この記事をご覧になっているという事は、シロアリへの対策をどうやって行なえば良いのかを気にされている方だと思います。
シロアリ被害を放置し、侵食が進むとお住まいに甚大なダメージを与えるため、早めの対策はお住まいを長持ちさせるためにも非常に大切です。シロアリ対策を万全に行なえば、お住まいを長持ちさせる可能性が高まるので、やっておける事はやっておきたいですよね。
シロアリ対策は素人では状況の判断が難しい場合が多いため、この記事でシロアリ対策の知識をしっかりと身に付けておきましょう!
目次
1.シロアリ対策の必要性
まず、シロアリ対策は必要です。シロアリ対策を怠っていると、食害(害虫等が摂食行為により、人間に何らかの被害を与えること)によって家の中がボロボロになるだけでなく、柱や土台等の継ぎ目に影響を与えて耐震性が大きく下がってしまいます。その耐震性が下がっている状態で大きな地震が起きた場合には、最悪倒壊を起こしてしまいます。倒壊が起きないためにもシロアリ対策は必要なのです。
シロアリが好む環境は、湿気がある事、外敵がいない事、そして食料(木材等)がある事です。家の中にはそんなシロアリが好む場所が多いため、シロアリが発生する可能性があります。シロアリが発生する前に対策を行なっておきましょう。
シロアリの対策として、「予防」と「駆除」に分類出来ます。
■「予防」に関して
シロアリが家屋に侵入できない様に、未然に防ぐための対策です。
新築時に行なう予防処理は、シロアリの被害と腐朽の予防を目的とします(新築の場合、法律上防蟻工事が義務付けられています)。現状で被害は無い場合でも、この予防処理は5年間は有効なので、定期的な予防処理が好ましいです。
■「駆除」に関して
予防に対して「駆除」はシロアリが既に発生していた場合に、シロアリがいなくなるための対策です。既存の建物に行なう予防処理では、既に発生しているシロアリを駆除し、その後に蟻害を「予防」する目的があります。
ここ数年の間に建てられた新築の住宅であれば、新築時に何らかのシロアリ対策として「予防」はされているはずです。中古住宅であれば、過去何らかの対策を行なっているかどうか、前回の「駆除」と「予防」の対策から5年以上経過しているかどうか等を調べてみましょう。(シロアリの点検は5年ごとが目安となります)
2.2つのシロアリ対策方法と費用
専門業者の行なうシロアリ対策として基本的に、予防対策も駆除対策も同じ方法で行ないます。方法として「バリア工法」と「ベイト工法」という2つがあります。
2-1.「バリア工法」
バリア工法とは、床下等に薬剤の処理層を作り、シロアリが家屋内に侵入できないようにする方法です。
土壌部にはシロアリが通過する恐れのある床下の土に防蟻剤を散布し(土壌処理)、木部には木材の表面に対して噴霧器で薬剤を吹き付け処理したり、刷毛等で塗布や、木材や壁体に薬液を注入する方法となります(木部処理)。
バリア工法は即効性が期待できますが、薬剤を使用するので人体やペットにも影響がでる可能性があるのがデメリットです。
■バリヤ工法を行った場合の費用例※
新クリーンバリヤ工法:15,000円/㎡
・住宅の基礎内部の土壌面に特殊な樹脂を散布し、暑い膜を作り湿気止め、シロアリの侵入を防止する土壌表面皮膜形成工法。
※上記の費用は一例となり、実際の見積りとは異なる場合があります。
2-2.「ベイト工法」
ベイト工法とは、シロアリの巣を根絶する事が目的で、シロアリが好むベイト剤(毒の餌)を設置します。
シロアリが巣にベイト剤を持ち帰り、仲間を集めて食べる事で、巣にいるシロアリごと駆除出来る方法です。
即効性はありませんが安全なので、小さなお子様やペット等がいる場合にはオススメです。ただ、ベイト剤を定期的(年に2~3回)に設置をする必要があるため、期間と費用がかかります。
■ベイト工法を行なった場合の費用例※
初回設置費用:10~15万円(ベイト剤や設置費用を含む)
翌月以降:100~150円/m(建物外周)
となり、1年での合計費用は約15~20万円程になります(60m²の場合)
※上記の費用は一例となり、実際の見積りとは異なる場合があります。
2-3.どちらの工法を選べばよいのか
どちらも効果はありますが、シロアリの駆除が今すぐに必要な場合は即効性のあるバリア工法がオススメで、時間と費用がかかっても良いのであれば、安全性が高く、巣からシロアリを根絶させるベイト工法がオススメです。また、バリア工法に比べてベイト工法の方が費用が高額になります。状況によってどちらの工法が良いのかは異なるので業者にしっかりと相談しましょう。
また「バリア工法」と「ベイト工法」を組み合わせて施工する事によっても、シロアリの侵入を防ぐ事に繋がります。
費用が極端に高額になっている場合には、何を行なうのか実施する施工内容の内訳を、納得されるまで質問してみてください。また、見積りが一式になっている場合は要注意です。きちんとした業者であれば、細分化した見積りを出して納得のいく説明を行なってくれるはずです。
上記の費用はシロアリ対策に関しての費用になりますが、既にシロアリの被害が起こっていた場合には、被害状況によって大規模な修繕工事がかかってしまうので、数十万~数百万単位になる場合もあります。
シロアリがいるのかどうかを調査するだけであれば、無料で点検を行なってくれる業者も数多くあるので、まずは、どの様な状況で悩んでいるのかを相談してみるのも良いかもしれません。次の章ではシロアリ対策をどこに依頼すべきか、選び方について説明します。
3.シロアリ対策はどこに依頼すべき?
3-1.新築の場合、ハウスメーカー等に相談してみる
木造建築の場合、地盤面から高さ1m以内の構造耐力上主要な部分(柱、土台等)に対し、 有効なシロアリ対策を行なう事が「建築基準法施行令第49条(昭和61年10月改定)」にて義務付けられているため、新築で建てられたばかりの方は、既にシロアリ対策が行なわれているはずです。
新築から数年経って改めてシロアリ対策を行なう場合にも、施工されたハウスメーカー等で、当時どの様なシロアリ対策を行ったのか、その後の保証があるのか等を相談されるのが良いでしょう。
新築時に対策をしていても、予防効果を維持出来るのは約5年程なので、それ以降にも点検は必要になります。新築時にシロアリが発生しにくい家にしておく事が、究極のシロアリ対策とも言えます。
3-2.中古住宅の場合、信頼出来るシロアリ業者に依頼を
前の持ち主が、きちんとしたシロアリ対策をしていたのか?対策後、何年が経過しているのか?等が不明な場合もあるので、中古住宅の場合には、ご自分でシロアリ業者に探して依頼を行ないましょう。もしかしたら以前対策を行なってから5年以上が経過している可能性があります。現在のシロアリ対策の状況を調べてみるためにも、信頼できるシロアリ業者に依頼を行なって下さい。
[参考]信頼出来るシロアリ業者の選び方
いざ業者に依頼しようと思った場合にどんな業者が信頼できるのか、判断が難しいと思われます。そこで、見積りを1社から取るのだけではなく、同じ条件で他の業者2~3社から見積りを取り、価格や条件の比較検討を行なう様にしましょう。出てきた見積りが一式になっている場合も要注意です。一式ではその中に何が含まれていて、費用がどのぐらいかかるかが分かりにくいので、見積りで不明な箇所があればきちんと質問して解消しておく様にしましょう。
また、金額自体を安く見せるため、最初に高額な見積りを提示し、その後に大幅な値引きを行う様な業者も居るので、相場の金額よりも高い金額の提示があった場合には注意した方が良いです。ホームページにきちんとした施工実績が掲載されているかどうかも信頼できる業者を選ぶ基準になります。
更に、工事後のアフターサービス(保証期間)がしっかりとついている業者かどうかも確認しましょう。5年間保証は一般的ですが、業者によってはそれよりも期間が短い場合もあるので、どの程度の保証があるのか?定期的にチェックに来てもらえるのか?等も、確認しておきたい業者選びのポイントです。
お問合せをしてみようかなと決めた業者が「日本しろあり対策協会」に加入をしているか確認してみるのも良いでしょう。日本しろあり対策協会に加入している業者は、豊富な経験と知識を持っている業者と言えます。協会に加入しているかどうかも信頼が出来るかどうか一つの判断基準になります。
公益社団法人「日本しろあり対策協会」
国土交通大臣の許可を得て結成された50余年の歴史を持つ法人なので、しっかりとした実績がある団体です。
消費者相談窓口が用意されているので、電話をしてこちらで相談を行なってみるのも良いのではないでしょうか。
日本しろあり対策協会:消費者相談窓口
こちらに会員一覧も掲載されているので、この中からお近くの会社に相談してみてはいかがでしょうか。
日本しろあり対策協会:登録施工業者会員名簿
4.参考①~シロアリ被害を判断する方法、発生しやすい場所~
4-1.シロアリ被害を判断する方法
お住まいにシロアリ被害が起こっているかどうかを判断するため、ご自分でチェック出来る項目として次の様なものがあります。
●基礎部分に、不自然な土の道(蟻道)がないか?
出典:プロタイムズ宮崎北店
シロアリは外気に触れるのを嫌うため、トンネル状の蟻道を作って地表を移動します。クロアリも蟻道を作る種類のものがいますが、クロアリの蟻道は柔らかいのに対し、シロアリの蟻道は木材のカスや土に排泄物を練り込んで作られるため、硬く崩れにくいのが特徴です。
出典:プロタイムズ八幡西店
外壁がサイディングの場合でも、目地のシーリングに穴をあけ侵入していく可能性もあるので要注意です。蟻道を見つけたのであれば、家屋にシロアリが存在している可能性が高いため、出来るだけ早めに業者へ点検を依頼しましょう。その際、蟻道を全て壊さない様に注意して下さい。シロアリの侵入経路は蟻道を追っていく事で、業者が判断出来るため、蟻道が残っているのは重要なのです。
また、コンクリート部分は安全だと思いがちですが、コンクリート部分であってもわずかなヒビや隙間があれば、そこから侵入してくる可能性があるので要注意です。
他にも下記に一つでも該当する方は、シロアリが発生している可能性が高いと言えます。
- 近所の人が、シロアリの駆除を行なった。
- 春から夏にかけて、お住まい周辺で羽蟻を大量に見た事がある。
- 壁や柱を叩いて空洞音がする場合。
- 床が浮いていたり、ギシギシと音を立てて軋む箇所がある。
- 床下の湿気が多い。
- シロアリの予防を行なってから5年以上が経過している。
蟻道が見られたのであれば、シロアリがいる可能性は高いですが、被害状況の見極めは自分で行うのが非常に難しいので、不安に思われた場合は、まず業者へ相談して早めに点検を行なってもらいましょう。
4-2.シロアリ被害が発生しやすい場所
ここでご紹介するのはシロアリが好んで集まる可能性があるので、気をつけておけば、ご自分で対策が出来る場所になります。
●エアコンの室外機や雨樋の水が地面に流れている
こちらはシロアリが発生しやすい場所の一つです。
室外機は水が排出される事でどうしても湿りやすくなり、シロアリが好む場所になります。また、雨樋の詰まりは劣化につながり、雨漏りを引き起こす要因となります。シロアリは湿った木材を好むため、雨漏りが発生すると白蟻の被害が集中する可能性もあるので要注意して水はけを良くしたり、落ち葉を掃除する等しておきましょう。
雨樋の詰まりを解消する方法は、他の記事でご紹介しているので、こちらもご参考にされてみてください。
●ウッドデッキ等、地面に接している建材がある
ウッドデッキの素材はシロアリの好む木材のため、発生しやすい場所になります。直射日光が当たらず、湿度も高くなりがちなウッドデッキの下は、シロアリが好む条件になってしまう場合があるので、ウッドデッキの防蟻処理・防腐処理がされた素材かどうかを確認してみましょう。
万が一、シロアリを見つけた場合に、市販スプレーの殺虫剤の使用するのはあまりオススメ出来ません。スプレーをする事で、シロアリが警戒して散ってしまい、別の巣(コロニー)を生成する場合もあります。
また、スプレーをした事で安心してしまい、駆除がきちんと出来ていないにも関わらず、放置してしまう危険もあります。そうした間にシロアリが増殖し、気がついた時には甚大な被害になっていたり、最悪の場合は家屋が倒壊する可能性もあります。
市販のシロアリ駆除のスプレーを行なう場合には、応急処置的な利用にとどめ、使用後にすぐ業者へ相談を行なう様にしましょう。
5.参考②~シロアリの生態系を知る~
シロアリ被害が起こる原因ですが、シロアリは家材(木材やプラスチック、合成ゴム、柔らかい金属等)を食べるためです。
シロアリは全世界でおよそ2000もの種類が存在し、日本にいるシロアリは約20種類です。その中でも家を食べるシロアリは大きく分けて「ヤマトシロアリ」「イエシロアリ」「アメリカカンザイシロアリ」の3種類です。
シロアリは見た目が蟻に似ているところから、シロアリと呼ばれていますが、黒アリとは似て異なります。黒アリは「ハチ目アリ科」に分類されいて、ハチの仲間になります、対するシロアリは「昆虫綱ゴキブリ目シロアリ科」に分類され、ゴキブリに近い存在になります。
ちなみにシロアリの発生時期は、いつが多いかご存知でしょうか?湿度の多い、雨季の後に被害は多いと思われるのではないでしょうか?
実は、シロアリは冬眠等は行わず、温かい場所であれば冬でも活動出来ます。特定の時期に発生するわけではなく一年中発生し、活動を行ないます。温度が下がる時期は、当然部屋の中を暖房器具で暖めますよね。そうやって暖まった熱が床下に伝わることで、シロアリを活性化する事になるので、冬の時期だから油断は出来ません。
また、時期的には春から夏にかけて、羽アリが飛来する時期です。シロアリは、1つの巣の中で個体数が増えすぎると、巣全体のバランスが崩れてしまうため、羽アリとなり別場所に巣を作るために引っ越しを行ないます。これが、シロアリの飛来です。シロアリが飛来する時期によって、シロアリの種類を分けることが出来ます。
- ヤマトシロアリ:4~5月の昼間
- イエシロアリ:6~7月の夕方から夜
- アメリカカンザイシロアリ(外来種):6~9月の昼間
「ヤマトシロアリ」は日本全国に生息し、湿った木材等を好むため、被害は腐朽と同時に起こることが多く、床下の被害が多く見られます。ヤマトシロアリの巣は1~3万匹の群れで集団を成し、枯れ木や朽ち木を食べ、その内部に巣を作ります。特に湿った場所を好みます。
それに対して「イエシロアリ」は一つの巣に対して多くの数が生息し、最低でも5万匹、大きいものは100万匹の集団にもなります。建物や土中に塊状の大きな巣をつくり、建物の乾燥した木材に対しても、水を運び湿らせながら加害をしていくため、ヤマトシロアリの被害は部分的で広がりが少ない傾向にありますが、イエシロアリは水を運ぶ能力があるので、腐敗して水分を含んでいる朽木でなくとも、侵食していき家全体に被害を与える可能性があります。また、食害のスピードも早く、危険な存在になります。
各シロアリの分布図
出典:日本しろあり対策協会
「アメリカカンザイシロアリ」は、『乾材シロアリ』という種類で、ヤマトシロアリ、イエシロアリとは異なり蟻道をつくることはなく、乾燥した木材中に坑道を穿って小集団で生活しています。生活には特別に水を必要とせず、建物の乾 燥した木材やピアノ・ステレオ・たんす・鏡台・机等の家具類を食害します。被害材の食害孔から乾いた砂粒状の糞を排出するのが特徴です。
出典:日本しろあり対策協会
まとめ
いかがでしたか?シロアリの被害は人の目に触れないところで進行し、気付いた時には家に甚大な被害をもたらすので、大切なお住まいを守るためにもシロアリ対策は必ず行う必要があります。
シロアリ対策には「ベイト工法」と「カバー工法」という2つの対策があるのもご理解いただけたかと思います。もしシロアリ対策が必要な場合や、業者の選定を行う際に、この記事が参考になれば幸いです。