スレート瓦塗装

現在の住宅建築の屋根に多く使用されているのが「スレート瓦」です。カラーベスト・コロニアルといった商品名で呼ばれることもあります。屋根に使用されているスレート瓦は太陽の光や雨風に一番さらされており、家の中で劣化が進みやすい箇所のひとつです。

劣化が進むと雨漏りが起き、やがて建物内部の腐食が進行していく可能性もあります。

そのようなことにならないためにも、スレート瓦は定期的に塗装によるメンテナンスが必要なのです。

この記事ではスレート瓦になぜ塗装が必要なのか?費用はいくらくらいかかるのか?

期間はどのくらい掛かるのか?などを詳しく説明したいと思います。

1.スレート瓦の塗装の必要性

1-1.スレート瓦には定期的に塗装が必要

スレート瓦は内容成分の85%がセメント、15%が石綿(アスベスト)で構成されています。工場出荷時に塗装が施されていますが、その塗装の耐候性は7~10年なので、10年ほど経過すると塗装の耐候性が失われ、防水機能も失われてしまいます。加えてスレート瓦の主成分であるセメント自体は水を吸収しやすい為、定期的に塗装で保護しなければ様々な劣化症状が出てきてしまうのです。

1-2.スレートに起こる不具合

では、スレート瓦にはどのような不具合が起きてしまうのでしょうか?

症状内容

変色

変色

 塗膜が劣化し、防水性が切れている為、水分を吸収しやすい状態。早めに塗装が必要。

藻や苔の発生

藻や苔の発生

スレート瓦自体に水分が滞留し湿気が高くなる為、藻や苔が発生しやすくなる。発生した苔から放出される根酸(酸性)により、セメント(アルカリ性)が中和され、スレート瓦がもろくなってしまう。早めに塗装が必要。

寒割れ

寒割れ

塗膜の防水性が切れ、水分が瓦に吸収され冬場や夜間に凍結、膨張、爆裂を繰り返し瓦自体にヒビが入ってしまう。早めに補修が必要。

滑落

滑落

寒割れをそのままにしておくことでヒビが大きくなり、瓦が割れてしまう。早めに補修が必要。

瓦の反り

反り

急激な湿気と乾燥を繰り返して起こる。

※反りは塗装しても直らないので、早めに進行を止めておかなければならない。

様々な劣化が出てくる前に、塗装をすることでスレート瓦の防水性を高め、劣化症状を抑えることが出来ます。

スレート瓦は塗膜の防水性が切れると一気に劣化が進みますから、定期的に塗装をすることが重要なのです。

1-3.メンテナンスのタイミング

上でも述べたように、スレート瓦は定期的に塗装をする必要があります。一般的には10~15年程度の間隔で塗装を行っていくことが良いとされています。しかし、10年も経たないうちに雨漏りや瓦の欠落といった被害が出てしまう場合もあります。そのような被害が出てからメンテナンスを行おうとしてもすでに劣化が激しく、葺き替えや重ね葺きを行わなければならない場合があるので注意が必要です。

では、どのタイミングでメンテナンスをしたらいいのか?以下のポイントを参考にしてみてください。

早急なメンテナンスが必要

1. 天井の雨漏りが起きている

2.瓦の滑落が起きている

3.棟板金に釘抜けがある

早めにメンテナンスしたほうが良い

1.屋根に苔や藻が発生している

2.塗膜が剥がれている

3.瓦がヒビ割れている

4.瓦が割れて落ちている

2~3年以内に塗装が必要

1.屋根が白く(色あせ)なっている

以上のようなポイントがありますが、屋根は大変危険な場所です。落下の危険性や、知識がないまま登ってしまうと屋根材を傷つけてしまう場合があるので、一般の方は絶対に登らないようにしましょう。

屋根の状態をチェックしたいときは、「外装劣化診断士」などの資格を持った業者に依頼をして診断をしてもらうことをオススメします。

 

2.スレート瓦の塗装(方法・期間、費用全般)

2-1.塗装方法・工事期間

工事期間は屋根の面積によって変わります。

一般的な屋根塗装の期間は以下の表を参考にされてください。

日数施工内容
1日目足場設置

足場組み立てjpg

2日目洗浄

高圧洗浄

3日目下地処理

ケレン

4日目下塗り

下塗り

5日目中塗り
6日目上塗り

上塗り

7日目縁切り

タスペーサー②

8日目足場撤去

※屋根塗装のみの参考期間です。天候や気候によって期間に変動はあります。

また、工事期間中にはいくつか注意すべきポイントがあります。

①足場の設置・解体時に騒音が出る

急に騒音がしてしまいますと近隣の方々は驚きますし、近隣トラブルの原因ともなりかねません。事前に近隣の方々に挨拶をして回る業者を選択してトラブルが起こらないようにしましょう。近隣挨拶は施主様も同行することでより、トラブルを回避することが出来ます。

②足場が建つことで空き巣が侵入しやすくなる

足場が建つことで2階のベランダ等に登りやすくなります。また、塗装の飛散を防ぐシートで足場は覆われる為、防犯上よろしくありません。足場が建った際は防犯センサーライト等を設置して防犯対策をしましょう。防犯センサーライトを設置してくれる業者もあります。

③窓やカーテンが開けれない為、日常生活に支障をきたす可能性がある

工事作業中は業者が足場の上を歩き回ります。その為、部屋のカーテンは閉めておかなければなりませんし、窓も閉めておかなければなりません。外に洗濯物を干すことも出来ません。あらかじめ業者と相談をして、毎日、作業が終わればすぐに養生を剥がしてもらうことや、屋内用の選択干し竿等を貸してもらうことが出来るかどうか確認しておきましょう。

2-2.スレート瓦の塗装価格

屋根は外壁よりも劣化が早いため、外壁よりも耐候年数が高い塗料を選択しましょう。

スレート瓦を塗装する場合、洗浄、ケレンなどの下地処理、下塗り、中塗り、上塗りといった工程が必要となります。

塗料代や業者ごとの施工費によって価格に違いはありますが、おおまかに30万円~140万円程が相場となります。

塗装代(㎡あたり)の相場は以下の通りです。

塗料耐久年数費用
(材料費・施工費込)
アクリル約3~5年1,000円~2,000円/㎡
ウレタン約5~7年1,500~2,500円/㎡
シリコン約7~10年2,000円~3,500円/㎡
フッ素約15年以上3,000~5,000円/㎡
無機約15年以上3,500~5,000円/㎡
光触媒約15年以上4,000円~5,000円/㎡

※上記はあくまで目安です。塗料メーカーや製品によっても価格が異なります。

塗装はグレードが低く安い塗料がお得なのでしょうか?

確かに、安くて耐候性の低い塗料を選んで塗装した場合、1回の塗装価格は安くなります。

しかし、長い目で見てみるとどうでしょうか??

少々高くても耐候性の高い塗料を選んだほうが、塗り替え回数を抑えることができ、トータルコストを抑えることが出来るのです。

 

例1: 耐久年数が7年の塗料で塗装価格が100万円の場合

初めての塗り替えから7年間隔で塗り替えをしたとすると、

塗り替え3回目で300万円(100万円×3回)の費用が掛かりますが、21年間での金額となります。

 

例2: 耐久年数が15年の塗料で塗装価格が150万円の場合

初めての塗り替えから15年間隔で塗り替えをしたとすると、

塗り替え2回目で300万円(150万円×2回)の費用が掛かりますが、30年間での金額となります。

 

例1、2から見てわかるようにトータルコストの面から考えると、少々高くても耐候性の高い塗料の方が安く、お得なのです。

そのような観点を持って塗装を考えられると良いでしょう。

 

屋根リフォームかかる費用につきましては以下の記事も参考にされてください。

【完全解説】屋根リフォームにかかる費用と工事の種類について

 

3.スレート瓦の塗装で気をつけるべきポイント

3-1.縁切りが重要

スレート瓦を塗装する際に一番大事と言っても過言ではない「縁切り」について説明します。

縁切りとはスレート瓦に塗装した後、瓦と瓦の重なり部分(小口)に埋まってしまった塗料をかわすきやカッターで切ることです。

では、縁切りをしなければどうなってしまうのか?

スレート瓦の下にはルーフィングシートという防水シートが敷かれています。その下に野地板という厚さ9~12mmの合板がありますが、そこを27mmの釘で留めているのです。

つまり釘が屋根裏に抜けている状態となります。

縁切り

通常、雨が降った際、スレート瓦の立て目の繋ぎ目から水が入り、重なり部分から流れていきます。
しかし、塗装をした後に縁切りをしていない場合、塗料が重なり部分に埋まり、水が逆流することで釘を伝って雨が溜まってしまうのです。その為に、縁切りをして水の逃げ道をつくらなければならないのです。

タスペーサー

縁切りを効率的に行える「タスペーサー」という縁切り部材があります。タスペーサーは瓦の重なり部分にはめ込み、塗料が埋まらないようにする為の縁切り部材です。最近ではこちらのタスペーサーを使用することが主流となってきています。

↓以下のページを参考にされてください。

屋根塗装で「縁切り」が絶対に必要な理由

3-2.スレート瓦の耐用塗装回数

前回からの塗り替え間隔や劣化具合等によって一概には言えませんが、一般的に耐用塗装回数は3回が上限となっております。塗膜を何回も塗り重ねることで塗膜の厚みが分厚くなってしまい、割れてしまう可能性があるからです。

その為、3回以降の塗替えであれば「葺き替え」をオススメします。葺き替えとは、既存のスレート屋根を取り外し全く新しい屋根と取り替える工法です。スレート屋根は野地板・ルーフィングシート(防水シート)・瓦の3層で形成されていますが、屋根の劣化具合によっては野地板まで取り替える場合がありますので注意が必要です。

以下のページを参考にされてください。

屋根の葺き替え工事の種類と工事費用

3-3.DIYの注意点

DIYでやれば安く収まるのではないか?と思われている方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、スレート瓦をDIYで塗装することはオススメしておりません。

理由としては、「落下の危険性がある」「塗装の経験がないとしっかりと塗料がのらない」「想像以上に体力が必要」「慣れていないので逆に瓦を割ってしまう」といったことが挙がられます。

その為、業者に依頼をして塗装をしてもらうことをオススメします。

それでも「DIYでしたい!」という方は以下のサイトを参考にされてください。

屋根塗装のDIYで注意するべき6つのこと

 

まとめ

スレート瓦は数年で塗装による保護機能が失われるため、定期的に塗装をしてメンテナンスをする必要があります。

より長く良い状態を保つ為にはメンテナンスのタイミングを見極め、正しい施工をすることが重要です。

ご自分の計画、予算に合った塗料を選択、正しく施工してくれる業者を見極め、納得のいくリフォームを行いましょう。