瓦葺き替えリフォーム/事前に知っておきたい全知識

冷気や熱気、紫外線、雨などなど、様々なものから私たちを守ってくれている屋根。
高いところにあり、近くで見る機会も少ないために、あまり気を遣っていないという方も多いかもしれません。
それでも、台風や地震などで瓦が抜け落ちたり、経年で気付かないうちに見た目が古くなっていたり、専門業者から工事を勧められたりなど……屋根瓦の劣化に気付く機会もあると思います。

瓦屋根の劣化は見た目が悪くなるだけの問題ではありません。劣化で水はけが悪くなった屋根は、雨漏りし、建物の内側にまで被害が出てしまうこともあります。

こんなリスクを避けるためには、定期的なチェックやメンテナンス、場合によっては工事が必要になります。

そこで今回は、屋根リフォームで悩んでいる方へ、どんな劣化なら葺き替え工事が必要か、工事内容や気になる費用をご紹介していきます。

1. 『葺き替え』とは?どんなときに葺き替えするのか?

『葺き替え』という言葉に馴染みのない方へ、まずは葺き替えの基礎知識と、葺き替えが必要な屋根の症状からご説明します。

1-1. 葺き替え(ふきかえ)とは

瓦や板、茅(かや)などの材料で『屋根を覆う』ことを、『屋根を葺(ふ)く』と言います。葺き替えとは、この屋根を覆っている既存の材料を取り去り、新しい材料に替えること。

屋根のメンテナンスと言えば、屋根表面の洗浄や、塗り替えを想像する方も多いかもしれませんが、これらのメンテナンスでは屋根としての性能や強度が維持できないほど屋根瓦自体が傷んでいたり、屋根より内部の下地まで劣化が進行したりしている場合には、この葺き替え工事を行います。

また、劣化が一部分だけの場合に部分的な下地補修と屋根瓦の差し替えを行う工事方法は『部分葺き替え』と呼ばれます。

『葺き直し』とは

屋根瓦の工事に詳しくない方がよく混同してしまう言葉に『葺き直し』があります。

葺き直しとは、瓦自体の劣化が少ない場合に、瓦と下地とを接着している葺き土(日本瓦のみ)や釘、銅線のみ新しく施工し直し、屋根瓦は既存のものを洗浄して引き続き使う工事方法で、葺き替えとは異なります。

1-2. 葺き替えが必要な症状

葺き替え工事は一旦瓦を剥がすため作業が大掛かりで、家のメンテナンス工事の中でもハードルが高いものです。例え業者に葺き替えを勧められたとしても、本当に今葺き替えが必要なのか迷うところだと思います。

下記で葺き替えが必要な可能性がある代表的な劣化症状をご紹介しますので、判断基準としてください。症状の進行度合や範囲によって工事の規模は変わってきますが、少なくとも点検の時期は来ていると考えましょう。

ただしご自分で劣化状況を確かめる場合には、地上から見える範囲で行いましょう。高所の屋根材や内部構造部分の細かい点検は専門家にお任せし、写真を撮影してもらうなどして実際の症状を確かめてください。

■瓦に割れや欠けがある

1スレート割れ

 

■瓦が抜けたり、ずれたりしている

2-瓦の抜け・ズレ

画像出典:http://protimes-nagoyaminami.com/case/2255/

 

■瓦が整列しておらず並びがガタガタ

5-瓦の浮き・ガタガタ

画像出典:http://blog.livedoor.jp/protimes_genba/archives/cat_34211.html?p=9

 

■草が生えたり、苔・カビが発生したりしている

3瓦のコケ2
■瓦を固定する釘が浮いている

4-瓦の釘浮き

画像出典:http://sasaki-tosou.up.seesaa.net/image/E6A39FE68ABCE38195E381883.jpg

 

■軒天や天井に雨漏り被害がある

6-瓦-屋根裏腐食

1-3. 本当に葺き替えは必要?信頼できる業者の見分け方

業者から葺き替え工事を推奨されたものの、本当に工事が必要なのか判断に迷うこともあると思います。

薦められるがままに工事をお願いしてしまったけれども、結果的に不要な工事内容だった、という事態を避けるためにも、良い業者の見分け方を押さえておきましょう。

信頼できる業者を見分ける6つのポイント

□屋根に上がって診断をしてくれるか
□診断結果は口頭だけでなく書面で報告してくれるか
□診断は資格や専門のプロがしてくれるか
□見積書では、費用を内訳まで詳細に記載しているか
□アフターフォロー(定期点検など)の制度があるか
□保証がしっかりしているか

 

業者選びについては、下記の記事でより詳しく紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

外壁塗装でトラブルを防ぐ『業者選びのポイント』

屋根リフォームの適した方法3選と業者選びの方法まで >4.屋根リフォームで失敗しない業者選びのポイント

2. パターン別、葺き替えの費用相場

葺き替えには、新しい瓦を購入・施工する費用と、既存の瓦を廃棄・処理する費用がかかります。

そのため、『葺き替え後の瓦の種類』と『既存の瓦の種類』の双方を考慮して、費用相場を見ていく必要があります。

ここでは、瓦の種類は戸建住宅によく使用されている代表的な3種類(和瓦、スレート瓦、セメント瓦)としました。

なお、費用を算出する際に用いる単価の詳細は2-4. 施工単価の詳細で説明しています。

『材料・施工費(㎡)』『棟・壁際部施工費(m)』は“葺き替え後の瓦の種類”に、『材料撤去・廃材処理費用(㎡)』は “既存の瓦の種類”によって決まりますので、注意してください。

2-1. 和瓦からの葺き替え費用

既存の屋根が和瓦の場合の葺き替え費用相場は以下のとおりです。

なお、施工面積は一戸建ての平均的な数字をとり80㎡、棟・壁際部は30mで計算しています。

■和瓦→和瓦への葺き替え

単価 数量 合計 施工費用合計
材料・施工費(㎡) ¥8,700 80㎡ ¥696,000 ¥1,239,000
棟・壁際部施工費(m) ¥3,500 30m ¥105,000
足場代 ¥150,000 1 ¥150,000
材料撤去・廃材処理費用(㎡) ¥3,600 80㎡ ¥288,000

■和瓦→スレート瓦への葺き替え

単価 数量 合計 施工費用合計
材料・施工費(㎡) ¥5,700 80㎡ ¥456,000 ¥969,000
棟・壁際部施工費(m) ¥2,500 30m ¥75,000
足場代 ¥150,000 1 ¥150,000
材料撤去・廃材処理費用(㎡) ¥3,600 80㎡ ¥288,000

■和瓦→セメント瓦への葺き替え

単価 数量 合計 施工費用合計
材料・施工費(㎡) ¥6,700 80㎡ ¥536,000 ¥1,049,000
棟・壁際部施工費(m) ¥2,500 30m ¥75,000
足場代 ¥150,000 1 ¥150,000
材料撤去・廃材処理費用(㎡) ¥3,600 80㎡ ¥288,000

2-2. スレート瓦からの葺き替え費用

既存の瓦がスレート瓦の場合の葺き替え費用の相場は以下のようになります。

一戸建ての平均的な数字をとり、施工面積は80㎡、棟・壁際部は30mで計算しています。

■スレート瓦→和瓦への葺き替え

単価 数量 合計 施工費用合計
材料・施工費(㎡) ¥8,700 80㎡ ¥696,000 ¥1,207,000
棟・壁際部施工費(m) ¥3,500 30m ¥105,000
足場代 ¥150,000 1 ¥150,000
材料撤去・廃材処理費用(㎡) ¥3,200 80㎡ ¥256,000

※構造補強費用:20万円~ がかかる場合があります。

スレート瓦から和瓦へ葺き替える場合、瓦自体と接着用の葺き土で既存の瓦より重量が2倍以上に増すことになります。そのため、屋根の下地となる柱や板を太くしたり、数を増やしたりする他、家の外壁に構造用の補強材を入れる必要がある場合もあります。

■スレート瓦→スレート瓦への葺き替え

単価 数量 合計 施工費用合計
材料・施工費(㎡) ¥5,700 80㎡ ¥456,000 ¥937,000
棟・壁際部施工費(m) ¥2,500 30m ¥75,000
足場代 ¥150,000 1 ¥150,000
材料撤去・廃材処理費用(㎡) ¥3,200 80㎡ ¥256,000

■スレート瓦→セメント瓦への葺き替え

単価 数量 合計 施工費用合計
材料・施工費(㎡) ¥6,700 80㎡ ¥536,000 ¥1,017,000
棟・壁際部施工費(m) ¥2,500 30m ¥75,000
足場代 ¥150,000 1 ¥150,000
材料撤去・廃材処理費用(㎡) ¥3,200 80㎡ ¥256,000

2-3. セメント瓦からの葺き替え費用

既存の瓦がセメント瓦の場合の葺き替え費用の相場は以下のようになります。

一戸建ての平均的な数字をとり、施工面積は80㎡、棟・壁際部は30mで計算しています。

■セメント瓦→和瓦への葺き替え

単価 数量 合計 施工費用合計
材料・施工費(㎡) ¥8,700 80㎡ ¥696,000 ¥1,231,000
棟・壁際部施工費(m) ¥3,500 30m ¥105,000
足場代 ¥150,000 1 ¥150,000
材料撤去・廃材処理費用(㎡) ¥3,500 80㎡ ¥280,000

※構造補強費用:20万円~ がかかる場合があります。

セメント瓦から和瓦へ葺き替える場合、瓦自体と接着用の葺き土で既存の瓦より重量が2倍以上に増すことになります。そのため、屋根の下地となる柱や板を太くしたり、数を増やしたりする他、家の外壁に構造用の補強材を入れる必要がある場合もあります。

■セメント瓦→スレート瓦への葺き替え

単価 数量 合計 施工費用合計
材料・施工費(㎡) ¥5,700 80㎡ ¥456,000 ¥961,000
棟・壁際部施工費(m) ¥2,500 30m ¥75,000
足場代 ¥150,000 1 ¥150,000
材料撤去・廃材処理費用(㎡) ¥3,500 80㎡ ¥280,000

■セメント瓦→セメント瓦への葺き替え

単価 数量 合計 施工費用合計
材料・施工費(㎡) ¥6,700 80㎡ ¥536,000 ¥1,041,000
棟・壁際部施工費(m) ¥2,500 30m ¥75,000
足場代 ¥150,000 1 ¥150,000
材料撤去・廃材処理費用(㎡) ¥3,500 80㎡ ¥280,000

2-4. 施工単価の詳細

費用相場の各要素の内訳です。

各費用をさらに掘り下げて見たい場合の参考にしてください。

■材料・施工費(㎡)

葺き替え後の瓦の種類
和瓦 スレート瓦 セメント瓦
材料・材工費 ¥7,000 ¥4,000 ¥5,000
防水シート施工費 ¥700 ¥700 ¥700
桟木施工費 ¥1,000 ¥1,000 ¥1,000
合計 ¥8,700 ¥5,700 ¥6,700

一般に、和瓦は高い施工技術が必要で、工期を要することから高めに設定されていることが多いようです。

■棟・壁際部施工費(m)

葺き替え後の瓦の種類
和瓦 スレート瓦 セメント瓦
棟・壁際部工事費 ¥3,500 ¥2,500 ¥2,500

屋根の棟部(てっぺんの瓦の形が異なる部分)、もしくは棟板金(金属の板)が設置されている部分や、1階屋根と2階外壁などの屋根と壁が接している部分の施工費用です。

■足場代

足場代(全種類の瓦共通) ¥150,000

屋根の葺き替え工事では足場の設置が必要となります。

■材料撤去・廃材処理費用(㎡)

既存の瓦の種類
和瓦 スレート瓦 セメント瓦
既存屋根材撤去費 ¥2,800 ¥2,500 ¥2,700
廃材処理費 ¥800 ¥700 ¥800
合計 ¥3,600 ¥3,200 ¥3,500

3. 葺き替えるならどの瓦?種類別瓦の特徴

2章で紹介した各種葺き替えパターンを見てわかるとおり、葺き替えは、瓦の種類を変更し、家の雰囲気を一新するチャンスでもあります。

瓦の種類が違えば、見た目の雰囲気は当然のこと、耐久性やメンテナンス方法も変わります。

ここでは和瓦、スレート瓦、セメント瓦、それぞれの特徴を解説します。

3-1. 和瓦の特徴

7-和瓦

画像出典:http://tosou-mima.net/works/w_wallpaint/yanemimayaotosou.html

日本瓦、粘土瓦とも呼ばれます。いぶし銀の渋い色合いで、和風住宅といえばこの瓦です。

粘土質の土を成型・乾燥させ窯業した、いわゆる陶器で、耐久性が高く、厚みがあります。大きな衝撃で割れや欠けなどが発生しない限りは長く使用でき、寿命は50~100年と言われています。
弱点は、非常に重さがあるところでしょうか。他の種類の瓦と比較すると耐震性は低くなります。
また、陶器という素材の性質上、和瓦は1枚1枚形が微妙に異なっているため、正確な仕上げには高度な技術が必要となり、費用相場は若干高く設定されていることが多いようです。

3-2. スレート瓦の特徴

8-コロニアル

画像出典:http://www.kmew.co.jp/shouhin/roof/

コロニアル瓦、カラーベストと呼ばれることもあります。
和風住宅に最適なのが和瓦だとすれば、洋風のオシャレで可愛らしい雰囲気にもってこいなのはこのスレート瓦です。
材料は粘板岩(ねんばんがん)という粘土質の岩を薄く加工したもので、天然の粘板岩をそのまま使用しているため、自然で趣のある質感があります。

また、パルプを混合して軽量化を図ったものも開発されています。
日本瓦より薄く軽量な分、現場での加工が容易なため、施工費用が安く済むのも大きな魅力ですが、材質自体が傷むのを防ぐためには、塗装による定期的なメンテナンスが必要です。また、瓦自体の寿命である30~40年ごとに葺き替え工事を行う必要があります。

3-3. セメント瓦の特徴

9-セメント

画像出典:http://www.kawarayane.com/gekitan/catalog/igeta/n_spanish.htm

その名の通りセメントを主材料とする瓦です。

和瓦と比べて非常に軽いため、自重で落ちてしまうことが少なく耐震性に優れています。

製造の過程での乾燥・収縮が少なく、製造の精度が高いため施工性に優れ、その分工事費用が安くなるメリットがあります。
また、塗装で色を付けるため、色の自由度が高いのも特徴です。
コロニアル瓦ほど市場に出回っていないこともあり、費用相場は中程度。
セメント自体に防水性能は無いため、塗り替えによる定期的なメンテナンスが必要です。寿命は30~40年程度で、材料自体に傷みが見られれば葺き替え工事を行います。

4. 症状別、部分葺き替えの費用相場

一部分の瓦の割れやズレ、棟交換など、屋根全体を葺き替える必要が無い場合には、部分補修で費用を安く抑えることが可能です。
ただし、部分補修が比較的広範囲に及ぶ場合や、足場を設置する必要がある工事内容では、部分補修でも費用が高額となることもあります。次回全面葺き替えが必要な時期が近いのであれば全体を葺き替えてしまったほうが結局は安く付くこともありますので、業者とよく相談して補修内容を決定したほうが良いでしょう。

4-1. 漆喰の剥がれ・崩れ※和瓦の場合

古い漆喰を取り除き、葺き土も傷んでいれば取り去ります。その後、新しい葺き土で瓦を接着し、漆喰を均等に塗り込めます。

■費用相場

2万円~

4-2. 一部の瓦の割れ

割れた瓦を取り除き新しい瓦に差し替えます。雨水の流れに問題がある場合はコーキング材を打ち込み、流れを調整します。

■費用相場

2万円~

4-3. 一部の瓦のズレ・崩れ

ズレ・崩れが発生している部分の瓦をめくり、下地が傷んでいれば防水シートによる補強工事を行います。その後瓦を葺き直します。

■費用相場

4万円~

<注意>
下記の場合には、部分補修でも費用が高額(数十万円~)となる場合があります。
・足場が必要な場合
・部分補修が広範囲に及ぶ場合
・雨漏りなどで構造部まで劣化の被害が及んでいる場合

5. まとめ

いかがでしたか?
屋根の葺き替え前に点検すべき箇所、葺き替えに必要な費用相場をお分かりいただけたと思います。
最後に、瓦の葺き替えに必要な基礎知識を、4つのポイントをまとめておきます。

・瓦の葺き替え工法には、全体を葺き替えする『葺き替え』工事と、一部分だけ葺き替えする『部分葺き替え』がある
・瓦の葺き替え工事の費用はおよそ90~120万円台が相場
・『材料・施工費(㎡)』『棟・壁際部工事費(m)』『材料撤去・廃材処理費用(㎡)』から工事費用を算出する
・部分補修の費用相場は2万円~。ただし、足場代・補修範囲によっては数十万円となることもある

 

この記事で得た基礎知識を活かして、専門の業者の提案をしっかり理解し、理想の葺き替え工事を実現させてくださいね!

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