サイディングボードやALCボードのつなぎ目として大切な役割を果たしている「コーキング」。劣化が見えやすい(わかりやすい)ので、気になっている方もいるのではないでしょうか?
コーキングが劣化すると、劣化箇所から建物内部へ雨水が浸入してしまう恐れがあるため補修する必要があります。正しいやり方さえ覚えてしまえば、DIYで補修することもできますが、見様見真似でおこなうと思わぬ劣化現象を起こしてしまう可能性もありますので、やはりプロに頼んだほうが安心・安全です。
この記事では、コーキングの種類と基本的なやり方を紹介します。
目次
1.コーキングの補修法は2つある
コーキングの役割は、「ボード同士のつなぎ目」です。サイディングボードやALCボードでつくられた外壁は、複数のボードを張ってできており、建物の歪みや熱によるボードの伸縮によってボードとボードのつなぎ目が動きます。つなぎ目となるコーキングは、ボードの動きに追随しなければいけませんので、柔軟性が高いものである必要があります。
コーキングも外壁同様、紫外線や雨水で劣化し柔軟性が落ちてくるので補修が必要です。
1-1.打ち替え工法
打ち替え工法とは、既存のコーキングを全て撤去し、新しいコーキング材を充填していく補修法です。既存のコーキングを撤去するのに手間はかかりますので、業者に依頼する場合はその分費用がかかります。
下図のように、ボードとボードのつなぎ目にバックアップ材があり、その上にコーキング材を充填することで2面接着となり、コーキングが外壁の動きに追随することができます。(詳細は2章で説明します。)
※2面接着とは
窯業系サイディング板の目地は目地底に付着してしまう3面接着だと、シーリング材が切れやすくなりますので、目地底には接着させず接着面が両側だけの2面接着が必要です。
1-2.増し打ち工法
増し打ち工法とは、既存のコーキングの上から新たにコーキング材を充填していく補修法です。打ち替え工法に比べて、既存のコーキングの撤去作業がない分施工時間は短く、費用もおさえることができます。
しかし、増し打ち工法をおこなうには以下の条件が必要です。
①既存のコーキングが劣化していない
既存のコーキングが劣化していると、コーキングの目的である柔軟性もなくなっていますので、その上からコーキングを充填してもあまり意味がありません。コーキングが塗膜でしっかり保護されている等、劣化していない状態である必要があります。
②コーキングの厚みを10mm以上確保できる
現在、コーキングメーカーが推奨しているコーキングの厚みは10mmです。10mm以上確保できないと、コーキングの耐久性を保つことができない可能性があります。コーキングのほかに、バックアップ材の厚みに5mm必要ですので、サイディングボードの厚みは、15mm以上(コーキングの厚み10mm+バックアップ材の厚み5mm)必要となります。現在、サイディングボードの厚みは14mm以上となってますが、平成20年以前のサイディングボードは、12mm以下のものがほとんどとなっておりますので、注意が必要です。増し打ち工法を検討する際は一度サイディングボードの厚みを調べてみましょう。
増し打ちは手間もかからず費用も少なくて済みますが、極力打ち替えをおすすめします。
2.コーキングの基本的なやり方
ここでは、コーキングのやり方を具体的に紹介していきます。
2-1.打ち替え工法
①既存のコーキングの撤去、清掃
カッターを使用し、既存のコーキングを撤去します。
コーキングが劣化していると、切れ目を入れたら簡単につまみ出せます。
取り出しにくい場合は、ラジオペンチ等で引っ張り出します。
サイディングボードの断面に、既存のコーキングが残っていたら再度カッターを使用して綺麗に削ぎとります。
その後、目地に残った汚れやほこりをハケを使って綺麗に取ります。
②養生(はみ出し防止のテープ貼り)
外壁にコーキング材を付けないよう、目地のまわりに養生テープを貼ります。
テープを丁寧に貼らないと、綺麗な線を作ることができず仕上がりが汚くなってしまいます。
また、テープの端はつまめるようにする、適度な長さで区切っておく等、剥がすときにはがしやすいよう工夫して貼ります。
③プライマー(下塗り材)の塗布
コーキング材をボードとしっかり密着させるために、目地部に「プライマー」と呼ばれる下塗り材を塗布します。プライマーは、接着剤の役割を果たしてくれます。
④コーキング材の充填
コーキングガンを使用して、目地部分にコーキング材を注入していきます。
目地内部に空洞ができないよう、多めにのせていきます。
コーキング材の充填は、上から下へ向かって充填していきます。
⑤へらでならす
ある程度充填したら、ヘラやバッカーを使用して均一にならします。
ならすだけだと目地内部がスカスカな状態なので、1往復以上押さえこむようにならします。
⑥養生テープの除去
コーキング材が乾いてしまう前に、養生テープをはがします。
コーキング材の表面が乾いてくるとテープを除去する際にくっついてきてしまうので注意が必要です。
2-2.増し打ち工法
増し打ち工法の場合は、やり方自体は「打ち替え工法」と変わりませんが、既存のコーキングは撤去しません。
①養生(はみ出し防止のテープ貼り)
↓
②プライマー(下塗り材)の塗布
↓
③コーキング材の充填
↓
④へらでならす
↓
⑤養生テープの除去
の流れでおこないます。
3.コーキングの劣化の種類と補修するタイミング
コーキングの工法や方法を理解したところで、自分の家のコーキングを補修する必要があるのかチェックしてみましょう。
3-1.表面のひび割れ
コーキングは、紫外線や雨を浴び続けることで劣化し、しだいに弾力性が失われてひび割れをおこします。コーキングには、柔軟性をもたせる為に可塑剤(かそざい)というものが含まれていますが、その可塑剤が紫外線によって気化し、柔軟性が失われてしまい、その結果ひび割れという現象が起きてしまいます。ひび割れを放置すると、ひび割れがひどくなり破断してしまいます。
ひび割れ
破断
3-2.肉やせ
肉やせとは、経年劣化によってコーキング含まれている可塑剤が表面に溶け出し、コーキングの厚み自体が減少してしまうことです。新築時に施工した際のコーキングの厚み不足やプライマー不足も原因としてあげられます。放置すると、サイディングボードとコーキング自体が剥離してしまいます。
肉やせ
剥離
3-3.補修のタイミング
補修のタイミングは、約10年です。
しかし、ひび割れや剥離という症状が出たらなるべく早く補修をしてください。
応急処置として、ひび割れの場合は既存コーキングの表面にコーキング材を塗布する(増し打ち工法)ことで表面のひび割れを防ぐことができます。
剥離の場合は、剥離部分にコーキングを充填する、もしくは剥離している部分を撤去しコーキング材を充填する(打ち替え工法)ほうがよいでしょう。
いずれにせよ、コーキングの劣化は外壁の劣化サインでもあります。劣化症状をみつけたら、業者に一度見てもらいましょう。
4.コーキングの補修を検討する前に
補修を検討する際に「DIYするか業者に依頼するか」迷ってしまうと思います。
基本的には、コーキングは業者にまかせることを推奨します。
4-1.DIYのリスク
「コーキング DIY」と調べると様々なサイトが検索されるように、DIYを検討している人も多いようです。確かにDIYは業者に依頼するより費用を安く抑えることができるというメリットもありますが、リスクもたくさん潜んでいます。
- 養生を上手くおこなえず、仕上がりが汚くなってしまい再度やり直すことになった
- 足場を組み立てずはしごに登っておこなった為、落下し怪我をしてしまった
- コーキング材やプライマーの専門知識が乏しく、何を選べばよいかわからない
2章を見ても、作業内容は簡単そうに見えますが慣れていない作業となるため、実際おこなう際はかなり手こずってしまうと思います。
部分的な補修であればDIYでも良いかもしれませんが、できるだけ業者に依頼しましょう。1
4-2.安心できる業者に依頼しましょう
以上のことから、コーキングは業者に依頼するのが無難です。
しかし、業者の選定には注意してください。
コーキングが劣化しているのに「増し打ち工法」で費用を押え、見積を安く提示してくる業者もいます。劣化しているコーキングを撤去せずにその上から新しいコーキング材を充填すると、コーキングの役割を十分に発揮できません。
「まだ増し打ち工法で大丈夫です」「増し打ち工法のほうが手間や費用を抑えることができるのでうちのほうが安く工事できますよ」と言ってくるような業者には注意しましょう。(もちろん、劣化していない場合は「増し打ち工法」で構いません。)
コーキングの補修をおこなう際は、必ず相見積もりをとり、工法の確認をおこないましょう。
まずはコーキングの状態を専門の業者に診断してもらう事をオススメします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
コーキングのやり方には「打ち替え工法」と「増し打ち工法」の2つがありますが、コーキングがすでに劣化している場合は「打ち替え工法」を強く推奨します。
また、DIYではなく業者に依頼するほうが安心です。相見積もりをとり、補修方法についてしっかりと説明してくれる、信頼できる業者を見極め選びましょう。
せっかくの大切な家ですので、以上のことを頭に入れて工事に望みましょう。