください。

普段からできる範囲で自分でメンテナンスをしていれば、多少劣化の進行を遅らせることができるため、いざ業者へ改修工事を依頼するときにも、補修工事の費用を抑えることにつながります。

ただし、手の届かない部位で劣化が発生している場合には、素人が補修をするのは危険です。高所での無理な作業は、落下などの大事故に繋がる可能性があるため、必ず業者へ依頼してください。

3. メンテナンススケジュールの立て方

いろいろと劣化やメンテナンス方法があるのは分かったけど、結局、何年周期でいくらかかるの?そう思っている方へ。

ここでは、サイディングのメンテナンススケジュールの立て方の一例を掲載します。

3-1. シーリングのメンテナンス工事は7~10年ごとがベスト

まずはシーリング工事を基準にメンテナンス周期を考えていきましょう。

シーリングは防水の役割を持っており、シーリングの劣化(=水の浸入)はメンテナンス費用に大きく影響するためです。

シーリングの寿命を考慮すると、メンテナンスは7~10年ごとに行うのが一般的です。

もし劣化の進行が著しく早い場合には、シーリングの種類や工法を業者へ相談しましょう。

3-2. 使用されている塗料から塗り替えのタイミングを決める

下記のように、使用されている塗料の種類によって、塗装の周期は5~15年以上と大きく前後します。

使用されている塗料の種類を確認し、塗り替え周期を出しましょう。

<塗料の種類と寿命>

ウレタン塗料 シリコン塗料 フッ素塗料 無機塗料
約5~7年 約7~10年 約15年~ 約15年~

3-3. 張り替え工事は30~40年ごとに行う

張り替えの際には、すでに新しいサイディングボードには塗料が施工されていますから、塗り替え工事の費用を考慮する必要はありません。

サイディングの寿命に合わせ、張り替え工事の周期は30~40年ごととします。

3-4. メンテナンススケジュールを立ててみる

3-1~3-3で確認したメンテナンス周期と、2章でご説明した費用相場を元に、メンテナンススケジュールを立ててみましょう。

時系列で必要なメンテナンスを並べることで、何年後にどれくらいの出費があるのか、おおよその目安を知ることができます。

2章でお話ししたとおり、シーリング工事・塗り替え工事・張り替え工事は、どれも足場が必要となる工事です。そのため、これらの工事は同時にやってしまえば、何度も足場を立てる必要が無くなり、結果的に費用を抑えることができます。几帳面に 『○年ごとに打ち替え・塗り替え』と決めてしまわず、まとめて工事を行えそうであれば、劣化があまり進行していなくても、ある程度柔軟に工事時期を前倒しさせると良いでしょう。

前述のとおり、サイディングの種類や、使用されている塗料、シーリングの種類・工法、外部環境によってメンテナンス周期・費用は多少前後するものですので、年数や費用は適宜調整してみてください。

■ウレタン塗料を使用した場合のメンテナンススケジュール(延床面積30坪あたり)

新築 7年後 14年後 21年後 28年後 35年後 ・・・
シーリング
打ち替え
20~45万円 20~45万円 20~45万円 20~45万円 20~45万円 ・・・
サイディング塗り替え 50~80万円 50~80万円 50~80万円 50~80万円 ・・・
サイディング張り替え 200万円~ ・・・

※価格は地域や業者・下地の補修の可否などによって変動いたします。
※屋根塗装・足場代・諸経費は含まず

 

■シリコン塗料を使用した場合のメンテナンススケジュール(延床面積30坪あたり)

新築 10年後 20年後 30年後 40年後 ・・・
シーリング
打ち替え
20~45万円 20~45万円 20~45万円 20~45万円 ・・・
サイディング
塗り替え
60~90万円 60~90万円 60~90万円 ・・・
サイディング
張り替え
200万円~ ・・・

※価格は地域や業者・下地の補修の可否などによって変動いたします。
※屋根塗装・足場代・諸経費は含まず

 

■フッ素塗料を使用した場合のメンテナンススケジュール(延床面積30坪あたり)

新築 7年後 15年後 22年後 30年後 37年後 ・・・
シーリング
打ち替え
20~45万円 20~45万円 20~45万円 20~45万円 20~45万円 ・・・
サイディング塗り替え 70~110万円 70~110万円 ・・・
サイディング張り替え 200万円~ ・・・

※価格は地域や業者・下地の補修の可否などによって変動いたします。
※屋根塗装・足場代・諸経費は含まず

 

■無機塗料を使用した場合のメンテナンススケジュール(延床面積30坪あたり)

新築 7年後 15年後 22年後 30年後 37年後 ・・・
シーリング
打ち替え
20~45万円 20~45万円 20~45万円 20~45万円 20~45万円 ・・・
サイディング塗り替え 80~130万円 80~130万円 ・・・
サイディング張り替え 200万円~ ・・・

※価格は地域や業者・下地の補修の可否などによって変動いたします。
※屋根塗装・足場代・諸経費は含まず

4. まとめ

いかがでしたか?ご自宅に使用されているサイディング・施工塗料・シーリングそれぞれの種類と特徴を知っておけば、今後必ず必要なメンテナンスについて、長期スケジュールを立てることができます。

このページをご参考にしていただき、お気に入りのサイディング外壁を正しくメンテナンスして、大切なお家を守ってくださいね!

最後に、サイディングのメンテナンスにおける3つのポイントをまとめて締めくくりたいと思います。

  1. サイディングにはいくつか種類があり特徴が異なる。ご自宅のサイディングがどの種類か、必要なメンテナンスが何かを知っておく。
  2. サイディングのメンテナンスには、『シーリングの打ち替え』『塗り替え』『張り替え』の3つがある。劣化症状や目安となる時期から最適な工事を実施する。(日常のメンテナンスで、より費用を抑えることが可能)
  3. 各メンテナンスの周期と価格相場から、長期スパンでのメンテナンススケジュールを立てることができる。

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